2014/10/30 20:44

地方議員による政務活動費の不適切な支出が相次いだ結果、最高裁が1万円以下の少額の支出まで領収書を開示するよう命じる決定。

《政務活動費 1万円以下の支出の開示命じる》
2014.10.29 NHK

地方議員に支給される政務活動費について、最高裁判所は、条例の定めがなくても1万円以下の少額の支出まで領収書を開示するよう命じる決定を出しました。
各地で政務活動費の不適切な支出が相次ぐなか、最高裁が政治とカネの問題を巡り、より高いレベルで透明性の確保を求めた形です。

問題となっていたのは、平成22年度に岡山県議会議員に支給された月額35万円の「政務調査費」(現在の「政務活動費」)です。
県の条例では1万円を超える支出について領収書の提出や開示が定められていますが、市民団体が1万円以下の支出についても領収書を開示するよう裁判所に申し立てていました。
これに対し、議員側は「開示されれば政務調査活動の協力者などが明らかになり、見過ごせない不利益が生じる」と反対していました。
この申し立てについて、最高裁判所第2小法廷の鬼丸かおる裁判長は29日、「条例が1万円を超える支出の開示を義務づけているのは、議員の調査研究活動の自由をある程度犠牲にしても使いみちの透明性の確保を優先したからで、それより少ない額の支出を公にしても活動の自由を妨げるおそれは小さい。1万円以下で義務づけがないのは事務的な負担に配慮したにすぎず、開示しなくてよいと認めているわけではない」という決定を出し、議員側に領収書を提出して内容を明らかにするよう命じました。
各地で地方議員による政務活動費の不適切な支出が相次ぐなか、最高裁の決定は、政治とカネの問題についてより高いレベルでの透明性の確保を求めるものとなりました。

■ 領収書の公開進むも

政務活動費、当時の政務調査費を巡っては、使いみちを示す領収書の公開が各地の自治体の議会で進んでいますが、依然として公開していない議会もあります。
全国市民オンブズマン連絡会議によりますと、都道府県、政令市、それに中核市の合わせて110の議会では、このところ領収書の公開が進んでいて、多くの議会で領収書をすべて公開しています。
ただ、24の議会では、領収書の閲覧のために情報公開請求の手続きが必要となっているほか、岡山県議会では、現在も1万円以下の領収書の提出を議員に義務づけていないということです。
一方、市町村の議会については、早稲田大学マニフェスト研究所が去年、アンケートを行った結果によりますと、政務活動費を交付している850の地方議会のうち、26の議会が領収書を公開していないと回答したということです。
全国市民オンブズマン連絡会議の事務局長の新海聡弁護士は「全国的に領収書の公開は進んでいるが、最高裁判所が公開に消極的だった岡山県の姿勢を批判したことで、領収書を公開していない一部の議会に公開を促すとともに、領収書を公開している議会についても、さらなる情報公開を促すきっかけになるのではないか」と話しています。

■ 「最低ラインが示された」

今回の最高裁の決定について、情報公開制度に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は「政務活動費については1円以上の支出すべての使いみちに透明性を持たせなければならないという最低ラインが、最高裁によって示されたといえる。多くの市民からチェックされるという緊張感の下に適切な支出がなされることが期待される」と評価しました。
そのうえで、三木理事長は「これまで情報公開に消極的だった自治体の議会も、司法の場に出たら公開しなければいけないことがはっきりしたので、今後はみずからの判断で情報公開を進めていくべきだし、市民の側もそうした取り組みを促していく必要がある」と指摘しました。

■ 「次の議会で条例案を」

最高裁の決定について、1万円以下の領収書の提出に岡山県議会で反対していた自民党岡山県連の天野学幹事長は「7月以降、政務活動費の使い方を巡って問題が出ていたので、こういう判断は予想していた。オンブズマンの考え方がすべて通るのでは政務活動費は使い勝手が悪いものになるが、1万円以下の領収書の提出は妥当とも思うので、次の議会で提出を義務づける条例案を出したい」と語りました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141029/k10015798421000.html