2014/07/20 13:17

改めて、少子化・子育て支援対策が我が国の最重要の課題として関心が高まっています。そこで、最近あるグループで、全く論点が古びていないとしてご評価を頂いた、平成17年(2005)12月8日、都議会本会議一般質問での私の質問から、少子化対策・子育て支援の必要性についての質疑の要約をご紹介します。当時から、僅かしか状況は改善していません。

  我が国の合計特殊出生率の低下は歯止めがかからず、昨年も1.29と戦後最低であり、東京も1.01と全国で最低の値となっている。
 
 国立社会保障・人口問題研究所による我が国の総人口の推計、中位推計は常に外れて下方修正されるが、低位推計、すなわち最も悲観的な場合には、このままいけば、2100年には、我が国人口は現在の三分の一の4645万人、その後も人口は、高齢者ばかりの逆ピラミッドのまま、四分の一、八分の一と減っていくことになる。
 
 現在、我が国の借金は、国、地方合わせて一千兆円に及ぶ。この借金が、人口が三分の一になったときに、一緒に三分の一に棒引きになるのかといえば、そのようなことはない。生まれたばかりの赤ん坊から介護を受けている高齢者まで、一人当たり、今の三倍の三千万円近い借金を背負うことになる。しかし、そんなことは不可能である。経済は破綻し、財政も年金も破綻し、国民の生活も破壊される、介護の人手すらなくなる、そういうまさに国家存亡の瀬戸際にある、こういう危機感を持たなければいけない。
 
 そして、その中で迫ってくる大変な問題の一つとして、経済あるいは労働力の担い手としての膨大な外国人の流入と、これへの依存の構造化ということがある。
 
 言論も政治も、国外からの軍事的圧力や経済依存のみならず、国内においても外国人居住者が巨大な社会的勢力となる中で、外国による不当な圧力や暴挙に対して、ノーということすら不可能になる。そういう悲惨な将来の姿が絵空事ではない。
 
 我々は、この我々の時代に、先祖から受け継いできた遺産を食い潰すのではなく、この国のよき文化と伝統を将来にわたって受け継ぎ、誇りある日本人が国際社会の中で、次の世紀も、その次の世紀も活躍し続けられる、そういう国のあり方、そのための制度をつくり、残す責務がある。
 
 少子化対策・子育て支援はまさに日本の将来の根幹にかかわる課題であり、現在、政治が取り組むべき最重要の課題である。

 フランスを初め欧州の先進国では、日本と同じように少子化に悩んだ末、子育てへの手厚い経済的支援を行っている。フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークなどでは、それぞれ子供一人につき月額約1万4000円あるいは2万1000円の家族手当を15歳あるいは19歳まで出しており、その多くの国で、子供の数が増えると手当の額を増やしている。例えばスウェーデンでは、第五子以降は約2万9000円の手当が出る。フランスでは、出生率は1.92まで回復している。
 
 これにあわせて税負担の軽減を実施することにより、多くの国で出生率の低下に歯どめがかかり、あるいは出生率回復に効果を上げている。
 
 「平成17年版国民生活白書」によれば、我が国においては、大卒の女性が定年まで就業を中断せずに働き続けた場合に比べ、28歳で退職して第一子を産み、31歳で第二子を産んで、一年後にパート・アルバイトとして再就職した場合、生涯所得の格差は総額2億2100万円に上る。この経済的損失は、無意識に認識が広がって、多くの若い女性にとって出産、育児を選択する制約になっていると考えられる。

 二人の子供が生涯で仮に3億円ずつ、計6億円稼ぐとして、子育てによる機会費用を個人に押しつけていることで、社会全体としてはより多くの損失を招いているということになる。
 
 また、「出生動向基本調査」によれば、夫婦にとっての理想の子供の数より実際の子供の数が少ない最大の理由として、63%の女性が子育てや教育にお金がかかり過ぎると答えている。
 
 さらに、「少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査」によれば、20代前半は現金給付の拡大、20代後半は医療費の無料化、同じ20代後半から30代後半は保育、教育費の軽減といった、子供の成長に合わせた経済的支援を求める姿が明確である。まさに我が国では、子育ては損だ、報われないと感じて、子育てという選択をしづらくなる、あるいは三人目、四人目は無理だと思う、実際に育てている人は大きな負担を感じている、こういう現状にある。
 
 出産は、個人にとっては個人的な問題であるが、政治にとっては社会の仕組みをどうつくるかという問題である。子育てをする人の経済的な損失を縮小し、選択の幅を増やすことが重要であり、次の社会を担う次の世代を産み育てている人たちが不利にならないよう、社会全体として仕組みを整えていくことは当然のことだと考える。
 
 我が国においては、子育てへの現金給付のみならず、保育サービスを初めとする現物給付をあわせた子育て分野全体に対する国の予算が余りに少ない状況がある。OECDの基準による「家族分野の社会支出」の国際比較調査2001年によれば、我が国の家族分野への支出は、対GDP比で0.6%しかないのに対し、フランスは2.81%、スウェーデンは2.92%、イギリスで2.23%と、約4倍の格差がある。
 
 次の時代を担う次の世代を産み育てている人たちの経済的な負担感を初めとするさまざまな負担感を取り除くために、抜本的な施策の充実が急務と考える。(以下略)