1996年、国連人権委員会に報告された「クマラスワミ報告書」は、吉田清治の捏造話や慰安婦と挺身隊の混同等に基づき、慰安婦を20万人の「性奴隷」としました。日本政府は人権委に、「極めて不当」「無責任で予断に満ち」「歴史の歪曲に等しい」と厳しく批判する反論文書を提出しましたが、愚かな「政治判断」ですぐに撤回してしまいました。「クマラスワミ報告書」、それに続く「マクドゥーガル報告書」は修正されなければなりません。 — 《【歴史戦 第5部 「朝日検証」の波紋(下)1】慰安婦問題「オールコリア態勢」 クマラスワミ氏取材を韓国外務省サポート》 2014.08.25 産経新聞 聯合ニュースや進歩系のハンギョレ紙、保守系の中央日報が発行する英字紙、KBSテレビなど大手韓国メディアは今月中旬、国連人権委員会(現人権理事会)の慰安婦問題などに関する特別報告官として、いわゆる「クマラスワミ報告書」を作成した女性法律家、ラディカ・クマラスワミへのインタビューを相次いで報じた。 インタビューはスリランカ・コロンボにあるクマラスワミの自宅で行われ、ニュース映像には複数の韓国記者が取り囲んで取材している様子が映し出されていた。聯合ニュースの記事には「韓国外務省合同取材団」とあった。産経新聞が韓国外務省に確認したところ、同省が取材記者を募り、渡航費などの負担はしていないものの外務省職員らがサポートしたという。 クマラスワミ報告書は朝鮮半島で女性を強制連行したとの自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治の証言などを引用しながら、慰安婦を「性奴隷」と定義し、その人数を「20万人」と記述。日本政府に対し法的責任の受け入れと被害者への補償などを求めており、韓国側の主張とも一致するものだ。 日本政府が6月に慰安婦問題に関する平成5年の河野洋平官房長官談話の検証結果を発表したことなどを受け、反発を強める韓国政府による対抗措置の一環といえる。 聯合ニュースは12日、慰安婦問題についてクマラスワミが「再び後退している」「日本政府は強硬な姿勢へと向かっている」との懸念を示したと報じた。 インタビューが行われたのは9日。朝日新聞が5日に吉田証言を「虚偽」と認めた直後だったが、クマラスワミはこれには直接触れず、「明らかに大部分で強制性があった」と河野談話の検証を批判したという。 日韓関係に詳しい静岡県立大准教授、奥薗秀樹はこう指摘する。 「慰安婦問題について韓国では、政府はもちろん、保守系マスコミも進歩系マスコミも一つの声をあげるオールコリア態勢ができている」 その姿勢は朝日報道への対応でも変わらない。 朝日新聞が今月5、6両日に掲載した慰安婦問題の特集記事について、6日付の主要韓国紙は「朝日新聞、安倍に反撃…“慰安婦問題直視を”」(朝鮮日報)「朝日、右翼に反撃」(中央日報)との見出しを掲げ、「自由を奪われた強制性あった」という朝日の主張を全面的に支持した。 ◆保守勢力に警告 旧日本軍が慰安婦を「強制連行」したという誤解を韓国側に植え付けるきっかけの一つとなった自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治の証言を朝日が「虚偽」と認め、記事を取り消したことを、韓国メディアは問題視していない。むしろ「自己反省した」(朝鮮日報)「潔い反省」(中央日報)と評価している。 なかでも朝鮮日報は、吉田証言を、記事中で「証拠が裏付けされていない証言」といった曖昧な表現にとどめ、朝日の誤報には直接触れていない。それどころか「安倍首相と産経新聞など極右メディアは朝日新聞を標的にし、『慰安婦=朝日新聞の捏造説』まで公然と流布させている」と、朝日の慰安婦報道を追及してきた側を非難している。 さらに「(朝日は)慰安婦の強制動員を証明する資料が多い点も強調した」とし、「朝日の今回の記事は『慰安婦の強制動員はなかった』という考えを持つ安倍首相への直撃弾でもある」とまで言い切った。 この記事を書いた同紙の東京特派員は後日、別の記事中でも「極右から『反日的』と攻撃されながらも数十年にわたって旧日本軍の慰安婦問題の真実を伝え『日本の良心』と評される朝日新聞の根気と執念」と手放しでたたえた。 中央日報も同様で、次のように解説した。 「慰安婦関連報道の先駆者の役割を果たしてきた朝日は『慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質』とし、日本国内の保守勢力の『責任否定論』に対し警告した」 東亜日報も「朝日は、極右が否定している強制連行について『本人の意に反して慰安婦にされる強制性があった』と指摘した」と報じた。いずれも、「強制性」を主張する元慰安婦たちの証言があるため、朝日の記事取り消しは韓国側の主張を覆すものではないとの認識が根底にある。 ◆「強制性」を死守 韓国メディアの一方的な報道について、静岡県立大准教授、奥薗秀樹はこう解説する。 「慰安婦問題には2つの側面がある。1つは日韓間の戦後補償問題であり、もう1つは女性の人権蹂躙という普遍的な国際問題という側面だ。後者の側面から見ると、韓国としては慰安婦問題を国際問題化することに成功した今となっては、吉田証言が虚偽であったとしても、そのことに大した意味はない」 朝日の慰安婦報道が韓国政府や韓国メディアに少なからぬ影響を与え、日韓関係悪化の発端になったことは完全に度外視されている。逆に朝日擁護の姿勢を強めている。 朝日の検証に対し、日本国内で非難が高まると、「日本の保守勢力、“朝日の慰安婦報道”総攻勢」(京郷新聞電子版、6日)「日本の右翼が朝日の慰安婦報道総攻撃」(東亜日報、7日付)と、その動きを批判した。 朝鮮日報国際部長(元東京特派員)は「朝日新聞の孤立」と題するコラム(9日付)でこう主張した。 「旧日本軍慰安婦をめぐる朝日新聞の闘いは20年以上になる。加害者の国の新聞が常に被害者側で闘ってきたのだから、孤立し疲れが見えてきた。知恵を絞って助ける方法が韓国政府にはあるはずだ」 ここまでして韓国メディアが、朝日を必死に守ろうとするのはなぜか。韓国メディア関係者が語る。 「韓国は安倍政権が『検証するが見直しはしない』と言いながら河野談話を骨抜きにしようという底意を持っていると真剣に疑っている。安倍への強い不信感があるので、安倍政権に厳しい姿勢を見せる朝日を守るのは当然だ」 しかも「強制性」の部分は、韓国にとっても慰安婦問題で死守しなければならない要ともいえるため、朝日に同調する論調に終始しているというわけだ。 韓国の報道姿勢について、同国のメディア事情に詳しい専門家はこう断じるのだった。 「誤報には目をつぶり、自分たちの都合の良い部分ばかりに焦点を当てるのは韓国の対日姿勢を象徴している」(敬称略)=第5部おわり ◇ この企画は有元隆志、阿比留瑠比、大竹直樹、田北真樹子、原川貴郎、水沼啓子が担当しました。 |