2014/08/31 3:02

宇宙ゴミ(スペース・デブリ)は、宇宙利用上、最大の課題です。これまでに最も多くの宇宙ゴミを出した事例は、2007年、中国が衛星破壊能力の示威の為に行った気象衛星の弾道ミサイルによる破壊で、ミサイルと重さ1トンの衛星は3000個近くのかけらと化しました。米・豪社に倣い、我が国も宇宙ゴミと敵対的衛星の監視と排除対策が必要です。

《宇宙ゴミと戦う-ロッキード、豪社と追跡施設建設へ》
2014.08.27 WSJ

 【キャンベラ(オーストラリア)】宇宙ゴミ(スペース・ゴミ)は、ハリウッド映画のヒット作「ゼロ・グラビティ(重力)」で描かれたように、現実的な心配事になっている。映画は、宇宙ゴミの嵐が軌道上の宇宙船を襲い、生き残った宇宙船の乗組員を窮地に陥れるという内容だった。

 米防衛大手ロッキード・マーティンは、キャンベラに本拠を置くハイテク会社と共同で、オーストラリアのアウトバック(内陸部の広大な砂漠地帯)に追跡施設を建設する。この施設では、地球の軌道を回っている商業人工衛星や非商業衛星を脅かす宇宙ゴミを追跡する。野球のボール程度の小さなゴミでも追跡できるようになるという。

 ロッキードの広報担当トレバー・トマス氏は「軌道を回っている人工衛星に1日当たり最大200個もの宇宙ゴミが脅威を与えている」と述べ、「衛星の大半が損傷を受ける可能性があるし、実際、ゴミの破片は毎日衛星にぶつかっている。平均して約5億ドル(約520億円)の価値がある衛星にぶつかっているのだ」と語った。

 ロッキードと、提携相手の豪ハイテク会社エレクトロ・オプティック・システムズ(EOS)ホールディングスは、イラクとアフガニスタンの戦場で初めて有効性が証明された光学・レーザー技術を使って、時速1万7500マイル(約2万8000キロメートル)で飛ぶ宇宙のゴミを追跡する。この装置は、最大20万個の物体を追跡できるレーダー・システム(地上レーダー施設)である米空軍の「スペース・フェンス」のような装置を増強する形になる。

 衛星のオペレーター会社にとって、宇宙のゴミは常に大きな懸念事項であり、多額の費用が発生する懸念もある。軌道上には半径10センチを超えるゴミが2万1000個以上存在することが知られており、「宇宙監視ネットワーク(SSN)」が常にそれを追跡している。これらのゴミには、宇宙遊泳をした宇宙飛行士が落とした道具や、旧式のロケットが漂流後に爆発して砕け散った破片などがある。

 しかし、ごく小さなゴミでさえも衛星に損傷を与える。米航空宇宙局(NASA)によると、スペースシャトルの窓は地球帰還後に交換する必要があるという。弾道ミサイルの速度で飛んでくる小さな塗料の粒が当たるためめだという。NASAによると、指の爪より小さいゴミが、地球の約500マイル(約800キロメートル)上空に1億個以上存在する。

 既に、ゴミとの衝突やニアミスは何回も起こっている。1996年には、フランスの衛星がその10年前に爆発していた同国のロケットのゴミと衝突して損傷を受けた。5年前には、機能を停止していたロシアの衛星が米イリジウム・サテライト社の保有する民間衛星に衝突し、破壊した。NASAによれば、これにより、2000個以上の宇宙ゴミが派生したという。

 これまでに最も多くの宇宙ゴミを出した事例は、2007年に起きた。中国が宇宙での軍事上の潜在的脅威を排除できる力を示そうと、気象衛星の「風雲1号C」に向かって弾道ミサイルを撃ったからだ。このミサイルと重さ1トンの衛星は瞬時に3000個近くのかけらと化した。

 軌道上のゴミに対処するため、衛星オペレーターとNASAはレーダーをベースにしたセンサーを地上に設置している。それによって接近する宇宙のゴミを察知し、宇宙飛行士や機材を避難させるのだ。国際宇宙ステーションの宇宙飛行士たちは、破滅的な衝突の恐れがあったため、何度かロシアのソユーズ宇宙カプセルの救命ボートに避難したことがある。

 ロッキードとEOSが打ち出した追跡施設計画では、追跡に初めて光学技術を使う。その後、レーザーを使って地球からのゴミの距離や、その速度を算出する。

 EOSの宇宙システム部門のトップであるクレイグ・スミス氏は、宇宙ゴミとの衝突で破壊されている人工衛星は年間平均1個と推定している。

 同氏によると、ロッキードと共同のオーストラリアの追跡施設の建設は今年始まる予定で、2016年初頭に完成する。同氏は、この装置によってゴミを追跡する能力は25%程度増強されるだろうと述べた。ロッキードもEOSも、オーストラリアの追跡施設への投資額は明らかにしなかった。

 一方、宇宙科学者たちは、「スター・ウォーズ」に似た他の技術でも研究を継続している。軌道上にある約2000個の衛星を脅かす宇宙ゴミに対応する技術だ。EOSは、キャンベラ郊外の山頂にある研究・実験施設で、宇宙ゴミを迎撃するため、強力なプラズマビームが使えるかどうかを調べている。そのエネルギーを使って衛星の軌道から宇宙ゴミをそらすのだ。米国ではレーザーを使った同様の技術が開発中だ。

 ロッキードの宇宙システム部門幹部のリック・アンブローズ氏は「地上から宇宙の状況認識(SSA=敵対的な衛星、宇宙天気などを監視すること)は、政府にとっても民間企業にとっても優先度が高まっている。宇宙にある自分たちの投資資産を保護する必要があるからだ」と述べている。
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970204431804580116822675169644