2014/07/12 0:28

ウクライナ東部。プーチン政権は親露派と距離を置き、緊張緩和を模索。露は米欧制裁で資本流出。ウクライナ派兵反対は66%に。他方、東部の武装勢力には露民族主義者が浸透、クレムリンとは別の論理で動いている。今回のウクライナ東部情勢の推移は、本当に示唆に富みます。

《制裁と世論恐れる 露、ウクライナ東部の親露派と距離》

 ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州の情勢は、親ロシア派武装勢力が政権側部隊に押され、両州の州都など4都市を掌握するのみとなった。ロシアのプーチン政権が親露派と距離を置き、緊張緩和を模索し始めたことが影響しているようだ。政権は、米欧が対露制裁を強化した場合の経済的打撃や世論の動向を慎重に考慮し、ウクライナ問題の着地点を探っている。

 プーチン氏の側近を対象とした米欧の制裁は、とりわけ外国投資家の心理に影を落としている。露中央銀行によると、今年前半の資本流出は746億ドル(約7兆5500億円)に上り、昨年1年間の597億ドルを超えた。通年の資本流出が1000億ドルに迫り、今年の国内総生産(GDP)は前年比0・5%増にとどまるとも予測されている。

 米欧は、ロシアがウクライナ東部を安定化させる方策を取らない場合、地下資源や金融など主要経済分野を対象に追加制裁を科すと警告。ストルチャク副財務相は「制裁強化は銀行決済の停止や輸出収入の喪失につながる恐れがある」(独立新聞)と懸念を示した。

 主要調査機関によると、米欧の制裁が政治エリートだけに影響すると考える人は5月末の63%から52%に減少し、自らの利益に関わるとする人が24%から35%に増えた。ウクライナに派兵すべきでないとする人は66%に上る。プーチン政権はクリミア併合に先立ち、現地で独自の調査を行うなど、世論の動向には大きな注意を払っている。

 「ロシア系住民の保護」を掲げてクリミアを併合したプーチン政権が、一種の自縄自縛に陥っているとの見方もある。

 モスクワの消息筋は、「東部の武装勢力には指揮官の通称ストレルコフなどロシア民族主義者が浸透し、もはやクレムリンとは別の論理で動いている」と指摘。プーチン政権は自国内のロシア民族主義の台頭を恐れており、自らたきつけた「同胞を救え」という世論を沈静化する必要に迫られていると語る。

 武装勢力の中核は東部の主要都市ドネツク(人口約95万人)に籠城して徹底抗戦する構えで、先行きは予断を許さない。在露外交筋は、「プーチン政権自身がどう問題を決着させられるか分かっていないのではないか。ロシアは状況に応じて、自国の利益を最大化するよう動くだろう」とみている。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140711/erp14071120500005-n1.htm