12/31/2016 11:34:38 PM

私は「制宙権」という言葉を提唱します。宇宙こそ、サイバー戦を含めた現代戦の帰趨を決する主戦場。中国の軍事衛星数は今やロシアを遥かに超え、中国は、米軍のシステムと戦力を無力化し破壊する「キル・チェーン」構築の鍵となる宇宙の軍事拠点化を着実に進めています。

「宇宙の平和利用」という呪文により思考麻痺に陥っている日本。直接的な人間の殺傷ではないこの様な分野こそ、中国の暴走を阻止できる能力を増強すべきだと考えます。

《【野口裕之の軍事情勢】新年に警告する 中国軍が宇宙制空権を奪取し、「真珠湾攻撃」を実行に移すXデーが迫っている》
2017.01.01 産経新聞

 「リメンバー・パールハーバー=真珠湾を忘れるな」

 大日本帝國海軍が大東亜戦争(1941~45年)劈頭、米国のハワイ・真珠湾に在った米海軍太平洋艦隊・基地を攻撃した《布哇海戦》を受け、米国内で唱えられた憎悪をあおるスローガンだが、再び聞く日が到来する気配がある。ただし、矛先は日本ではない。しかも、戦力投射は帝國海軍のように太平洋上の空母機動艦隊ではなく、宇宙より始まる。

 安倍晋三首相は昨年末、バラク・オバマ大統領と共に真珠湾で、日米両国の戦没者を慰霊したが、訪問を前に「新たなリメンバー・パールハーバーが和解を象徴する合言葉になることを信じる」と語った。しかし、米国の安全保障関係者は、「新たなリメンバー・パールハーバー」を、中国向けに発出するXデーに備え始めている。

 小欄は、中国は南シナ海で繰り広げる蛮行を、宇宙空間でも断行する…と確信する。例えば、宇宙空間に勝手に《九段線》なる空想の産物を引き→内側の島々ならぬ星々に上陸して兵器を配置し→制海権・制空権ならぬ宇宙制空権奪取を戦略目標にすえ軍事基地化する。

 南シナ海での九段線捏造では、日本や米国が強く非難したが、「中国は2000年の間支配している」との壮大なウソを、平然と突き通している。宇宙空間に関しても「2000年の間支配している」などと、中国に言わせてはなるまい。宇宙・万物を支配する念願の“天帝”だと認めてしまうからだ。

 もっとも昨秋、有人宇宙船とのドッキングに成功した無人宇宙実験室《天宮》は「天帝の宮殿」を意味しており、「天帝気取り」は早くも始まっていると覚悟したほうがよい。「地球の敵」といえば「凶暴な宇宙人」だと、SF映画のシナリオは決まっていたが、近未来戦で「地球の敵」と化すのは「凶暴な中国人」である可能性が高い。

■ 幽霊艦隊出撃す

 宇宙も巻き込んだ中国との近未来戦が勃発する危険を、今次小欄で採り上げるはこびとなった契機は、米本土に住む友人の米陸軍退役情報将校が送ってくれた電子メールだった。

 メールは《ゴースト・フリート》なる軍事小説を推薦していた。「幽霊艦隊」とでも訳すらしいが、《小説は軍事合理性を欠く展開を描くので興味がない》と返事をした。

 対する友人の返信には、引き込まれた。2人の著者は軍事研究家で、米国防総省の《次世代テクノロジー計画》のコーディネーターや米国の連邦議会&情報コミュニティーへのアドバイザーなどを務めている、という。従って、現役の米陸海空軍将校はもちろん、軍事衛星や大気圏外に出る弾道ミサイルに関連する作戦を担任する米戦略軍の高級幹部まで読んでいるとか。ただ、友人を含め、米軍関係者は小説を楽しんだのではなく、むしろ危機感を深めたのだった。

 問題の小説は、日本でも《中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す(上・下)=二見文庫》として出版されていた。《中国軍を駆逐せよ!》では、安倍首相が訪問した真珠湾も、再び戦場となっていた。小説で展開される戦況の推移を、小欄なりにまとめてみた。

 《中国共産党がクーデターで倒され、軍と巨大企業の独裁体制が人民を支配する近未来。太平洋を東進する中国は、マリアナ海溝で大規模ガス田を発見する。権益を独占すべく、中国は太平洋において大きな影響力を有する米国の排除を決断、ロシアとも内密で同盟を締結する》

 《緒戦で、宇宙ステーションが照射する高出力レーザーは米軍の軍事用衛星をことごとく破壊する。米軍は偵察衛星やGPS衛星を無力化され、『宇宙制空権』を奪われる。コンピューターへの不正侵入や、兵器に内蔵されていた中国製マイクロチップ内のウイルスも冬眠から目覚め、兵器システムを食い荒らしていく。高度にIT化・人工知能(AI)化された米軍のネットワークはズタズタにされ、最先端兵器は使用不能状態に陥る》

 《かくして、ロシア軍と協力しながら沖縄県・嘉手納基地やパナマ運河を粉砕し、ハワイ・オアフ島を奇襲攻撃し、米太平洋艦隊を壊滅させ、ハワイ諸島を占領する。発見が難しいはずのミサイル原子力潜水艦を、原子炉特有の性質を解析し、探し出し葬ってゆく》

 《太平洋方面での戦闘力をほとんど喪失した米国は、サイバー攻撃の影響を受けにくい『賞味期限』が切れた退役艦艇を『ゴースト・フリート=幽霊艦隊』として現役復帰させ、圧倒的に優勢な中国軍と戦うために出撃させる》

 以上、ここで止めておく。戦争の帰趨は、読者のお楽しみに取っておくが、小説の背後に、中国軍の《キル・チェーン》が、米軍のそれを上回った戦略環境を垣間見た。

 そうでなければ、世界最強だったはずの米軍の、空母打撃群を構成する艦上機+随伴戦闘艦/原潜/ミサイル基地/宇宙や地上の情報収集拠点/軍用飛行場…など、多種多様な兵器・施設を、とりわけ沖縄~マリアナ海溝~ハワイ~パナマ運河までの広大な海域でたたきつぶす作戦は成功しない。

 作戦を成功させるには(1)リアルタイムで標的を探知&識別&追尾→(2)各種プラットホームの投射→(3)兵器の発射→(4)発射兵器の管制・誘導→(5)標的のダメージ評価→(6)再攻撃などを、多方面で瞬時に実行しなければならない。加えて、超ステルス性能でレーダーから身を隠す近未来の米軍を、自らは見つからぬように攻撃する大前提をクリアしなければならない。

 指揮+統制+通信+コンピューター+情報+監視+偵察が連動する《C4ISR》能力が作戦成功のカギとなる。宇宙に配備された各種の軍事衛星が陸海空軍の地上施設や各種兵器と連携して創り出される「C4ISR力」を担保するには、今以上に宇宙制空権獲得が不可欠と成る。逆説的には、敵のC4ISR能力を壊す先制攻撃で、宇宙制空権を獲得をしなければならない。

 ところが、宇宙制空権獲得へ注ぎ込んだ中国の情念と物理的エネルギーは小説を跳び出し、現実の世界でも次第に米国との差を縮め始めた。

■ 恐るべき極超音速滑空飛翔体

 戦時、敵国製GPSは遮断されるので、自国開発のGPSは不可欠となる。中国軍は現時点では、軍事作戦に米国のGPS+自国のGPS衛星《北斗》+ロシアの衛星を組み合わせ運用しているが、現在の約20基を5年以内に35基態勢にし、地球全体をカバーする計画だ。カバーできれば、弾道ミサイルや次世代兵器《極超音速滑空飛翔体》を高い精度で誘導できる。

 極超音速滑空飛翔体は恐ろしい兵器だ。米軍は2014年、中国上空をマッハ10に達する高速で飛行する飛翔体を探知した。飛翔体が進化を続ければ、弾道ミサイルで打ち上げられ→宇宙空間で切り離され→大気圏に再突入→放物線を描いて落下せず、超音速で自由に運動しながら滑空してなお、極めて正確な命中精度を持つことになる。米国が現有するミサイル防衛(MD)網では撃墜が不可能だ。

 中国による14年の実験成功後、米連邦議会の諮問機関《米中経済安全保障調査委員会》は、中国が20年までの開発を目指していると分析した。実戦段階に入ると、地球上の戦略バランスに激震が走る。

 GPS以外に、高精度画像偵察/早期警戒(後述)/電波情報収集/暗号通信など、他用途も含めた衛星全体の基数も激増している。2000年にはわずか10基であったが、今や180基を突破し、ロシアの約140基を軽く超えた。

 米国の約580基には及ばぬが、中国軍は宇宙依存度の高い米軍の先進的体質を弱点だととらえた。従って《衛星攻撃兵器=ASAT》の開発に邁進する。地上発射ミサイルで自国の気象衛星を破壊した2007年の実験が有名だが、小欄は、衛星を破壊せず無力化した2014年の実験が、より気になる。

 昨年2月、米国家情報長官が連邦議会に提出した《世界脅威評価》は、衛星への《電波妨害=ジャミング》の可能性を示唆する。米国防総省も2015年、《中国の軍事及び安全保障の進展に関する年次報告書》で、《中国軍は危機・紛争時、敵の宇宙資産の使用を制限・妨害すべくレーザー光線など『指向性エネルギー兵器』や『衛星攻撃衛星=キラー衛星』など、あらゆる能力を開発中》だと警告した。敵の人工衛星をロボット・アームでつかみ、軌道外に追い出す「豪腕衛星」も姿を現わすだろう。

■ 中国宇宙軍が宇宙覇権を達成する

 では、中国軍内において、いかなる軍種が「宇宙戦争」を担任するのだろうか? 昨年、中国軍の大改編で誕生した《戦略支援部隊》だとする見方が少なからずあるが、小欄は否定的だ。戦略支援部隊は従来、軍中央内の各セクションに振り分けられていた通信傍受/衛星写真解析/衛星通信・インターネット網管理…といった任務を一堂集め、情報戦・電子戦の戦略レベルでの支援を果たすのではないか。

 というわけで、小欄は次の大改編で、空軍と合併し《宇宙航空軍》が創設される方向だと考える。あるいは、《ロシア航空宇宙軍》が再編(2015年)される前の《航空宇宙防衛軍》を手本に、空軍とは独立した軍種となる観測もある。ロシア軍方式にならい、ミサイル防衛(MD)を含めるかは未知数だ。

 いずれにしても、「中国宇宙軍」の司令官は、衛星攻撃兵器の運用に携わった将軍か就きそうだ。

 ところで、小説の時代背景が2025~26年だった点は実にリアルだった。宇宙には現在、日本や米国、ロシアなど15カ国が共同で維持・運営する国際宇宙ステーション(ISS)が存在するが、2024年以降の運用計画が定まらず、終了するかもしれない。

 中国は、安全保障上の懸念を理由に、米連邦議会の反対でISS計画より排除された。が、独自の宇宙開発を進め、ロケット技術は「国産化」が実現され、衛星についても部品の一部を輸入に頼るだけ。当然、中国独自の宇宙ステーションを2022年頃までに運用する計画を打ち出した。

 2024年以降、中国のみが宇宙基地を保有する事態となれば、中国にとり「宇宙覇権」への第一歩となろう。現に昨年、有人宇宙船《神舟11号》と無人宇宙実験室《天宮2号》のドッキングに成功した。天宮2号こそ宇宙ステーションの原型だ。2015年の《米中経済安全保障調査委員会》の年次報告書は、中国は投資・研究開発・米国技術の導入などで宇宙大国の一つと成り、将来的には米国の宇宙空間における情報優位を脅かす-と強調した。

■ 米国もレーザー兵器搭載の宇宙無人機や宇宙爆雷で対抗

 米国も座視してはいない。米国防総省は宇宙関連予算の増額を要求。敵の電波妨害に強い《超高周波通信衛星》など宇宙システムの抗たん性強化や、レーザー兵器+宇宙無人機を活用した迎撃態勢の構築などに一層の目配りをしてはいる。「宇宙爆雷」を提唱した米国防総省高官もいる。

 けれども、お札を刷りまくり、国民生活を犠牲にしても、絶え間なく兵器製造に突き進む独裁国家とは違い、民主国家には制約が課せられる。

 米国の早期警戒衛星の扱いは象徴的であった。敵性弾道ミサイルの発射炎を赤外線センサーで察知する早期警戒衛星は、ミサイル防衛網の一角を占め、弾道ミサイルを識別→追尾し、迎撃情報を提供する。しかし、後継=新型衛星の開発費は当初の3倍に膨れ上がり、最終的な基数は不透明だ。《国防授権法》に追加された《ナン・マッカーディー条項》が「待った」をかけたのだ。

 ナン・マッカーディー条項は、開発中の兵器が計画した量産コストを15%以上、上ブレすると連邦議会に報告され、議会承認する必要を規定する。25%超に達すると、計画撤回を議会が求める旨を定める。ズサンな計画を戒め、国民の税金を有効活用する法制は必要だ。だが、安全保障の場合、国際情勢が優先される。

 オバマ民主党政権も2013年、財政再建に伴い国防費の強制削減措置を開始したが、「アジア回帰」の提唱とは逆行する、中国や北朝鮮、ロシアの軍事膨張など、緊迫が続く東アジア情勢を無視した大愚策だ。ナン・マッカーディー条項は2人の民主党連邦議会議員が上程したが、内一人はオバマ大統領のアドバイザーなのもうなずける。

 小説《中国軍を駆逐せよ! 》にも「主役級」で登場する《ズムウォルト級ミサイル駆逐艦》もナン・マッカーディー条項の対象となった。32隻もの大量建造計画でスタートしたが、24隻→8隻→3隻と、次々に計画は縮小された。

 昨秋就役したばかりのズムウォルト級ミサイル駆逐艦は、超ステルス化など最新の船体構造や傑出した対地攻撃力を誇るが、小説の時代設定では「古艦」扱い。とはいえ、現役復帰させた前世代の艦艇で編成された幽霊艦隊の中核を担う。激減を強いられたズムウォルト級が国家危機を救う一助となるのは、何とも皮肉だ。

 ズムウォルト級建造計画の縮小原因は多岐にわたる。ミサイル防衛システム+攻撃システム+機関制御システムなどの連接を図ろうとして、ソフトが迷路のような複雑・広範に成り過ぎ開発に失敗。搭載兵器もあおりを受けて激減し、艦隊防空力や対潜能力は犠牲にされた。超大出力レーダーを装備しようとしたら、電力を手当できなかった。つまり、できる限りの先端技術を詰め込み過ぎて、コスト増となり、結果的に戦力を削ぎ落とさざるを得なかったのだ。

 興味深いのは、小説上のズムウォルト級が備える、爆弾を電磁誘導で加速して撃ち出す兵器《レールガン》が戦争の切り札の一つとなる展開。小説では、ズムウォルト級の電気供給システムには大きな不安があったが、現代の米軍も、レールガンなど指向性エネルギー兵器の節電に頭を悩ましており、解決できれば「来るべき中国との宇宙戦争」で巨大な役割を果たす。

 中国軍は、米軍の弱点をIT化やAI化とみて、衛星破壊やサイバー攻撃などの戦力を著しく強化している。「来るべき中国との宇宙戦争」に突入するころ、中国軍は現在の米軍以上に、IT化やAI化を遂げていよう。自らも弱点を抱えたとも知らずに…

写真:有人宇宙船「神舟11号」を搭載し、打ち上げられる「長征2号F」ロケット=2016年10月17日、中国・酒泉衛星発射センター(新華社=共同)

http://www.sankei.com/premium/news/170101/prm1701010014-n1.html

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