《新ODA「国益確保」明記、非軍事支援を明文化》
2015.02.10 読売新聞
政府は10日午前の閣議で、政府開発援助(ODA)大綱を改定し、新たなODAなどの指針を定めた「開発協力大綱」を決定した。
国際貢献の視点に加えて日本独自の外交政策に沿った戦略的な活用をより重視するとし、「国益の確保」を初めて明記した。ODAを軍事的用途に使うことは引き続き禁じる一方、軍隊の活動でも、災害救助など非軍事分野は支援する方針を明文化した。
ODAに関する大綱の改定は2003年8月以来、11年半ぶり。岸田外相は閣議後の記者会見で、「新大綱の下でより戦略的な開発協力を推進し、国際社会の平和と安定、繁栄により一層貢献していく考えだ」と強調した。
新大綱では、日本の平和と安全の維持や、安定した透明性の高い国際環境の実現といった「国益の確保に貢献する」ことを目指す。
www.yomiuri.co.jp/politics/20150210-OYT1T50064.html
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《開発協力大綱:「国益確保へ」ODA拡大》
2015.02.10 毎日新聞
政府は10日、政府開発援助(ODA)大綱を2003年以来約12年ぶりに改定し、「開発協力大綱」として閣議決定した。ODA予算が減少を続ける中、安倍晋三首相が掲げる「積極的平和主義」を踏まえ、支援の対象を従来より広げたのが特徴。新たな協力を通じて、日本の平和と安全や国際秩序の維持という「国益の確保に貢献する」と初めて明記した。その一環として、非軍事目的に限って他国軍への援助を認めるが、軍事目的への転用をどう防ぐかは課題として残ったままだ。
◇ 他国軍支援、監視に課題
政府のODA予算(一般会計当初ベース)は1997年の1兆1687億円をピークに減少に転じ、2015年度予算案では5422億円とほぼ半減した。ODA大綱から開発協力大綱に名称を変更したのは、これまでの手法にとらわれず、「日本の判断でより主体的に援助する」(外務省国際協力局)ためだ。民間企業や地方自治体と連携した開発協力も進める。
国民所得が一定水準に達した「ODA卒業国」に対し、各国の開発実態や負担能力に応じて協力する方針は、他国軍への援助と並ぶ今回の柱。具体的にはカリブ海のバルバドス、トリニダード・トバゴなどを想定している。将来の国連安全保障理事会常任理事国入りをにらみ、カリブ共同体(カリコム)との関係を強めたい政府の意図が透ける。この地域への関与を強める中国に対抗する狙いもある。
一方、新大綱は「開発協力の軍事的用途や国際紛争助長への使用を回避する」という従来の原則を踏襲したうえで、「相手国の軍や軍籍を有する者」への非軍事目的の開発協力を容認した。海上警察活動への巡視艇供与や、災害救助の際の軍への物資提供などが該当する。
これまでも01年にセネガルの軍病院の改修を支援した例があり、外務省は「考え方はこれまでもあった」と方針転換ではないことを強調している。岸田文雄外相は10日の記者会見で「紛争後の復旧や復興など非軍事目的の活動に軍が重要な役割を果たすようになってきた」と指摘。「(軍事的用途への使用回避の)原則に抵触するためできなかったことが、新大綱でできるようになるのではない」と述べた。
これに関連し、新大綱は、相手国の軍事支出、大量破壊兵器やミサイルの開発・製造、武器の輸出入などの動向に注意することも盛り込んだ。政府は他国軍への支援について、実施前だけでなく実施後も定期的に現場を視察するなど監視を継続する方針だ。ただ、機密性の高い軍に提供した物資や資金の軍事転用を十分チェックできる保証はない。岸田氏は会見で「透明性を高める取り組みが重要だ」と述べたものの、具体策には言及しなかった。【高橋恵子】
http://mainichi.jp/select/news/20150211k0000m010100000c.html