2015/02/25 18:07



和歌山県太地町と同じ鯨の追い込み漁が行われているデンマークのフェロー諸島。「市長からは和歌山県太地町と姉妹都市提携したいという熱意を受け取った。フェロー諸島にもシー・シェパードがやってきている。しかし、フェロー諸島の人たちは日本のように受動的でやられっぱなしではない。彼らが法律に違反すれば、容赦なく拘束している」。

《【テキサス親父に直撃インタビュー】シー・シェパード「内部分裂している」「被害受けている国は日本だけでない。日本は連携を」》
2015.02.24 産経新聞

 「テキサス親父」の呼び名で知られる米テキサス州在住の評論家、トニー・マラーノ氏が2月初旬に来日し、都内でインタビューに応じた。ユーチューブで自ら作成した評論動画が評判となり、日本で著書の出版や各地で講演活動を手がける。夕刊フジでもコラムを連載し人気を博している。捕鯨やイルカ漁を標的にしているシー・シェパード(SS)について、独自で入手した情報や米国内での団体の受け止められ方、和歌山県太地町やデンマークフェロー諸島で活動家とやりあった秘話などを明かした。(佐々木正明)

Q トニーさんは2006年にユーチューブで評論動画を始めた当初から、シー・シェパードや創設者のポール・ワトソン容疑者の動向を追ってきた。最近の団体の状況をどう分析しているか?

A 私のところには、シー・シェパードの内部情報が入ってくる。いまワトソンのやり方や方針に反発して、仲間内で批判が沸き上がっている。ワトソンが日本の捕鯨船に対して過激な妨害を行ったことで、米国内で数多くの訴訟を背負うことになってしまった(★日本も捕鯨妨害差し止め訴訟を起こしている)。裁判の状況も芳しい状況ではなく、大きなダメージを受けている。訴訟費用もかなりかさんでいるはずだ。彼らは派手なドラマを演じているが、結果として彼らが理念として掲げる海洋動物の保護に貢献していない。生産性のないことばかりをしている。そうしたことが活動家らの不満につながっているようだ。彼らは巧みな宣伝活動を行っているので、こうした問題は外部からは見えないだろう。

Q 今年、シー・シェパードは活動場所を世界各地へと多様化し始めたようだ。これはなぜか?

A お金もうけの意味合いが大きい。シー・シェパードは日本たたききを行うことで成長を果たした。一方で「反日団体」との批判が強まり、そのイメージが周囲に浸透した。ワトソンは「反日ではない」と言い返してきたが、それも通用しなくなってきた。妨害活動が世界規模になってきたのはそうした批判を薄めようとする狙いもある。日本の調査捕鯨は今年、鯨の頭数を観察して調べる目視船しか派遣していないため、シー・シェパードは今年、あまりお金を集められていないはずだ。和歌山県太地町でのイルカ漁妨害も、日本政府がリーダー格を入国禁止にしているため、嫌がらせも少なくなっている。

Q シー・シェパードのことを米国人はどう受け止めているのか? そして、有名芸能人などハリウッドに支持者が多いのはなぜか?

A 米国国内における知名度は高く、一部の人たちのイメージは日本に比べて格段に良い。保守派ではなく、リベラル派に支持者が多い。しかしリベラル派の中にもシー・シェパードの活動は間違いだと思っている人もいる。ハリウッドや芸能界でどうしてシー・シェパードの支持者が多いかといえば、俳優や歌手のキャリアアップには慈善活動をしているかどうかが作用するからだ。動物愛護や環境保護を熱心に行っていれば、自身を売り出すときに役立つ。配役する側もそうした慈善活動を細かくチェックしている。俳優も歌手もシー・シェパードをキャリアアップに利用している。だから支援する。

Q シー・シェパードは米国で慈善活動を行うNPOとして免税特権を受けているが?

A この制度はシー・シェパードの運営を助けている。彼らはグッズ販売や寄付金から多くの収入があるが税金を払っていない。これは寄付する側にもメリットがあり、控除が得られる。米国では多くの市民がこうしたNPOに寄付をしている。相互扶助の文化が根付いており、病気や食糧難で苦しんでいる人たちを免税特権を受けたNPOが助けている。動物愛護運動もこうした免税特権の対象となるが、どうしてシー・シェパードがこの枠組みに入っているのか不思議に思っている。シー・シェパードは、支援者をだましてお金を巻き上げているのにすぎないからだ。表面上は海洋保全を掲げているが、そんな慈善団体ではない。

Q ポール・ワトソンはICPO(国際刑事警察機構)から指名手配を受けながら、米国に上陸し裁判に出廷した。どうして、米国の警察は彼を逮捕しないのか?

A これについても私は不思議に思っている。しかし、ICPOの赤手配書(逮捕要請)は加盟国に容疑者を即時逮捕することを強制するものではない。日本政府が米国政府に対して積極的に働きかけていないのではないか? ワトソン自身、逮捕状が自分に出ているのを怖がっている。日本政府は米国で妨害差し止め訴訟を行っているが、これは団体の破産を目的としたものだ。こちらの方を重視しており、ゆえにワトソンの逮捕にはあまり力を入れていないのかもしれない。いずれにせよ、ワトソンが身柄拘束されれば、団体は「フリー・ワトソン」(ワトソンを釈放せよ)キャンペーンを行うだろう。ワトソンのことを可哀想に思った人たちから多くの寄付金が集まるかもしれない。

Q CSチャンネルのアニマルプラネットで放映されたシー・シェパードの番組「鯨戦争」は米国で大変な人気となった。

A アニマルプラネットはシー・シェパード側の船だけに撮影クルーを乗せており、一方的な作りになっている。これは公平な番組ではない。リベラル派の中にはこの番組を見てシー・シェパードがかっこいいと思っている人たちがいることも事実だ。保守派はこの番組を通してシー・シェパードは何も達成していないし、ただのピュアな人たちの集まりだと思っている。

Q 和歌山県太地町のイルカ漁を批判するため、毎年、多くの活動家が来日するようになった。

A シー・シェパードは和歌山県での妨害活動を通して資金を稼ぐことに成功した。活動家らの多くは米国人とオーストラリア人だが、論理よりも感情で動く人たちが集まってきている。そして、日本までのフライトも含め自分たちで費用をまかなえる「お金持ちのぼんぼん」が多い。そうした人たちをシー・シェパードは利用している。彼らは「ボイコットジャパン」などと言いながら多くのお金を日本で使っている。日本文化や日本社会に対して尊敬の念がない人たちで、自分たちの好きなように行動しているだけだ。彼らには、いじめの精神があるようにも思う。日本では法的に取り締まりを受けることもないし、とても清潔で安全な国なので、長期滞在で心配する必要もない。彼らにとって日本はとてもよいターゲットになっている。

Q ポール・ワトソンは昨年夏に米国からフランスへ移動した。これはなぜか?

A シー・シェパードの支援者である元女優で動物愛護活動家のブリジット・バルドーがワトソンのためにお金を出したからだ。ワトソンの祖国カナダに帰れば、過去の活動で逮捕される可能性がある。米国でもそれほど多額の資金を寄付してくれる支援者はいない。日本とフランスの間には身柄引渡し条約がないから、彼はフランスを滞在先として選んだのだろう。米国には日本との間に身柄引渡し条約があるから、米国にはもういられなくなったのだ。

Q トニーさんは昨年、和歌山県太地町と同じ追い込み漁が行われているデンマークのフェロー諸島へ視察に行きました。現地はどんな様子だったか?

A 多くの人たちが私のことを知ってくれていて、街ではみんなが歓迎してくれたよ。フェロー諸島の人口は約5万人。首都であるトースハウンの市長にも会った。市長からは和歌山県太地町と姉妹都市提携したいという熱意を受け取った。日本人のフェロー諸島に対するイメージも良くなったのではないか。日本とフェロー諸島の関係を強化することはとても重要だと思う。フェロー諸島にもシー・シェパードがやってきている。太地町のパターンとは違って、警察に逮捕されることをいとわないような人たちが来ている。過激な団体に属しているメンバーもいた。活動家がシー・シェパードと結んだ個別契約書というのを見たのだけれど、活動家らは旅費以外にシー・シェパードのキャンペーンに参加するために1人あたり5千ドル(約60万円)の資金を払っているようだ。だからやはり活動家たちは「お金持ちのぼんぼん」が多いのではないか。しかし、フェロー諸島の人たちは日本のように受動的でやられっぱなしではない。彼らが法律に違反すれば、容赦なく拘束している。

Q シー・シェパードを取り巻く状況について今後の予測は?

A 米国で行われている捕鯨妨害差し止め訴訟の結果による。来期、日本が新しい調査捕鯨計画書に基づいて南極海に調査船を送り出せば、きっとシー・シェパードも苛烈な妨害を行うことだろう。大事なのはシー・シェパードの被害を受けている国は日本だけではないということ。他の国と連携してこの団体を追い詰めなくてはいけない。欧米でもシー・シェパードの活動に対して眉をひそめている人たちがいる。シー・シェパードの活動を認めれば、将来、漁業ができなくなると感じている。太地町について言えば、彼らのやっていることは業務妨害行為である。なぜ日本政府が彼らを滞在させているかわからない。法律改正をしなくてはならないだろう。南極海の調査捕鯨では、調査船を守るエスコート船をつけることも考えなくてはいけないだろう。

写真:2月に来日した米テキサス州在住のトニ-・マラーノさん。「テキサス親父」の名前で知られ、街でも記念撮影を求められる

http://www.sankei.com/premium/news/150224/prm1502240005-n1.html