2014/08/31 10:08

先人の知恵の宝庫たる地名は、大切に残さなければなりません。

《【産経抄】地名は警告する》
2014.08.27 産経新聞

 いわゆる「平成の大合併」で、全国の市町村の数は、半分近い約1700に減った。ひらがなやカタカナ、あるいは地理的な実態にあわない名前の市が生まれて、物議を醸したものだ。同時に、いくつかの由緒ある自治体名がなくなった。

 ▼地名は「土地の精霊」だとする民俗学者の谷川健一さんは、「ほしいままの命名が横行している」と嘆いたものだ。もっとも、地名に対する日本人の関心が高まったことも事実である。

 ▼東日本大震災の後、地名があらためて脚光を浴びている。大災害を経験した先人たちが、「ここは危ないぞ」とのメッセージを後世に残したというのだ。たとえば、地図情報コンサルタントの遠藤宏之さんは、岩手県の釜石や宮城県の塩竃にみられる『カマ』に注目する。「古語の『噛マ』に通じ、津波により湾曲型に浸食された地形を意味する」(『地名は災害を警告する』技術評論社)。

 ▼広島市北部の土砂災害で、とりわけ被害が大きかったのが、安佐南(あさみなみ)区八木地区だった。フジテレビの「とくダネ!」はきのう、この地域がかつて「八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしだに)」と呼ばれていた事実を伝えていた。蛇が降るような水害が多かったので、悪い谷の名前がついたと、古くからの住民は説明する。やがて「八木上楽地芦谷(じょうらくじあしや)」と改名され、現在は地名に八木だけが残った。

 ▼遠藤さんによると、確かに蛇をあてることが多い「ジャ」は、土砂の流出を表す「崩壊地名」のひとつである。ただ、八木の「ヤギ」だけでも、岩石が流されて転がっている場所を示している。

 ▼「土地の精霊」たちは、ちゃんとヒントを残し、警告してくれていた。それを聞き取り、共有できる知恵がわれわれに備わっていれば、悲劇は避けられたかもしれない。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140827/dst14082703100002-n1.htm