《ロシア、ウクライナ軍事介入へ=欧米の反発必至-クリミア情勢重大局面》
3月30日に前倒しされたクリミア自治共和国の住民投票を待たず、ロシアは同自治共和国の要請を受け、ウクライナへの軍事介入を決定しました。
親欧米派のウクライナ暫定政権には、ロシア軍と全面対決する実力はありません。支援する欧米諸国も、この地で今のロシアと戦う覚悟は余程の事態が生じない限り無いのではないか。暫定政権側は、国連に監視団や平和維持軍の派遣を要請した方が良いと思いますが、ロシアがどの様に反応するかは分かりません。
現段階で、ウクライナと欧米側の目標は、クリミアの高度な自治を認めつつ、国家の解体だけはさせない、即ちクリミアの分離独立とロシアへの編入だけはさせない事、ロシア軍に駐留させない事、そして、紛争を親露派のウクライナ東南部全体に拡大させない事だと思いますが、それには急速な欧米傾斜を止め、東南部とロシアの不信感を払拭する必要があり、それ自体、非常に困難です。
以下、記事。
—
ロシアのプーチン大統領は1日、ウクライナへの軍事介入を上院に提案し、上院は全会一致で承認した。ウクライナ南部クリミア自治共和国でロシア軍が展開する条件が整ったことで、緊迫が続くウクライナ情勢は重大局面を迎えた。大統領は声明で「ウクライナの非常事態とロシア系住民の生命の脅威に関連し、事態が正常化するまで、ウクライナでロシア軍兵力を使うことを上院に提案した」と表明。軍事介入の方針を決めたプーチン政権の強硬姿勢に、欧米諸国が反発するのは必至だ。
ロシア系住民の多いクリミア自治共和国の親ロシア派、アクショノフ首相は1日、全軍と治安部隊を指揮下に置くと宣言するとともに、プーチン大統領に治安回復に向けた支援を要請。こうした動きを受け、ロシアのマトビエンコ上院議長は、クリミア半島での限定的軍事行動を容認すると表明。ナルイシキン下院議長もロシア系住民保護のため全手段を講じるようプーチン大統領に求めていた。
親欧州連合(EU)派のウクライナ新政権のテニュフ国防相は1日、ロシアがクリミア半島に約6000人の兵力を追加派遣したと非難。半島南部フェオドシアで、ウクライナ軍部隊が武装したロシア軍人らを拘束したことを明らかにした。ロシア軍人らはウクライナ海兵隊基地に侵入しようとして捕まったという。また、報道によると、半島西部エフパトリアで、ロシア軍がウクライナ対空防衛施設の襲撃を試みて失敗したもようだ。戦闘や死傷者の有無は不明。
アクショノフ氏は「内務省、非常事態省、陸軍、海軍、税務当局、国境警備隊を掌握する。従わない指揮官はクリミアを去るべきだ」と表明。クリミア自治共和国は事実上の「軍」創設の動きを強めている。アクショノフ氏は、既に重要拠点警備で黒海艦隊と協力していると語った。
アクショノフ氏は、自治権拡大の是非を問う住民投票を5月25日から前倒しして3月30日に行うと発表。また、現地のロシア総領事館は、住民へのロシア旅券(国籍)発給を拡大する用意を明らかにした。ロシアは2008年グルジア紛争で「ロシア国籍者」の保護を名目にしていた経緯があり、クリミア半島の「ロシア化」政策の一環とみられる。クリミア半島は1954年の帰属替えまでソ連ロシア領だった。