2014/10/22 1:27

「構造改革を重視する中国政府は大型景気対策の発動には慎重だ。来年の成長目標を今年の7.5%前後から7%に引き下げることも視野に入れ始めた」「背景には雇用の安定がある。国家統計局によると、1~9月の都市部の新規就業者数は1千万人。すでに今年の政府目標を達成した」真偽の程は。

《中国経済運営 綱渡り GDP減速、不動産の不振続く》
2014.10.22 日経新聞

 【北京=大越匡洋】世界第2位の経済大国、中国の景気減速が鮮明になってきた。7~9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比で7.3%と5年半ぶりの低い伸びにとどまった。だが構造改革を重視する中国政府は大型景気対策の発動には慎重だ。来年の成長目標を今年の7.5%前後から7%に引き下げることも視野に入れ始めた。綱渡りの経済運営は世界経済の不安要因になる。

 2008年秋のリーマン・ショック後の危機以来の水準にとどまった中国の経済成長率。景気にブレーキをかけたのは不動産市場の冷え込みだ。

 1~9月の住宅販売額は前年同期比で1割減った。販売不振と在庫増が新規投資を鈍らせ、同時期の不動産開発投資は12.5%増と、1~6月に比べ伸びが1.6ポイント縮小した。投資の減速は過剰な生産能力を抱える製造業を直撃し、1~9月の工業生産は8.5%増と、1~6月から伸びが0.3ポイント鈍った。

 マンション建設などに使う鉄筋の中国での取引価格は年初から約2割下落した。500グラム当たりの価格は約1.5元(約26円)と「白菜並み」の安値だ。四川省成都の鋼材卸業者は「白菜は売れるだけまし。廃業の危機だ」と不安を隠さない。

 それでも中国政府は大型の景気対策に慎重な姿勢を保つ。背景には雇用の安定がある。国家統計局によると、1~9月の都市部の新規就業者数は1千万人。すでに今年の政府目標を達成した。経済規模が大きくなり、物流業などサービス業も拡大したため、成長速度が落ちても雇用は吸収できるとの指摘は多い。

 習近平国家主席は経済の現状を「新常態(ニューノーマル)」と呼ぶ。

 過去の年率10%を超える高成長からインフレのない持続的な安定成長への軟着陸を探る。李克強首相も「今年の成長率目標は7.5%『前後』だ。少し下回ってもいい」と指摘する。

 中国政府は年間の成長目標を05年から7年連続で8%、12年から3年連続で7.5%とした。13年までは一貫して実際の成長率が目標を上回ったが、今年は1~9月の成長率が前年同期比7.4%と、目標の7.5%に届いていない。

 習指導部は15年の経済運営方針を決める「中央経済工作会議」を12月に開く。共産党関係者は、15年3月の全国人民代表大会(国会に相当)で公表する成長率目標について「7%前後に下げる可能性が高い」と語った。

 金融市場では小刻みな政策発動で景気を下支えする習政権への信頼感が広がる。その半面、実体経済が習政権の想定以上に悪化することへの懸念がくすぶる。金融不安を起こさない安定成長と、過度な投資を抑制する構造改革をどう両立するか。習政権のかじ取りは世界経済を左右する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC2100G_R21C14A0EA2000/