《【石油危機の教訓】(上)稼働40年…老朽火力の悲鳴》
原発の問題になると、どうしても、明後日の話ばかりになり、明日の話ができなくなります。しかし、明日がなければ明後日は来ません。
以下、記事抜粋。
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東京電力福島第1原発事故の後、国内の原発は相次いで運転を停止し、現在は稼働ゼロだ。これを補っているのが火力発電だ。ただ、全国に約300ある火力発電所のうち、運転開始から40年を超えた古い設備が全体の2割を占める。定期検査を特例的に先送りし、何とかつじつまを合わせているのが実態だ。
そうした取り組みも限界を迎えつつある。昨年7、8月に故障などで起きた計画外停止は、前年より2割も増えた。無理やり稼働を続けてきた老朽火力が悲鳴を上げているのだ。
電力供給の危機は老朽火力だけではない。液化天然ガス(LNG)を燃料とする比較的新しい設備もトラブルとは無縁ではない。発電所で不測の事態が起きれば、予想外の大規模停電に発展する恐れがある。
実際、そうした危機が、2年前に九州で起きている。
昭和48年秋の第1次石油危機は、日本が戦後初めて経験したエネルギー危機だ。これを教訓に電力各社は、原発など電源の多様化を進め、石油火力の割合を7割から1割未満に引き下げた。
だが、原発の稼働停止で、LNGを含めた火力発電への依存度は急激に高まり、今では石油危機時を上回る約9割に達している。40年をかけて見直しを進めてきた日本のエネルギー状況は、再び脆弱(ぜいじゃく)なものになった。
安倍晋三首相は先月29日の参院代表質問で「電力は足りているとの指摘もあるが、発電所の定期検査繰り延べや老朽火力をフル稼働している結果。電力需給は予断を許さない」と答弁し、安全性を確認した原発の再稼働に意欲を示した。
政府の危機感は強い。だが、原発への不安が根強い世論の前で、有効な手を打つことができていない。まずは、日本の電力供給をめぐる厳しい現実を国民に正しく伝えることから始めねばならない。