《【ウクライナ情勢】サミット前に東部で戦闘激化 双方が非難合戦 和平合意もはや形骸化》
2015.06.05 産経新聞
【キエフ=遠藤良介】ウクライナ東部で、政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘が激しさを増している。3日の衝突では、2月の和平合意(ミンスク2)で後方への撤収が定められた重火器について、双方が使用したことを認めた。ウクライナ問題も議題となる主要国首脳会議の開幕を間近に控え、和平合意の形骸化が浮き彫りになっている。
ウクライナ東部の中心都市、ドネツク郊外のマリインカやクラスノゴロフカでは3日、激しい戦闘で政府軍と親露派、住民に計20人超の死者が出た。
政権側と親露派はそれぞれ相手が攻撃をしかけたと非難し、大口径の砲火器を投入したことを明らかにした。
2月の和平合意後も要衝のドネツク空港周辺や港湾都市マリウポリ郊外では散発的な交戦が続いてきたが、3日の戦闘は前線での情勢緊迫化を強く印象づけるものとなった。
ポロシェンコ大統領は4日、議会への年次報告演説で、ロシアから親露派への武器供与が続いており、ウクライナ領には親露派を支援するロシア兵9千人以上がいると発言。ロシアからの「全面的侵攻」に備えねばならないと述べた。
親露派が攻勢に出る“動機”としては、政権側による「経済封鎖」が強まる中、交通の要衝や産業施設を新たに獲得して事態を打開する思惑が指摘される。また、ロシア側は、サミットで厳しい対露方針を打ち出すことを狙うウクライナ側が、前線の緊張を高めていると主張している。
紛争では昨年9月、最初のミンスク和平合意が成立。今年1月に大規模衝突が再発して破綻し、2月に「ミンスク2」が発効した。交戦の困難な融雪期の後に正念場が訪れるとの見方が、当初から根強かった。
http://www.sankei.com/world/news/150605/wor1506050047-n1.html