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《パレスチナ承認、欧州動く 2国家共存、イスラエルに圧力》
2014.11.23 産経新聞

■ スウェーデン決定 英・スペインで決議

 【ウィーン=宮下日出男】中東情勢をめぐり、欧州連合(EU)加盟国の間でパレスチナを「国家」として承認する動きが強まっている。EU主要国のスウェーデンが10月末に承認に踏み切ったほか、英国やスペインなどでも政府に承認を求める議会の決議が採択された。いずれの決議も法的拘束力はないが、加盟国は承認の動きをテコに、ユダヤ人入植地問題で強硬姿勢を続けるイスラエルに圧力をかけたい考えだ。

 スペイン下院は今月18日、「パレスチナを国家と認めるよう政府に要請する」との決議を採択した。迅速な承認を求めた野党提出の当初案は修正されたが、与党も支持。結果は賛成319票に対し、反対はわずか2票だった。

 同じ日、エルサレムでは死者4人が出たシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)襲撃事件が発生。イスラエルのネタニヤフ首相は、「こんなときにパレスチナに褒美を与えるのは我慢ならない」と反発した。

 また、英下院とアイルランド上院も10月に同様の決議を採択し、フランスでも近く与党の社会党などが提出した決議案の審議が行われる予定。EUの欧州議会でも決議を目指す動きが伝えられている。

 欧州メディアによると、EU加盟国では過去に東欧などの8カ国がパレスチナを承認しているが、いずれもEU加盟前の承認で、9カ国目となるスウェーデンは主要加盟国としては初承認となる。

 イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を目指すEUは、これまでパレスチナ国家建設のため大規模支援を実施。一昨年にはパレスチナの国連での地位を「オブザーバー国家」に格上げした総会決議で14加盟国が賛成した。

 だが、ネタニヤフ政権はユダヤ人入植地を拡大。加盟国は、2国家共存の構想が頓挫するとの危機感を強め、「国家承認」を圧力にイスラエルに譲歩を迫りたい考えだ。

 ただ、その効果は未知数だ。「一度しか切れないカード」(仏外交筋)である国家承認について、ファビウス仏外相は「(承認は)どうやれば最も効果的かというだけの問題」と前向き姿勢をちらつかせるが、そもそもイスラエルは米国と比べ欧州諸国の影響力を軽視しているともいわれる。

 加盟国も一枚岩ではなく、イスラエル寄りのドイツは「双方の交渉でしか問題は解決できない」と、一方的なパレスチナ承認に否定的だ。専門家からは「いくつかの加盟国の承認だけでは流れを変えることはできない」との見方もある。
http://www.sankei.com/world/news/141123/wor1411230010-n1.html