2014/03/19 14:35

《【クリミア併合】米、対露戦略で中国への関与強化、日米分断の危険性も》

米露関係が悪化すれば、当然、中国が漁夫の利を得ます。「力による領土変更」のハードルが下がると共に、中国を味方に付けたいが為に、中国の拡張主義に対して「甘く」ならざるを得なくなります。日本にとって、大変厳しい方向への情勢の変化です。

以下、記事。

 ロシアがウクライナ南部クリミア自治共和国の併合を決めたことで、オバマ米政権は今後の重要な対露戦略のひとつとして、中国の協力を取り付けるため対中関与を強めていくとみられる。ただ、その過程でオバマ政権が、中国の主張する「新型大国関係」に強く傾斜すれば、日米分断を含む「中国の罠(わな)」にはまる危険性を強く内包してもいる。

 ウクライナ情勢に対し、中国はこれまで「中立」という微妙なスタンスをとっている。

 中国にとりロシアは「重要な戦略パートナー」である一方、ウイグル、チベット族による民族問題を国内に抱えている。「領土的一体性」を損なうクリミアの分離と独立、さらにはロシアへの編入を支持すれば、中国国内の分離・独立運動に波及しかねないためだ。

 このため習近平国家主席はこれまで、プーチン大統領との度重なる電話会談で、ロシアへの軍事介入への支持を与えず、「政治的な解決」を主張。同時に、オバマ大統領との電話会談では、主権と領土の一体性の原則を支持することで一致する一方、対露制裁には同調しない姿勢を示した。また、国連安全保障理事会でのクリミア住民投票を無効とする決議案の採決に際しては、棄権に回った。

 これに対し、オバマ政権は当初から、ウクライナ情勢の対応における「中露接近」を警戒してきた。政権にとっては今後、中国に少なくとも「中立」の立場を維持させ、願わくば、ロシアのいっそうの孤立化を図るうえで、中国を引き寄せたいとの思惑がある。

 このためオバマ大統領は24、25両日にオランダ・ハーグで開かれる核安全保障サミットに出席する際、習主席と会談し、今後の対応への協力を取り付けたい考えだ。

 だが、「中国は『中立』の立場を巧妙に利用し、米国を『新型大国関係』に傾斜させるという『漁夫の利』を狙っている」(外交筋)との見方もある。

 オバマ政権は北朝鮮問題で中国の協力を引き続き必要としているうえ、これにウクライナ情勢が加わり、政権を「新型大国関係」へと後押しする力学が働く可能性は高い。

 また、ロシアが一方的にクリミア併合を決めた事実を利用し、中国が東・南シナ海などにおける自身の領土・領有権の“拡張主義”を、正当化しようと考える恐れもある。