2014/08/04 6:25

中国の食品汚染。「港で貨物からこぼれたコメが散乱し、群がったスズメが大量死」。そして「少なくとも2011年から今日まで、当局がどれほど厳しく取り締まっても実態は何も変わらなかった」。しかし「日本企業が輸入している食品は管理され安全」。信じられません。

《中国の食品汚染 国内では港でコメ食べたスズメが死んで騒動》
2014.08.03 NEWSポストセブン

 再び世界を唖然とさせた中国の食品汚染問題。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授・富坂聰氏が指摘する。

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 上海福喜食品が期限切れの肉を混入したチキンナゲットを出荷し、外資系ファーストフードチェーンを巻き込んだ騒ぎとなったのは7月のことだ。きっかけは上海の衛星テレビ「東方衛視」の潜入取材だった。

 同じ7月、中国ではもう一つの大きな食品問題がネットを中心に盛り上がった。こちらの問題の入り口となったのは、マスメディアではなく、中国版ツイッターと呼ばれる微博であった。

 健康専門紙の記者が語る。

「湖北省のユーザーが発した一報が大きな議論を巻き起こしたのです。その内容というのは『港で貨物からこぼれたコメが散乱し、それに群がったスズメが大量死した。この原因について当局は、スズメが食べ過ぎで死んだとの見解を示した』というものでした。大量のスズメが一斉に食べ過ぎで死ぬなんてことがあるはずかありません。ですから当然この説明に対して、納得できない人々が一斉に不満の書き込みを投じることとなり、問題は一気に大きな騒ぎになっていったのです。食品問題では多くの中国人が被害者意識を持ち神経質になっていますからね。火に油を注いだということでしょう」

 事件は6月27日、宜昌市の明珠埠頭で起きたという。一隻の貨物船から大量のコメがこぼれ、地面に散乱した。それに20羽前後のスズメが群がり、ほとんど死んでしまったというのだ。「食べ過ぎ……」というのは、この現象に対する説明として流されたものであった。

 騒ぎが全国的な広がりを見せたことで新華社もこの問題を取り上げた。7月3日の記事によれば、地元・宜昌市の政府が死亡したスズメを検査し、その結果として体内からカルポフランという農薬(殺虫剤)が検出されたことを公表し、同時に「食べ過ぎで死んだと答えた政府関係者については不明」と回答したという。

 食品衛生部門もこの問題を重く受け止めたのだろう。7月2日には食品薬品検験検測センターがさらに詳しく現場に散乱したコメとその産地の土壌を検査している。

 その結果を踏まえて行った発表では、当然、「スズメは食べ過ぎで死んだのではない」ことが明らかとなったのだが、それに加えて「すでに産地の農地は封鎖され、その一帯で生産されたコメが市場に出回ることはない」ことも付け加えられた。

 それにしても不思議なのは、スズメを一瞬にして死に追いやってしまうほどの強烈な汚染がある現実と、それとコントラストを描くような当局の過剰ともいえる迅速な対応である。

 もちろん食の安全問題は中国でももう10年以上も重要なテーマであり続けているのだから、当局が敏感になるのは当然だろう。だが、その力の入れ具合に反して同じ問題がずっと続くのも、中国における食の問題の大きな特徴なのである。

 事実、コメに関しては2013年春に広東省が業者に対して行った抜き打ち検査で、全18サンプルのうち8件が国の基準を上回るカドミウムを含んでいたことが明らかにされたばかりだ。

 当時、私は香港にいたのだが大陸との間を荷物を担いで往復する「水客」と呼ばれる密輸業者――といってもアルバイトの老人や主婦たちなのだが――の荷物の中身が粉ミルクから米に変わったという噂が流れ、香港の人々の買うコメがスーパーから無くなってしまうのではないかと心配する声まで聞かれたのを覚えている。

 ただ、カドミウム汚染のコメという意味では、この時点でもはや中国の消費者には新しい問題ではなかった。

 というのもすでに2011年2月、中国の週刊誌『新世紀』が〈カドミウム汚染米の殺意〉というタイトルで大キャンペーンをはって社会問題としていたからだ。

 つまり、少なくとも2011年から今日まで、当局がどれほど厳しく取り締まっても実態は何も変わらなかったということなのだ。この点が、一度大騒ぎすると社会の価値観が大きく変わる日本社会との違いだろう。
http://www.news-postseven.com/archives/20140803_269556.html