2015/05/16 21:58

《カツオ節、欧州に売り込め…現地生産の動きも》
2015.05.16 読売新聞

 「和食ブーム」に沸く欧州に、カツオ節を売り込む動きが広がってきた。

 スペインなどで現地生産を始めたり、日本からの輸出に道筋をつけたりした生産者が登場した。関係者は「食文化の中心である欧州に高品質のカツオ節を届けたい」と意気込んでいる。

 農林水産省の推計では、2006年に約2000店だった欧州の和食レストランは、13年に約5500店まで増えたが、ダシに欠かせないカツオ節の日本から欧州連合(EU)への輸出は行われていない。

 日本のカツオ節について、EUは、いぶす際に基準値を超える発がん性物質「ベンゾピレン」が発生する、と考えており、輸入を認めていないのが理由だ。基準を満たす中国産やベトナム産を使う店が多いとされる。

 だが、農水省によると、最近になり、静岡県焼津市の削り節店「新丸正」が、近くEU向けの輸出工場としての認定を得られる見通しになったという。焼津市内の同業者らといぶし方を約3年前から研究し、EUの基準をクリアできた。

 イタリア・ミラノで今月始まった国際博覧会(ミラノ万博)には「特例」で商品の出荷が認められた。久野徳也社長(37)は「欧州は食に対する意識の高い地域。ここに出ることで、カツオ節を世界の食材に育てたい」と話す。

 一方、削り立てにこだわり、現地での生産に乗り出した日本人もいる。

 東京・築地に本店がある削り節店「和田久きゅう」は、4月中旬から、スペイン北西部の港町プエブラ・デル・カラミニャルでカツオ節の製造を始めた。地元で仕入れたカツオを使い、日本から持ち込んだ削り機で、0・02ミリ・メートルの薄さに仕上げる。

 厳密な温度管理で、ベンゾピレンの付着を抑えることにも成功した。和田祐幸さちゆき社長(45)は「日本産に近い品質のカツオ節を、なるべく安価で届けたい」と語る。

 欧州では、鹿児島県枕崎市の水産業者らが共同出資して、フランス西部にカツオ節工場を建設する計画も進行中だ。来年秋ごろに稼働する見込みという。(ロンドン 五十棲忠史、写真も)

http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150516-OYT1T50076.html