2015/02/11 12:40

真宗大谷派が「慰安婦性奴隷」など反日偏向展を実施。

《真宗大谷派の人権ギャラリー展に漂う日本〝断罪〟史観 日朝・日韓関係テーマで日本の加害性のみ強調、なぜか拉致問題は無視》
2015.01.30 産経新聞

 京都を代表する寺院の一つ、真宗大谷派の本山・東本願寺(京都市下京区)で開催されている「人権週間ギャラリー展」をめぐり、有識者から「日本の加害性のみが強調され、偏っている」との指摘が上がっている。豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の展示で民衆を日本に「拉致連行」したことを取り上げ、慰安婦問題のパネルには「性奴隷」の文言も登場する。しかし、人権週間にちなみながら、現在の日本にとって最も重要な人権問題といえる北朝鮮による拉致問題には一切触れていないのだ。主催者は「大谷派と関係あるものを中心に取り上げた。スペースもかなり絞ってこうなった」と説明するが…。(大竹直樹)

■ 320万人の大教団…門徒も疑問視…「日本ばかりが悪者に」

 JR京都駅の中央口から歩いて10分。瓦ぶきの屋根の付いた土塀が見えてきた。東本願寺の境内を囲っている「築地(ついじ)塀」だ。京都三大門の一つ、御影(ごえい)堂門の近くに掲げられたポスターに目がとまった。

 《原子力発電に依存しない社会の実現にむけて》

 真宗大谷派は平成24年2月、65人の僧侶で構成する宗議会を開いて全原発の運転停止と廃炉を求める決議案を可決している。

 真宗大谷派の門徒数は約320万人。大阪府内に住む門徒の60代男性は「最近、特に政治色が強くなってきた。いろんな考えの門徒がいるのに、仏教教団が政治的なメッセージを発することに違和感を覚える」と疑問視する。

 この門徒が「日本ばかりが悪者になっている」と嘆くのが、境内で2月2日まで開かれている「人権週間ギャラリー展 誠信交隣を願って-日朝・日韓関係の歴史と現在」だ。

■ 民衆を日本に「拉致連行」

 ギャラリー展は「古代・中世の日朝・日韓関係と豊臣秀吉の侵略戦争」から始まる。

 中世になると、《日本からは「日本国王使」とよばれた使節がたびたび朝鮮王朝の首都漢城(いまのソウル)を訪問し、仏典の集大成である「大蔵経」を始めとする仏教経典や仏具、仏画、そして高級繊維製品などをもらってかえる》ようになったとパンフレットにある。

 事実の一面には違いないが、日本が一方的に教えをこう上下関係だったような印象を受ける。記述は豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の頃になると一変する。パンフレットの文言にはこうある。

 《豊後臼杵の安養寺の僧・慶念(きょうねん)も動員されて朝鮮半島にわたった一人でした。かれはその間のことを『朝鮮日々記(にっぴき)』として記録していました。この書は戦場の悲惨な光景、無辜の民衆を日本に拉致連行する日本の商人たちや財宝を奪い尽くす武士たちの姿をありありとのべています》

 《この戦争の中でも残酷をきわめたものは「鼻削ぎ」でした。この行為は日本軍に反抗する朝鮮の兵士や民衆に対する刑罰として行われました》

 門徒の男性は「日本だけが一方的に朝鮮の人々をかどわかしたような書き方だ」と訴える。

 主催者側の真宗大谷派解放運動推進本部の本部委員は「私たちの国が一体どういうことをしてきたか。どのように自己批判をする中で次の交流につなげていくか。お互いに『あんたんところ、こんなことしているではないか』というばかりではならない」と話す。

 麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は、朝鮮出兵の拉致連行をめぐる記述について「有田焼の生みの親で知られる朝鮮出身の李参平ら陶工は『連れて行ってくれ』と言って付いてきた。李朝は朝鮮の人々にとっても異民族で、李朝の支配が過酷だということで民衆には不満も相当あった。同じ民族であろうが、他の民族であろうが、穏やかな統治をしてくれる支配者を望む人もいた」と指摘する。

 そのうえで「(記述は)ひたすら朝鮮半島は日本にとって学ぶ対象で、その都度、日本は悪いことをしてきたという内容といえる。一方的な日本側の加害者史観だ」と批判する。

■ パネルに「性奴隷」の文言

 《女性たちには、居住の自由、外出の自由、自由廃業の自由、拒否する自由が認められておらず、実態として「性奴隷」の状態でした》

 《民間業者の「慰安所」であっても、戦場への「慰安婦」の輸送、女性たちの性病検査などの管理には日本軍が直接的に関わっていました》

 《第2次世界大戦以前、同様の施設の設置と管理に軍隊が関与したのはナチス政権下のドイツを除き他に例がありません》

 慰安婦問題を取り上げたパネルにはこんな文言が並ぶ。「性奴隷」という表現は、1996年2月の「国連クマラスワミ報告書」で認定されて以降、頻繁に使われ、米国で設置された慰安婦碑や慰安婦像にも登場する。しかし、日本軍が何十万人もの女性を強制連行したという虚偽の話がきっかけとなっており、今は日本政府も「不適切な表現」との見解を示している。

 八木教授は「『関与』というあいまいな表現を使いながら、軍が直接関わったようなニュアンスだ。しかし、間接的な関与ということで責任を取られるのであれば、役所の出入り業者が問題を起こしたときも役所自体が責任を取られるのか」と疑問を呈する。

 主催者側の本部委員に疑問をぶつけると、「仮に東本願寺に出入りする業者がセクハラを起こせば、私たちのハラスメント防止委員会で審議する」と強調し、「軍の内規を読むと、割と積極的に関与していたかなと思う」と続けた。

■ 高校無償化対象外を猛批判

 《高等学校無償化を朝鮮高級学校に適用しない措置は、排外主義を増幅させ、閉塞した社会をつくることにつながりかねません》

 ギャラリー展のパンフレット巻末には真宗大谷派の宗務総長(当時)が22年3月に発表したコメントが掲載されている。

 宗務総長(同)はコメントの中で《私たちは在日朝鮮人の歴史と、現在もかかえる問題を軽視してはなりません》とも強調する。

 ただ、朝鮮学校が高校授業料無償化の対象外となった背景には、北朝鮮による拉致問題が大きく影響していることも忘れてはならない。

 無償化を適用しない方針を表明した下村博文文部科学相(当時)は24年12月、「拉致問題に進展がなく、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)と密接な関係にあることなどから現時点では国民の理解が得られない」と述べた。一般公募の約3万件の意見でも、無償化対象にしない方針への賛成が反対を上回っている。

 主催者側の本部委員に、日本が現在抱える最大の人権問題は拉致問題であり、無償化の対象外となった背景にはそうした事情もある-と伝えた。しかし、本部委員は「それは分からない。拉致問題の報復としてこれ(無償化対象外)があるということか」と話した。

 ギャラリー展ではやはり拉致問題については一切触れられていない。

■ 拉致被害者苦悩の〝声〟には…

 展示内容は、京都造形芸術大客員教授、京大人文科学研究所教授、多民族共生人権教育センター事務局次長の3人が監修している。

 本部委員は人権ギャラリー展について「どの時代においても大谷派との交流の中で、監修した方も交流の中で取り上げている」と説明する。戦場に派遣された「従軍僧」や朝鮮半島での別院開設といった「朝鮮開教」など「大谷派が戦争中に起こした歴史」(本部委員)があり、展示は「大谷派と関係あるものを中心に取り上げた」という。

 多くの門徒の中にも、拉致被害者と関係のある人はいるはずだ。にもかかわらず、なぜ、拉致問題には一切触れられていないのか。

 本部委員は「大谷派の中にもいるかもしれないが、交流はできていない」と釈明する。申し入れもないため、門徒に関係者がいるか調査の予定もないという。そしてこうも言う。

 「(展示)スペースもかなり絞ってこうなった」「拉致被害者に関するものも取り上げるという余裕がなかったということだ」

 会場には、ヘイトスピーチ(憎悪表現)や朝鮮学校の高校無償化対象外について、複数枚のパネルが展示されていた。拉致問題に割くスペースの「余裕」がないとは思えなかった。

 特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は「宗教という本来の目的から考えると、一方に偏ったやり方はどう考えてもおかしい。日朝の問題についての展示なら、拉致をされた人たちの苦しみを救済するのは宗教者として当然ではないか。少なくともパネルを出さないのはいかがなものか」と話す。

 八木教授も「拉致こそ人権問題の最たるもの。展示はバランスを欠いている」と指摘する。

 ギャラリー展には、収骨や参拝に来た門徒のほか、京都観光の韓国人やイスラム教徒の団体もガイドを伴って見学に訪れるという。東本願寺を訪れた外国人観光客らに、世界に誇る精神的遺産といえる浄土真宗の宗祖、親鸞(1173~1262年)の教え、思想が広がるのは喜ばしい。

 ただ、ギャラリー展では、平穏な生活を突然奪われ、日本から拉致された人々の苦悩の〝声〟にも、耳を傾けてほしかった。

http://www.sankei.com/west/news/150130/wst1501300004-n1.html