2015/05/24 0:45



《欧米学者声明に異議 “持ち上げ”は慰安婦で謝罪させる罠か 藤岡信勝氏緊急寄稿》
2015.05.23 ZAKZAK

★拓殖大学客員教授・藤岡信勝氏緊急寄稿(下)

 安倍晋三首相が8月に発表する「戦後70年談話」を見据えて、欧米を中心とした日本研究者が署名した「日本の歴史家を支持する声明」について、日本の専門家から「怪しさ」や「狡猾な罠」を指摘する声が浮上している。昨日に続き、拓殖大学の藤岡信勝客員教授が緊急寄稿した。

 3月に出された声明「日本の歴史家たちと連帯する」(19人が署名。後で1人加わる)と、5月の「日本の歴史家を支持する声明」(187人が署名。現在は450人超)の間には、日本側の毅然とした動きがあった。現代史家の秦郁彦氏を代表とする日本の歴史家19人が3月17日、米大手教育出版社「マグロウヒル」の教科書の誤り8カ所を指摘し、同社に訂正勧告をしたのだ。

 一例をあげよう。

 教科書は、慰安婦の総数を「20万人」としつつ、「慰安婦が毎日20人~30人の男性を相手にした」と書いている。そうすると、日本軍は毎日、400万回~600万回の性的奉仕を調達したことになる。他方、相手となるべき日本陸軍の海外兵力は、最盛期の1943年で100万人であった。そこで、教科書に従えば、彼らは全員が「毎日4回~6回」慰安所に通ったことになる。これでは戦闘準備をする時間はおろか、まともに生活する暇もなくなる。

 こうした反論は、手裏剣のように相手の論理の急所に突き刺さった。さすがに「20万」という数字は言えなくなった。この推定が当たっているとすると、日本からの訂正勧告は、今年の歴史戦の大戦果の1つになる。

 5月声明の187人の署名者の中には、3月声明の19人の文書にも名を連ねた人物が12人もいる。それらの人々が自説を変えたのなら、まずマグロウヒル社の教科書是正をわれわれと一緒に要求すべきだ。

 187人の声明では、戦後日本の国際貢献をやたらに持ち上げている。「世界の祝福に値する」とまで言う。だが、それは1つの伏線で、その祝福を受けるにあたって障害となっているものが「歴史解釈」の問題だとして慰安婦問題を持ち出すのである。

 「20世紀に繰り広げられた数々の戦時における性的暴力と軍隊にまつわる売春のなかでも、『慰安婦』制度はその規模の大きさと、軍隊による組織的な管理が行われたという点において、そして、日本の植民地と占領地から、貧しく弱い立場にいた女性を搾取したという点において、特筆すべきものであります」

 何のことはない。「19人」は刑事部屋の鬼刑事である。被疑者を恫喝して、ひたすら自白させようとする。嘘がバレてうまくいかなくなったので、今度は「187人」が温情刑事として登場する。「お前さんはいいこともした。罪を認めて謝罪すればもっと褒められる」という。どっちも日本に謝罪させようとする目的は同一なのだ。

 日本政府は怪文書(声明)を無視したらいい。われわれ民間は徹底的に論争する。反日包囲網を敷かれても真実はこちらにあるから、必ず勝利する、と私は確信している。 =おわり

写真:旧日本軍による慰安婦の強制連行があったかのように記述している教科書

■ 藤岡信勝(ふじおか・のぶかつ) 1943年、北海道生まれ。北海道大学大学院修了後、北海道教育大学助教授、東京大学教授、拓殖大学教授を歴任。現在、拓殖大学客員教授。95年、歴史教育の改革を目指して自由主義史観研究会を結成。97年、「新しい歴史教科書をつくる会」の創立に参加し、現在同会理事。著書・共著に『教科書が教えない歴史』(産経新聞ニュースサービス)、『国難の日本史』(ビジネス社)など多数。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150523/dms1505231530004-n1.htm