2014/06/27 7:17

「ナヌムの家」で晩年を過ごした元慰安婦・故 裵春姫氏、「強制的に連れて行ったなんて見てないよ」。「日本贔屓なので、ナヌムの家では少し浮いていた」(関係者)。「登録元慰安婦」には、現在80歳、終戦時には10歳か11歳だった計算になる女性も。

《【歴史戦 第3部 慰安婦・韓国との対話(1)前半】
「日本びいき」ある元慰安婦の死 「反日」でひとくくり、1面トップ》

 慰安婦募集の強制性を認めた平成5年8月の官房長官、河野洋平の談話作成経緯と韓国の関与について、日本政府が20日に民間の有識者による検証結果を発表すると、韓国政府は早速反発し「深い遺憾」を表明した。大統領、朴槿恵(パク・クネ)が慰安婦問題に絡めて日本に「歴史の直視」を要求しているのと矛盾している。慰安婦問題をはじめとする歴史問題で冷え切った日韓関係に和解の糸口はあるのか。果たして問題解決は可能なのか。政治部編集委員、阿比留瑠比が今月9日から12日まで前ソウル特派員、水沼啓子とともに韓国を訪ねて各界の識者と意見を戦わせ、韓国側の本音と実情を探った。

■ 到着後いきなり洗礼

 韓国は慰安婦問題をどうとらえ、どう位置づけているのか-。9日に韓国に着いて最初に受けた“洗礼”が大手紙、中央日報の同日付1面トップ記事だった。

 「日本軍慰安婦被害者、裵春姫(ペ・チュンヒ)さんが8日死去」

 記事は、韓国政府に登録された237人の元慰安婦の一人で91歳の裵が亡くなり、生存者は残り54人になったと報じていた。同紙は、これがこの日一番のニュースだと判断したことになる。

 記事にはソウルの駐韓日本大使館前に建てられた慰安婦の少女像の写真と、登録元慰安婦の生存者の名前と年齢も添えられていた。中には、現在80歳と記され、終戦時には10歳か11歳だった計算になる女性もいる。日本人から見れば信じ難いが、韓国ではそれが受け入れられている。

■ 強制連行見てない

 元慰安婦女性が共同生活を送る「ナヌムの家」で晩年を過ごした裵は実は戦後、自ら韓国から日本に渡って約30年間、日本で暮らしており、日本の演歌や軍歌が上手だった。「日本びいきなので、ナヌムの家では少し浮いていた」(関係者)という。

 裵と以前から交友があり、葬儀にも参列してきたという人物に会った。

 「彼女は『(朝鮮人女性を)強制的に連れて行ったなんて見てないよ』と言っていた。『日本を許したい』とも話していた」

 だが、韓国のメディアではこうした裵の一面は報じられない。中央日報の記事は、彼女の人となりには触れず、代わりにナヌムの家所長、安信権(アン・シングォン)のこんなコメントを掲載していた。

■ 女性として尊重せず

 「一日も早く日本政府の公式的謝罪が行われ、元慰安婦の被害女性たちが人生の恨みを晴らし、心安らかに余生を送れるといい」

 慰安婦となった経緯も考え方も生き方もそれぞれ違う女性たちを、「日本軍被害者」という観念的な枠組みでひとくくりにし、画一的に取り扱う。そんな韓国社会の姿勢は、それぞれの事情も複雑な心境もある元慰安婦を一人の女性として尊重しているのではなく、ただ「反日」のために利用しているのではないかとの疑問を禁じ得なかった。

 そんなことを思いながらソウル市街から車で1時間余りの広州市にあるナヌムの家を訪れた。するとそこには、裵の死去を悼む大統領、朴の名前を冠した白い花輪が飾られていた。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140622/kor14062212040003-n1.htm