07/10/2017 02:20:09 AM

我が国は古来、いつの時代においても来日した外国人が一様に驚いた「子供の楽園」でした。
子供をこそ大切にするのが、我が国の伝統的な価値観であり、文化であり、政治です。

《公園も大声禁止、遊び場を追われる子どもたち》
2017.07.08 読売新聞 白土健 大正大学人間学部教授 

 街の公園から箱型ブランコやジャングルジムなど、子ども向けの遊具が撤去され、その代わりに高齢者が使う「健康遊具」を設置するケースが増えている。少子高齢化に伴い、かつての「児童公園」は「街区公園」に変更され、高齢者など幅広い世代に向けた憩いの場となった。しかしその一方で、最近ではボール遊び禁止などに加え、「大声を出さない」などの注意事項が増え、子どもたちが公園で遊びづらくなっているという指摘もある。最新の公園事情を大正大学の白土健教授が読み解く。

■ 消える子ども向け遊具、増える健康遊具

 1960年代まで、子どもたちの遊び場といえば空き地だった。そこでは年齢の異なる子どもたちが一緒に遊び、上級生が下級生に遊び方を教えた。高度成長期に入って開発が進み、郊外にあった空き地が姿を消すと、代わりに「児童公園」が整備された。子どもたちはその限られた空間の中でブランコやシーソー、滑り台、鉄棒、箱ブランコなどバラエティーに富んだ遊具で楽しみ、時間を過ごした。

 その後、少子高齢化が進み、特に高齢者側からの要望があったことから、93年6月に都市公園法施行令の一部が改正されて「児童公園」の名称はなくなった。代わりに「街区公園」となり、子どもだけに限らず、周辺地域に住む幅広い世代が利用できるように整備が進められた。さらに、2000年頃から、子どもが箱型ブランコに身体を挟まれたり、回転ジャングルジムで指を切断したりするなどの事故が相次ぐようになると、一部の遊具は危険とみなされ、撤去された。

 空いたスペースには主に高齢者が老化防止用にストレッチやぶら下がりなどをするための「健康遊具」が設置された。国土交通省によると、「街区公園」では調査を開始した1998年度から2013年度までの間に、箱型ブランコが9割近く、ジャングルジムが約2割減ったのに対し、健康遊具は約5・5倍に増えた。この健康遊具で遊ぼうとした子どもたちが「歩行運動の遊具に足を挟んで骨折した」「懸垂器具で着地した際にバランスを崩し、腕を骨折した」といった報告があり、国は14年に、「(健康遊具を)子どもの遊具と混在させない」との指針を出し、子どもに利用させないように呼びかけている。

 遊ぶ遊具が減り、使えない遊具が増えただけではない。以前からボールを使った遊びを禁止する公園が多かったが、最近では公園内で「大声を出さない」「走り回らない」といった注意書きも見られるようになり、いっそう遊びづらい場所になっている。ボールを使えず、声も出せず、走り回らずにどうやって遊ぶのか? 最近、公園では、ベンチに座り、静かに携帯型ゲームを楽しむ子どもたちの姿を目にするようになった。

■ 歓迎されない「子どもの声」

 筆者が特に疑問に思うのは「大声」に関する注意だ。子どもの声に関して言えば、保育園や幼稚園の周辺住民からの苦情が社会問題になっている。公園でも同じことが起きているのだ。少子化や核家族化、単身世帯の増加で、子どもと接した経験が少ない大人が増え、子どもの歓声や泣き声が聞きなれないものだったり、不快な騒音に近いものになってしまったりしているといわれている。

 こうした声に全く耳を貸さないというのはよくない。しかしその一方で、「大声を出すのは子どもの権利だ」とする考えもある。例えばドイツのベルリンでは子どもの特権として、児童保育施設などから発生する子どもの騒音を周辺の住民が一定程度は容認するよう、州法で保護している。日本でも東京都の環境確保条例が、保育所などから出る子どもの声を規制対象にしていたのを、子どもの健やかな成長・育成にも配慮するため、声はもちろん、足音、遊具音、楽器音などについても規制の対象から除外した。

 公園の遊具についても同様の動きがみられる。ロープ登りや輪くぐりなど1基で複数の遊びが出来、安全にも配慮された「複合遊具」を導入することにより、限られた敷地内で、子ども向け遊具と高齢者向け遊具をバランスよく整備しようとする傾向が出てきている。行政も問題を認識し、変えていこうと歩み始めているのだ。

■ 共存して憩いの場に

 公園とは本来、私たち利用者に安らぎとレクリエーションの両方を提供してくれる場所だ。どちらが欠けても望ましくない。現在の公園が幅広い世代の利用を目指しているならば、子どもと上級生、または大人が交流する拠点にすることはできないだろうか。かつての空き地のように、仲間や年上の人から遊び方を教わり、地域への帰属意識や連帯感を生み出す。交流があれば、大人も公園で見かける子どもたちに気を配るようになるだろう。子どもが危ない目にあいそうな時に、声をかけられる「見守る人」になれるのだ。防犯上の課題などをクリアし、これらを実現できれば、公園は子どもたちが安心して遊べる場所になるだろう。子どもの運動機能の成長には有効なのに、危険というだけで撤去されてしまった遊具を復活させることも出来るかもしれない。

 名作「星の王子さま」の冒頭で「大人は誰も、はじめはこどもだった。しかし、そのことを忘れずにいる大人はいくらもいない」と作者のサンテグジュペリは語りかけている。広場を自由に駆け巡る喜びを味わった大人たちが、子どもからその楽しみを奪ってはいけないのである。

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170706-OYT8T50017.html

https://www.facebook.com/koichiro.yoshida.jp/posts/809411549226383