2015/02/25 17:02

紙屑を実物資産に変える中国の錬金術。喜んで紙屑を受け取る我が国の経済人。国家として国家経済と国民が実害を被ることを回避、最小化する方策はあると思うのですが、今の政治はしないのでしょう。自分の非力が残念です。

《増殖する人民元…このままでは世界のモノも不動産も中国人に買い占められる!?》
2015.02.24 産経新聞

 旧正月「春節」休暇で中国人買い物客が東京や大阪などに、どっと押し寄せた。デパートも電器店も局地的チャイナマネー景気だ。(フジサンケイビジネスアイ)

 中国人の買い物はもっぱらデビットカード「銀聯カード」による。円代金は中国の銀行に持つ預金口座から相当額の人民元が引き落とされる。そこで中国の現預金総額(M2)はどのくらいあるか、ドル換算してみると驚いた。2014年末は20兆ドル強(約2381兆円)に上る。日本の7.5兆ドル(約893兆円)、米国11.6兆ドルを圧倒している。年間増加額は中国2兆ドルで、日本30兆円強、米国0.66兆ドルは比べものにならない。

 14年末の中央銀行の資金発行の年間増加量1に対するM2増加量の割合は中国5.3、日本0.42、米国1だから、中国人民銀行が刷るカネによる現預金創出力は爆発的だ。人民銀行を支配する中国共産党はいわば空前絶後の世界的錬金術師である。

 人民元は日米欧など先進国でそのまま使える「ハードカレンシー」とはみなされていない。ところが、銀聯カードを持てば人民元を外貨に替えなくても済むのだから、中国人旅行者にとってそのハンディはない。かれらは有り余るマネーを思う存分に海外ショッピングに投じているわけである。東京・銀座もパリ・シャンゼリゼ通りもニューヨーク5番街もそのチャイナマネーで潤う。

 そればかりではない。特権を持つ中国の富裕層や党幹部は人民元をうまく外貨に替えて、世界の各地の高級不動産物件を買いあさっている。シンガポールの高級マンションは東京都心のそれよりも3、4倍も高くなったので、今度は東京が割安だとか。

 このままチャイナマネーが膨張を続けるようだと、世界のモノも不動産も、ことごとく中国人に買い上げられるのではないか、とすら想像してしまう。

 人民元パワーの源泉はドルにある。人民銀行は管理変動相場制度を堅持し、中国に流入するドルを、ことごとく自身が決める交換レートで買い上げ、その分の人民元を市中に流し込む。人民元レートはドルに対してごく狭い幅でしか変動せず、しかも、国内ではインフレ率も低位に推移している。となると、人民元の通貨価値は超安定というわけで、国内外で信頼される。

 米国内では人為的に操作される人民元制度に対し、自由変動相場制への移行を求める声が今ではほとんど聞かれない。リーマン・ショック後、産業界や金融界が中国市場を重視しているからだ。

 欧州となると、ドイツも英国もフランスも米国以上にビジネス権益最優先で、北京にすり寄る。事なかれ主義の日本の財務官僚は米欧に追随することしか考えない。そんな具合だから、国際通貨基金(IMF)は人民元を「国際通貨」として今秋までに認定する公算が高い。となると、北京は大手を振って人民元を増殖させては世界にばらまくだろう。

 春節の銀座の風景は、チャイナマネー景気にすがり、それにどっぷりつかりたがっている世界の縮図である。それはいかにも危うい。

 中国経済は事実上マイナス成長に陥っている。バブルの歴史を思い起こせばよい。実体経済から遊離して膨張するカネはある日突然、雲散霧消する。グローバル化された世界経済がその道連れになるだろう。(産経新聞特別記者 田村秀男)

http://www.sankei.com/world/news/150224/wor1502240017-n1.html