02/05/2016 12:20:33 AM

移民の大量流入が続くドイツ。年間最大100万人の移民を2年間にわたって受け入れた場合、財政負担は250億ユーロ(約3兆2千億円)にのぼる可能性がある、との事。財政負担増以外の社会コストはどれだけになるのでしょうか。

《IS台頭、移民流入…莫大な財政負担にEU亀裂!? キレイごとではすまない各国の台所事情》
2016.02.05 産経新聞

 移民流入による財政負担をどう賄うのか-。過激組織「イスラム国」(IS)の台頭による中東情勢の緊張が続く限り、欧州各国はこの難題から逃れられない。英国は、移民の社会保障給付の制限をEU改革案として提示。デンマーク議会は入国する移民から金品を接収することを決めた。景気がよく、余裕資金で対策費の多くをカバーできているドイツでさえ、2年で250億ユーロ(3兆2千億円)規模にのぼるといわれる予算を捻出するのは容易ではない。移民受け入れのための特別税や債券発行などのアイデアも出ているが、痛みを伴う手法だけに、実現は難航が予想される。

■ 移民問題、EU結束に綻びも

 スイス東部ダボスで1月20日から4日間の日程で開かれた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)を前に発表された今年のグローバルリスクリポート。そこで異常気象や気候変動問題を抑えて重大事案のトップに挙がったのが、中東情勢の緊迫化による非自発的大規模移住問題だった。世界中の政財界関係者が集まる「賢人会議」といわれるダボス会議でも、移民は極めて重大な関心時に浮上した。移民は、治安の悪化や過激なナショナリズムの喚起など社会的な摩擦の火種としてクローズアップされるが、受け入れにかかる財政負担はEUの枠組みに、亀裂を入れる時限爆弾になる恐れさえある。

■ 3兆円超える移民コスト

 移民の大量流入が続く、ドイツ。現地メディアは昨年秋、移民による財政負担額が前年度の4倍にあたる100億ユーロ(約1兆2千億円)にのぼる可能性を報じたが、これをさらにに上回るとの試算も出ている。みずほインターナショナル(ロンドン)は、年間最大100万人の移民を2年間にわたって受け入れた場合、財政負担は250億ユーロ(約3兆2千億円)にのぼる可能性があるとのレポートを公表した。

 移民申請者1人ごとに、食費や滞在費、社会保障費などで1万2000~1万3000ユーロ(約154万円~167万円)の費用がかかるほか、移民に対応する職員の増員もコストになる。

 3兆2千億円もの負担は、日本でいえば、安倍晋三政権が目指す「一億総活躍社会」実現に向けた対策費を盛り込んだ平成27年度の補正予算(総額3兆3213億円)が吹き飛ぶくらいの額に匹敵する。消費税1%分(約2兆5千億円)の税収を大きく上回る。

■ 滞在費接収、ガソリン税でカバー?

 この1年間で、地中海を渡り欧州にたどり着いた難民は100万人を超えた。

 劇的な中東情勢の改善が見込めない中、今後も流入が続くのは必至で、予算の手当は、欧州全体が抱える重大な課題だ。

 どんなアイデアがあるのか。

 米ウォールストリートジャーナル(電子版)によると、ダボス会議で同紙のインタビューに応じた欧州委員会のモスコビシ委員(税財政担当)は、「難民債」というアイデアを出した。難民対策の予算を債権発行による借金で賄おうという発想だ。国連のリポートでも、ソーシャルインパクトボンド(社会貢献型債権)と呼ばれる人道支援を掲げた金融商品の発行や小規模な企業取引課税の応用を指摘。ドイツでは、EU全域でガソリンなどの燃料課税に付加する特別税の案が浮上した。

 具体的な対策も出始めている。

 昨年、2万人の難民が入ったデンマーク。同国の議会は1月26日、難民認定申請者に滞在費を一部負担させるとし、所持している現金や貴重品を当局が徴収できるようにする議案を賛成多数で可決した。ロイター通信などよると、現金や腕時計などで1万デンマーククローネ(約17万円)超の価値の金品を持つ人が対象。警官が荷物を調べ、結婚指輪などの特別な品は除き、超過分を徴収するという。

 同様の対応はスイスやドイツの一部でも既に導入されている。

 ただ難民に厳しい態度を示して流入を抑制するのが狙いともいわれ、差別的な対応だとの批判の声があがっている。

■ EU首脳会議、移民流入制限をどう采配

 移民対策で、大きな節目になるのが2月18、19日に開かれるEU首脳会議だ。

 英国が提示したEU域内からの移民流入の制限策を含むEU改革案をめぐる議論が行われるからだ。

 大和総研のロンドンリサーチセンターの菅野秦夫シニアエコノミストによると、英国は4年間の納税がなければ、就労福祉手当(失業手当に相当)給付を認めないとする案を強く主張している。しかし、これは移民と英国国民との差別にあたるとし、東欧諸国などから反対があり、溝は深い。

 英国では、年内にEU離脱の是非を問う国民投票が行われる見通し。キャメロン英首相は、離脱派の多くがこだわる移民制限でEUから譲歩を引き出した上で投票に踏み切り、「EU残留」を決めたい考えだ。

 もし、英国の要求が通らない事態となれば、EU離脱が現実味を帯びる。

 移民問題の重みに、EUの結束が試されている。

http://www.sankei.com/west/news/160205/wst1602050003-n1.html

https://www.facebook.com/koichiro.yoshida.jp/posts/544287209072153