「クマラスワミ報告書」に対する日本政府の「幻の反論文書」。非常に明快な反論であったものを、なぜ撤回したのか。必ず公開すべきです。
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《クマラスワミ報告の反論書の公開検討 岸田外相》
2014.10.15 産経新聞
岸田文雄外相は15日の衆院外務委員会で、慰安婦を強制連行された「性奴隷」と認定した1996年の国連人権委員会の「クマラスワミ報告書」に対し、日本政府が作成した反論文書の公開も含めて検討していることを明らかにした。
日本政府は当時、報告書について「事実調査に対する姿勢は甚だ不誠実」などとする反論文書を作成し、国連に提出。その後、内容を差し替えて再提出していた。岸田氏は差し替えの経緯について「文書が(他国から)『詳細すぎる』と指摘を受け、多数の国の理解を得ることを目指して簡潔な文書を改めて作成した」と説明した。
反論文書が非公開となっていることについては「当時の状況を総合的に判断した」と言葉を濁した。ただ今後については「国際社会の理解を得るのに何が最善の方法か考えたい」と述べ、公開の可能性も含め、検討する考えを示した。
http://www.sankei.com/politics/news/141015/plt1410150047-n1.html
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《【阿比留瑠比の極言御免】クマラスワミ報告書に反駁 幻の反論文書を公開すべき》
2014.10.09 産経新聞
慰安婦を強制連行された「性奴隷」と認定した1996年(平成8年)の「クマラスワミ報告書」について、6日の衆院予算委員会で興味深い質疑があったので紹介したい。次世代の党の山田宏幹事長が、日本政府がいったん明快な反論文書を作成しておきながら、なぜかすぐに引っ込めた経緯をただすと、岸田文雄外相はこう答弁した。
「文書に関し、詳細すぎるといくつかの国から指摘を受けて、簡潔な文書を改めて出した。(初めの)文書は、現状では取り扱いは非公開となっている」
この幻の反論文書の内容については産経新聞は今年4月1日付紙面で既報だ。簡単におさらいすると、クマラスワミ報告書に対して、具体的な事例を示して次のように反駁している。
「客観的資料は無視し」「事実調査に対する姿勢は甚だ不誠実」「無責任かつ予断に満ちた」「軽率のそしりを免れない」「歴史の歪曲に等しい」…。
その上で国際法上、「いわゆる『従軍慰安婦』の制度を『奴隷制度』と定義することは法的観点からは極めて不適当である」と指摘し、クマラスワミ報告書は「かえって問題の真の解決の妨げとなることを深く懸念する」と結論する。
報告書は、慰安婦狩りを証言し、朝日新聞もこのほど記事を取り消した吉田清治氏の著書などに依拠しているのだから当然だろう。
今月6日の質疑で山田氏が「なかなか良く書けている。日本の立場を説明できる文書だ。ぜひ公開してほしい」と求めたほどで、今読んでも違和感はない。
ところが、現実にはこの反論文書は撤回され、慰安婦募集の強制性を認めた河野談話や、元慰安婦への支援を行うアジア女性基金の取り組みを紹介した簡略版の文書に差し替えられる。クマラスワミ報告書への直接的な批判は圧縮され、抑制的なものとなった。
歴史の事実関係は一切争わず、「法的には決着済み」「もうすでに謝罪している」で片付けようという、われわれが見慣れた日本の「事なかれ外交」に落ち着いたわけである。
とはいえ不思議なのは、当初は日本側も「日本政府として法的に反論すべきことはしていく」(当時の橋本龍太郎首相)などと強気だったのに、その後は反論文書自体をなかったことにしていることだ。
そもそも、一度は関係各国に配布された公の文書だったはずの反論文書が、現在では日本国民にも「非公開」とされている理由がさっぱり分からない。
当時、反論文書に対して中国や韓国、北朝鮮などの国や日本の人権派弁護士やNGO(非政府組織)が反発したことは分かっている。ただ、それと政府の方針転換が直接結びついているのかは藪の中だ。
反論文書が取り下げられた経緯について、現在の外務省幹部はこういう。
「われわれが調べても分からない。だが、きちんと間違いを指摘したもとの反論文書と簡略版はまるで別のシロモノだ。いつか反論文書は公開すべきだ」
反論文書を公開すれば、安倍晋三政権が歴史を修正しようとしているのではなく、日本政府は平成8年当時から、慰安婦問題の事実関係についてこう認識していたのだと内外に示すことができる。無意味な非公開指定はさっさと解くべきである。(政治部編集委員)
http://www.sankei.com/premium/news/141009/prm1410090012-n1.html