2015/03/06 14:39

《自動運転車、米で交通事故90%削減も=マッキンゼー》
2015.03.06 WSJ MIKE RAMSEY

 自動運転車が広く普及すれば、米国では自動車事故全体の90%を削減できるかもしれず、年間で最大1900億ドル(約22兆8000億円)もの損害や医療コストを節減でき、何千人もの命を救える可能性がある。コンサルタント会社マッキンゼーが新たなリポートで明らかにした。

 この調査は業界関係者数十人とのインタビューした後まとめたもので、自動運転車の大量導入が始まるのが約15年後(2030年前後)、初期導入は20年代初頭と予測している。

 自動運転車ないし半自動運転車は、独ダイムラー子会社のメルセデス・ベンツなど自動車会社や米グーグル、ウーバー・テクノロジーズなど情報技術(IT)企業の大きな関心分野になっている。

 自動車情報サイト、WardsAuto.comによると、米国で製造される乗用車向けに装備された最も精緻な作動安全装置は、緩やかながらも増加している。2014モデル年度には、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC=先行車との車間距離をレーダーなどで測定し、自動的に速度調節して追随する機能)を持つ新車は全体の1.4%で、前年度の1.1%を上回った。車線逸脱防止技術を搭載しているのは全体の8.4%で、前年度の3.4%を上回った。またブラインドスポットアラート(死角注意喚起装置)を装備しているのは10.1%で、前年度の6.3%から拡大した。

 米保険業界団体の道路安全保険協会(IIHS)の推定では、自動ブレーキシステムを搭載した乗用車の保険金請求件数は14%減少しており、衝突事故が発生した場合でも、損害ははるかに小さいという。こうした技術をもっと広範に採用すれば、安全性がさらに向上すると広く考えられている。だが、完全に自動化された車両が30年までに道路を支配し始めるだろうとのマッキンゼーの見方は、確実ではない。

 例えば2000年、多くの自動車企業幹部や調査会社は、水素燃料電池で動く車両が20年までに普及形態として普及すると予測した。しかし一部の自動車会社はこの技術から撤退した。最近では、電気自動車が将来有望と持ち上げられたが、ガソリン価格の低下と技術の高コストでその導入ペースが鈍化している。

 電気自動車メーカー、テレサ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)など数人の自動車企業首脳は、完全に自動化された乗用車が5年後には準備されるだろうと予測している。米ゼネラル・モーターズと仏ルノーは自動運転車で協力しており、ソフトウエアで車両の制御を高める機能を導入しようとしている。

 今年1月、アウディA7セダンがサンフランシスコ近郊からラスベガスまで自動走行した。これまで実施された自動運転走行としては最長距離だった。しかし、米国その他諸国の市場で何百万マイルもの公道を完全に自動走行する場合の障害は大きい。

 ミシガン大学で自動運転車技術を研究しているライアン・ユースティス教授(ロボット工学)は、自動運転車の「アイデアは、解決した問題に比べてやや高めに評価されている」と述べた。同教授の実験室ではビデオゲーム技術を使って、車両誘導に必要な装置コストの低減を目指している。ミシガン大学は自動運転の研究でトップクラスの大学だ。

 ユースティス教授はこの技術の提唱者だが、自動運転車両はダイナミックな運転環境ないし悪天候でも正確に走行できるだけの信頼性がないと述べた。主要ルート以外の走行、あるいは地図が古い地域の走行も同様だという。

 マッキンゼーの調査は、自動運転車が完全に導入されれば人々は1日当たり50分間を他のことに振り向けられる可能性があると予測した。同調査はまた、保険会社は時がたつにつれて技術的な欠陥に関心をシフトするようになり、ドライバーのリスクプロファイルから離れるだろうと予測している。

http://jp.wsj.com/articles/SB11167655035836774773204580501060840882950