2014/07/24 0:34

日本でも立命館大、早大、桜美林大など約20大学に開かれたという「孔子学院」。米国大学教授協会が「孔子学院は中国の国家の一機関として機能し、学問の自由を無視する行動を取る。米国の各大学は、孔子学院との関係を再検討する必要がある」。禁止すべきです。

《米国の大学を侵食する中国の「孔子学院」 全米最大級の教授組織が抗議声明》

 中国政府の海外宣伝・教育機関「孔子学院」の活動に対し、ついに米国の大学教授たちからストップがかかった。

 孔子学院は米国の100近くの大学の内部に、中国政府機関の資金によって設置された。中国語や中国の歴史・文化を米国の学生に教えることを目標とする。米国での活動はどんどん勢いを増し、これまでもたびたび論議を呼んできた。日本でも一部の大学に孔子学院が開設されている。

 米国の各大学の教授たちが組織する「米国大学教授協会」は、6月末、以下のような声明を正式に採択した。

 「孔子学院は中国の国家の一機関として機能し、学問の自由を無視する行動を取ることが多い。一方、米国の大学当局は学問の誠実性を犠牲にするようなパートナーシップを外部の機関と結ぶことがしばしばある。孔子学院の開設を学内に許してきた米国の各大学は、孔子学院との関係を再検討する必要がある」

 米国大学教授協会はこの声明を、シカゴ大学、ニューヨーク大学、スタンフォード大学、コロンビア大学など全米合計100近くの大学に伝えた。これら100近くの大学は、すでに孔子学院を自校内部に開設することを認めていた。

 この公式声明によって、孔子学院の活動がすぐに停止にはなるわけではない。だが、正面から「待った」がかかったことになる。

■ 米国の大学内で中国の立場を主張

 孔子学院は2004年に中国政府によって開設された。

 孔子学院の総本部は、中国政府の教育部(教育省)直轄の組織「中国国家漢語国際推進指導グループ弁公室」(略称・漢弁)である。中国当局はこれまでに約5億ドルの国家資金を投入して各国の大学の内部に「孔子学院」を教育センターとして設立した。2014年7月までに、孔子学院は全世界で約400、米国では九十数カ所が開設された。日本でも立命館大学、早稲田大学、桜美林大学など約20大学に開かれたという。

 一国の政府が自国の言語や文化を海外で普及させようとする活動の実例として、これまでフランスの「アテネ・フランセ」やドイツの「ゲーテ・インスティトゥート」などがある。だが両者とも、外国に独立した施設を開いている。それに対し孔子学院は、外国の大学の内部に拠点を置く。しかも孔子学院の場合、学問の自由や表現の自由を抑圧する一党独裁の政府が開設し、管理する組織なのだ。

 米国内の孔子学院はたびたび論議を引き起こしてきた。ノースカロライナ州立大学では、同大学にチベットの宗教指導者のダライ・ラマが訪れる計画に対し、2012年頃から同大学内の孔子学院が明確に反対を表明し、論議を呼んだ。他の大学の孔子学院でもダライ・ラマの肖像写真を掲げることは事実上禁止となっている。

 また当コラムでも2013年6月に報じたように(「中国当局がニューヨーク大学に圧力? 学内にいられなくなった中国の人権活動家」)、中国政府に弾圧されて米国に逃避した中国の民主活動家の陳光誠氏が、ニューヨーク大学で研究員の地位を得て同大学内に滞在したが、学内の孔子学院から有形無形の圧力を受け、同大学からの退去を求められたことが、当時、波紋を広げた。

 さらにカナダのオンタリオ州にあるマックマスター大学では、構内の孔子学院で教鞭を執る中国系カナダ人の教員が気功集団の法輪功に加わったことが分かると、孔子学院側から「法輪功は中国では邪教とされる犯罪集団だから」として脱退を求められた。このことが、孔子学院が存在する他の大学にも懸念を広げる結果となった。

■ 米国内での活動が全面停止になる可能性も

 こうした状況を受けて、この6月にシカゴ大学では、教職員たちの孔子学院への反発が署名運動へと発展した。

 シカゴ大学では2009年に孔子学院との間で契約を結び、同大学内に孔子学院の開設を認めた。今年6月にその契約が切れて更新の時期となったところ、大学の教職員合計約180人が更新に反対する署名を公表した。「シカゴ大学で、中国語や中国文化の講義担当者たちの人事や講義のカリキュラムが、中国から送られてきた孔子学院代表にコントロールされるようになった」というのが反対の主な理由である。

 「米国大学教授協会」の6月末の声明は、カナダや米国の各大学における以上のような動きを受けての決定だった。同協会は全米の合計450の大学の教授たちが参加する全米最大級の教授の集まりである。同協会が孔子学院に対して厳しい抗議声明を出したことは、今後、米国内での孔子学院の動きを大きく制限することになるだろう。

 「ワシントン・ポスト」も6月末の「孔子学院の代償」と題する社説でこの問題を取り上げ、米国の大学での教育内容を中国共産党機関によって左右されることは好ましくないとして、「米国大学教授協会」の声明を支持した。こうした動きは、やがて孔子学院の米国内での活動の全面停止という事態にまで発展する可能性もある。

 米国でのこの展開が日本の各大学の孔子学院にどう影響していくのかも、注視される。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41296