《【再び、拉致を追う 第10部 明日への提言(上)】 「宇出津」36年前の悔恨 「一網打尽できてたら、展開は変わっていたかも」》
更なる悲劇を防ぎ、国民を守るため、スパイ防止法は必要です。
[「宇出津(うしつ)事件」。昭和52(1977)年9月19日、石川県の宇出津海岸から、東京・三鷹市役所の警備員だった久米裕(ゆたか)さん=拉致当時(52)=がもうけ話にだまされ、北朝鮮に連れ去られた。]
[捜査員が駆けつける前に久米さんは連れ去られていた。警察は1人で旅館に残っていた在日朝鮮人の男を外国人登録法違反容疑で逮捕。男は戸籍入手の目的で久米さんを北朝鮮工作員に引き渡したと自供した。]
[こうした事態になっても国の対応が大きく動くことはなかった。]
[それを見透かすように事件は続発した。宇出津の約1カ月後の10月に鳥取県米子市で松本京子さん=同(29)=が、11月には新潟市でめぐみさんが拉致された。翌年夏には、アベック拉致事件が4件(1件は未遂)連続する。約1年間に、後に政府が拉致と認定する被害者13人が連れ去られた。年夏には、アベック拉致事件が4件(1件は未遂)連続する。約1年間に、後に政府が拉致と認定する被害者13人が連れ去られた。]
[日本の治安捜査には大きな壁がある。他国の諜報活動や敵対的工作活動を直接取り締まるスパイ防止法がなく、容疑者への接近が困難だ。犯人に迫っても令状の罪状を「別件」で見つけなくてはならず、捜索にもなかなか踏み込めない。]
[宇出津事件で逮捕した男も(中略)自宅からは暗号解読に使う乱数表が見つかったが、「被害者がいない。主犯もいない」として結局、起訴猶予となった。捜査が真相まで伸びることはなかった。]
[彼らを動かしているのは工作機関であり、警察の対応では間に合わず専門の防諜機関と対外情報機関が必要だ。その体制を支えるには法的基盤となるスパイ防止法がいる。主権を侵害する者を取り締まる体制がない日本は、世界でも特異な国だ]