《甘かった再生エネ電気買取制度 業界関係者「いくらでもズルができる」》
太陽光発電がなかなか進みません。
以下、記事抜粋。
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国が普及を進めてきた再生可能エネルギー業界に2月14日、ついに経済産業省の“メス”が入った。再生エネルギーで発電した電気を電力会社に一定価格で買い取ることを義務づけた固定価格買取制度(FIT)の認定を受けたにもかかわらず、運転を始めていない太陽光発電約670件について、認定取り消しを検討すると発表したのだ。前代未聞の事態の背景には、「いくらでもズルができる」と業界関係者が明かす制度の致命的な甘さがあった。
3割の業者は1年経っても土地・設備すらなし!
「現行制度だと、いくらでもズルができる」。関西で太陽光発電事業を行う関係者は、FITについてこう指摘した。
FITは、コストの高い再生可能エネルギーの育成を目的に、平成24年7月に始まった制度。初年度は利益を確保しやすい高めの買い取り価格が設定され、太陽光なら1キロワット時当たり42円(10キロワット以上)で20年間買い取る-という好条件が設定された。
しかも、業者が新規参入しやすいようにと、土地や設備を事前取得しなくても計画認定は受けられる。結果、翌年10月までに新たに稼働した再生エネの発電設備容量は585万2千キロワットで、導入前と比べて約3割増えた。
この大半を占めるのが主力の太陽光(非住宅)だ。だが、実は国が認定した設備容量は2249万キロだったが、実際に運転を開始したのは382.7万キロワットで、2割にも満たないことが経産省の調査で判明。しかも、認定から1年以上たっても土地・設備を確保していない業者が全体の3割に上っていることも分かった。
国の認可事業に、なぜこのような事態が起きたのか。理由は、買い取り価格設定の方法にあった。
FITでは、電力会社が再生可能エネルギーを買い取る価格は、再生エネルギー事業者が設備の認定を受けた時点の額が最長20年間にわたって適用される。このため、1キロワット時当たり42円という「高値」が設定された初年度には、土地や設備の取得の前に「ひとまず認定」を目指す業者が続出。翌25年度に価格が約38円に値下がりすると、業界内では「早め認定が必須」とのムードが高まり、さらなる“駆け込み認定”が相次いだ。
太陽光発電には広大な土地が必要で、自治体などから借りるケースが多い。当然、好条件の土地には複数の企業が殺到することも多く、ある業者は「狙っていた土地があったが、他社に競り負けて獲得できなかった」と打ち明ける。国の認定を受けなければ銀行から設備投資資金を借りられないなど、資金繰りのため認定を急ぐケースもある。
太陽光発電事業を調査する独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究員は、「国内でメガソーラーを置ける土地は今後さらに減少し、企業間の土地争奪戦が過熱する恐れが高い」と懸念する。
NEDOは26年度から、海や池、湖上に水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)を陸上と同コストで設置する国内初の技術開発に乗り出しており、水上を新たな導入場所として開拓する方針だが、水上のコストは陸上より3割も高いのが現状だ。
東日本大震災以降、再生可能エネルギー普及促進に“前のめり”で取り組んできた日本政府。だが、普及のためにと甘く設定した制度は、その信用性すら揺るがしかねない問題を顕在化させた。FITはあり方そのものを今一度再考すべき時を迎えている。