11/17/2017 11:39:43 PM

ASEAN議長声明、2014年以来盛り込まれてきた南シナ海「懸念」の文言を盛り込まず。議長国フィリピンのドゥテルテ大統領の対中融和路線が声明に表れた形。
大変残念な後退です。

2016年7月12日の仲裁裁判所の判決に従い、中国のいかなる違法な行為も認めず、日米豪印を主軸に、南シナ海の自由航行をはじめ、関与を強化していかねばなりません。

《ASEAN議長声明、南シナ海「懸念」の文言盛り込まず 中国に配慮か》
2017.11.16 産経新聞

 【シンガポール=吉村英輝】東南アジア諸国連合(ASEAN)は16日、マニラで13日に開いた首脳会議の議長声明を発表した。一部加盟国と中国が領有権で対立する南シナ海問題では、過去の声明で使われてきた「懸念」の文言が消え、新たに「ASEANと中国の関係改善に留意」するとの表現が入り、中国に配慮した内容となった。

 前回4月の首脳会議の声明では、従来の声明に盛り込んでいた「信用の失墜」といった厳しい言葉を避けつつも、「地域での最近の出来事に複数の首脳が示した懸念に留意する」とし、名指しを避けながら、中国が造成した人工島の軍事拠点化を批判していた。

 産経新聞が入手した11日段階の今回の声明の草案では、南シナ海問題の項目だけ空白になっており、議長国フィリピンが文言の最終調整を進めていた。

 一連のASEAN関連首脳会議では、トランプ米大統領が、南シナ海問題を含むアジアの安全保障政策で明確な態度を示さなかった。一方、中国では習近平国家主席が長期政権への基盤を築き、南シナ海情勢もとりあえず平穏を保っている。このため、「(南シナ海問題に)触れずにいるのがいい」との議長国フィリピンのドゥテルテ大統領の対中融和路線が声明に表れた形だ。

 北朝鮮による核・ミサイル開発をめぐっては、声明案にあった「大量破壊兵器開発の進展」という表現は消え、トーンが弱まった。

http://www.sankei.com/world/news/171116/wor1711160051-n1.html

《南シナ海問題「懸念」消えた? ASEAN議長声明発表》
2017.11.16 朝日新聞

 13日にマニラで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長声明が、閉幕から3日が過ぎた16日に発表された。中国が実効支配を進める南シナ海の問題では、中国を念頭に2014年から続いてきた「懸念」という表現がなくなった。中国への融和姿勢が強まった形だ。

 声明は、一部加盟国と中国が領有権を争う南シナ海問題をめぐって「中国とASEANの関係が改善状況にある」と指摘。その上で、南シナ海での紛争解消に向けた中国とASEANの「行動規範(COC)」の枠組みが合意されたことを踏まえ、中国との今後の交渉開始に期待を示した。

 これまで懸念を示していた部分については「平和、安定、安全の維持と航行・上空飛行の自由を確保する重要性を再確認する」とするにとどめ、「非軍事拠点化と相互信頼の強化、状況を複雑化させる行為を抑制することの重要性を再確認した」と記した。

 南シナ海をめぐっては、西沙諸島の近海で中国が石油掘削をしていた2014年5月の首脳会議の議長声明で、「深刻な懸念」を表明。以来、「懸念の維持」「懸念を共有」などと形を変えながらも、首脳会議の議長声明では南シナ海をめぐる「懸念」が表明されてきた。(ハノイ=鈴木暁子)

http://www.asahi.com/articles/ASKCJ446SKCJUHBI00W.html

《南シナ海、中国の主権認めず 国際司法が初判断
習主席「判決の影響受けない」》
2016.07.12 日経新聞

 【ブリュッセル=森本学】国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、南シナ海での中国の海洋進出を巡り、中国が主権を主張する独自の境界線「九段線」に国際法上の根拠がないと認定した。中国が人工島造成など実効支配を強める南シナ海問題に対し、初めて国際的な司法判断が下された。中国は判決を受け入れないとしており、国際社会との緊張が高まるのは必至だ。

 裁判はフィリピンが提訴した。判決文は九段線の海域内で中国が主張する主権や管轄権、歴史的権利に関して根拠がないと指摘。国連海洋法条約を超えて主権などを主張することはできないとした。中国は1996年に同条約を批准している。

 中国が造成する人工島も「島」と認めなかった。フィリピンが訴えた「中国が人工島を造成したミスチーフ礁などは満潮時に水没する『低潮高地』(暗礁)であり、領海を設定できない」との指摘を認めた。

 スカボロー礁やジョンソン礁などは「岩」であると認定し、沿岸国が漁業や資源開発などの権利を持つ排他的経済水域(EEZ)は設けられないと判断した。スカボロー礁周辺の海域は中国、フィリピン、ベトナムの伝統的な漁場で、中国がフィリピン漁船にたびたび妨害を加えていたことも国際法違反だとした。

 フィリピンのヤサイ外相は判決を歓迎するとした上で「フィリピンは画期的な判決を尊重し、強く支持する。紛争の平和的解決のため、引き続き努力する」と述べた。一方、中国の習近平国家主席は北京訪問中のトゥスク欧州連合(EU)大統領との会談で「南シナ海の島々は昔から中国の領土であり、領土、主権、海洋権益はいかなる状況でも仲裁判決の影響を受けない。判決に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と強調した。

 国連海洋法条約に基づく仲裁裁判は、相手国の同意がなくても一方の国の意思だけで始められる。中国の海洋進出を脅威に感じたフィリピンは2013年1月に裁判の開始を申し立てた。中国は拒否したが、同条約の規定に従い裁判官に当たる5人の仲裁人が審理した。

 中国は1950年前後に九段線を示し、海域のほぼ全域での主権と管轄権を主張してきたものの、国際法上の根拠を明確には説明してこなかった。今回の判決で「国際法違反」と明確に結論づけられ、中国の主張が根底から覆された。中国とフィリピンは判決に従う義務を負うが、罰則や強制する仕組みはない。

 南シナ海は国際航路の大動脈である上、天然ガスや漁業などの資源が豊富。中国とフィリピンのほか、台湾、ベトナム、マレーシアなどが領有権を争っている。中国はここ数年で南沙(英語名スプラトリー)諸島で埋め立てを進めて人工島を造成したほか、西沙(英語名パラセル)諸島にミサイルを配備し、国際的な懸念が強まっていた。

 主要7カ国(G7)は5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、「法に基づく主張」「力や威力を用いない」「平和的な紛争解決」の三原則を確認した。

https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM12H6C_S6A710C1MM8000/

https://www.facebook.com/koichiro.yoshida.jp/posts/874153819418822