《台湾人学生に対する中国人総統の報復―警官隊が暴行》
台湾研究フォーラム会長 永山英樹氏ブログ「台湾は日本の生命線!」より。
以下、記事。
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事の発端は国民党の馬英九政権が昨年六月中国との間でサービス(服務)貿易協定を締結したこと。台湾経済の主体である中小企業に大打撃を与えるばかりか、中国からの投資移民を誘致し、台湾併呑を目論む中国の影響力を台湾の政治に大きく及ぼしかねないほどの同協定を、密室作業で締結したわけだから、国会では野党はおろか国民党までもが逐条審査を行うことを決め、その発効に待ったを掛けたのだが、国民党議員団は三月十七日、中国の顔色をうかがう馬英九の意に従い、審査通過を強行に採決。これに危機感を抱いた学生らが十八日に立法院(国会)に突入し、議場を占拠。国会周辺も学生や民衆によって包囲された。
ヒマワリ学生運動と称されるに至った今回の行動に参加する群衆は暴徒ではない。民主主義を蹂躙し、台湾を中国に売り渡そうとする馬英九に対し、民主主義を守り、台湾を守ることを要求する怒れる群衆なのだ。だからこそ彼らは多くの国民の支持を受けている。
ところが馬英九は二十三日に記者会見を行い、服貿協定の撤回を求める群衆に対し、「服貿協定は台湾にとり、弊害よりも利益の方が大きい」「これが民主主義と言えるのか。このようなやり方で法治を犠牲にするのか」などと批判した。
かくして同日夜、学生ら群衆は行政院(内閣)を包囲。一部が建物の中に突入したのである。
二十四日払暁の時点で群衆はほぼ排除された。報道によれば約三時間で六十八人の群衆が負傷して病院に担ぎ込まれた。学生らの楯として奮闘していた台湾団結連盟の周倪安立法委員(国会議員・女性)もその一人。肋骨を折る重傷だ。
台湾団結連盟の黄昆着輝主席はこの事件を「台湾版天安門事件」と批判した。
中国軍の事実上の宣伝機関である香港のフェニックステレビの時事解説院である阮次山は二十日の番組で、国民党議員に一度は服貿協定の逐条審議を許した馬英九を「祖国大陸への反抗」と批判したが、これは中国政府の代弁だろう。こうした横暴な主張は中国人の政治文化の為せる技だ。
そして、まさにそれと同様の情念で台湾の国民を虫けらの如く扱う馬英九においても、中国人のDNAを見て取ることができる。民衆による国会占拠で面子を潰され、復讐の弾圧を加えようとの衝動に駆られているとしても、中国人権力者であれば不思議なことではない。天安門事件で鄧小平がそうだったように。
現地では国民党寄りのメディアの記者もどさくさに紛れて暴行をふるったそうだ。ごみ箱を蹴り倒し、それを撮影して群衆を暴徒に仕立て上げようとしたテレビカメラマンも目撃されている。また反国民党のメディアの記者は警察から暴行を受けた。どれもこれもが台湾人憎しの中国人感情の表れではないのか。
学生らは行政院に突入したが、それを煽る国民党の分断工作は行われなかったのか(群衆の中に同党関係者がいたとの情報もある)。また警察はなぜ一度は学生らの突入を許してしまったのか。群衆を暴徒と宣伝し、それを弾圧の口実にするといった謀略など、中国人にはお手のもののはず。真相は知りようもないが、狡猾な中国人の謀略に対抗できるほど、台湾人の民族性は狡猾ではなく、それを思えば実に危うい。
いずれにせよ、民衆に対する国民党の恫喝工作は成功を収めたと言えるだろう。
行政院から駆逐された群衆の多くは立法院に撤退した模様。学生らはなおも徹底抗戦の構え。若き彼らは恫喝を受ければ受けるほど闘志を高めているとされる。
ある学生は演説を行い、警察に対して涙ながらに訴えた。
「あなたたちは、こんなやり方で自国の国民を扱い耐えられるのか。もし制服を脱いだなら、我々の側に立つものと信じている」