少子化は我が国の最大の問題です。出生率を2に回復させ人口減少を食い止める事が必要であり、それは欧州並みの育児支援により実現可能です。
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出生率が2.01のフランス、1.92の英国、1.91のスウェーデン(2012年)と比べ、我が国の子供家庭分野への政府支出は極めて低い。
現在のGDP比率1.2%をこれら欧州先進国並みの3~4%に増大し、出産・育児世帯への現金給付、現物給付、労働環境整備を大幅に拡充する必要がある。
我が国において、子供一人を0歳から20歳まで育てるのにかかる費用は1,500万から2,000万円と推計されている。
夫婦の平均希望子供数は2人を超えているのに、実際の子供数が少ないのは、家計の基盤に不安がある若い夫婦にとって、育児の経済的負担が子供数の制約となっている事が意識調査で明らかになっている。
出生率が2を超えるフランスの場合、出産育児への公共の支援は極めて手厚い。家族手当をはじめとする30種類以上の各種家族給付制度が整備され、子供数が増えるほど手当は手厚くなる。子供の医療費、保育学校(保育園・幼稚園に相当)から大学までの教育費も公立であれば原則無料であり、シングルマザーでも負担感なく子供5人を大学に出せる。
我が国において、家庭内労働(家事)の労働価値が経済的に適正に評価されていないことの是正も必要である。
国民の出産及び育児は、就労と同じく我が国社会の維持存続に不可欠な社会参画活動であり労働であるとの基本的認識を明確にし、国民が出産・育児のために休業する期間・時間の所得を国として保障する制度を整備する必要がある。
このような欧州水準への子供家庭分野への政府支出の増大、出産育児教育支援に要する財源を疑問視する向きもあろう。
ここで、出生率向上に伴う財政への費用対効果を考えると、日本人が一人増えると、平均生涯賃金を2億円とし(注1)、国民負担率を5割と仮定する(平成26年は41.6%)と、平均して生涯に2億円を稼ぎ、税金並びに社会保険料を1億円を納税・納入する者が一人増える事になる。
この為に必要な出産・育児・教育に掛かる家庭の費用1500~2000万円を全て国費で負担したとしても、国にとって支出と収入の比率は約5倍となる。
これを国にとって、「次の世代」という後代に残る財産を形成する為の投資だと考えれば、財源の調達に関して、インフラ整備の財源を調達する際に建設国債を発行する事と同様に考える事ができる。
即ち、税収が不足し、財政規律が求められる状況にあっても、出産・育児・教育支援に掛かる支出については、国債の発行により財源を調達する事が、長期的に見て財政を悪化させる事にはならない、むしろ財政再建に繋がる施策であると解することができると考える。
注1:転職した場合、生涯賃金は、大卒男子2.5億円、大卒女子2億円、高卒男子2億円、高卒女子1.3億円。(平成22年。独立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計-労働統計加工指標集-2013』より)
(関連)
《「人口ピラミッド」国立社会保障・人口問題研究所 1920~2010年:国勢調査、推計人口、2011年以降:「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」》
http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/Pyramid_a.html