《【渋谷区同性パートナー条約】「何を証明するのか」不動産業者など戸惑いの声》
2015.04.01 産経新聞
同性カップルに対して「結婚に相当する関係」を認めるパートナーシップ証明書が発行できるよう盛り込まれた渋谷区の条例。31日に成立した全国初となる条例に対し、区民からは賛否の声が入り交じる一方、病院や不動産業者など区内の事業者の間には「証明書が何を証明するものなのかが分からない」といった戸惑いの声が広がった。
■ いつの間にか…
「(同性婚は)世界では認められてきていて、日本だけが遅れていると思っていた。条例は世界の流れを受け入れるためにはいいのでは」と区役所を訪れた70代の女性は評価した。
犬の散歩をしていた50代の女性会社役員は「憲法違反という意見もあるけど、証明書が必要な人のもとに届けば意義があるものになると思う」。男性会社員(23)は「好きな人同士が一緒にいることは悪いことではないと思う。同性婚を認めるきっかけになればいい」と話した。
一方、区役所近くに住む男性は「この条例は急に出てきた話で、いつの間にか成立してしまった。今後も、区民に十分な説明がない状態で、さまざまな制度が決まっていくと考えると怖い」。また、70代の自営業の男性は「法整備もされていない中で、同性婚を認めるような内容は、自治体単位で話し合うようなものではない」と批判した。
■ 逆効果の指摘も
渋谷区は条例について「同性カップルがアパートの入居や病院での面会を家族ではないとして断られるケースが多いことから、性的少数者への支援策として作成した」と説明する。
だが、区内のある不動産会社は、これまでも同性同士でルームシェアをする入居者を「友達同士」として家主に報告し、受け入れてきたと述べ、「証明書を持って『カップルです』と宣言されれば、それを家主さんに報告しなければならない。そうすると、お年寄りが多い家主さんは腰が引けてしまい、逆に部屋を借りずらくなる可能性があるのでは」と困惑する。
別の不動産会社は「同性だろうが、異性だろうが、トラブルがなくて身分がしっかりしていれば、通常は入居できる。区が出す証明書が何を証明するものなのかが分からず、持ってこられても困ってしまう」と疑問を呈した。
また、区内の医療機関では「全国で初めての条例で、病院としてまだ組織的な話ができていない。法的拘束力はないというが、条例の中身を吟味して、協議していきたい」と話した。
◇
パートナーシップ証明 渋谷区議会で3月31日に可決・成立した男女平等や多様性を尊重する条例に盛り込まれた制度。性的少数者への支援策で、区内在住の20歳以上の同性カップルが対象。証明書を取得すると、事実上の「夫婦」として区営住宅へ申し込みができる。また、事業者側の判断によるが、事実上の「夫婦」として民間の賃貸住宅への入居や、会社での家族手当の支給なども可能になるとしている。
http://www.sankei.com/politics/news/150401/plt1504010005-n1.html