《GDPの名実逆転、17年ぶり解消 14年、幅広いモノの価格上昇》
2015.02.17 日経新聞
内閣府が16日に発表した2014年の国内総生産(GDP)によると、物価の総合的な動きを示すGDPデフレーターは前年比1.6%上昇した。プラスになったのは1997年以来17年ぶりで、マイナス基調が続いていた国内物価に上昇の機運が出てきた。名目成長率が実質成長率を下回る「名実逆転」も解消した。政府が目指すデフレ脱却が一歩近づいた格好だ。
GDPデフレーターは個人消費や設備投資、輸出入など、経済活動全体の価格の動きを示す指標だ。金融機関の破綻が相次いだ1997年の翌年から一貫して前年割れが続いており、日本がデフレから抜け出していない象徴の一つだった。
甘利明経済財政・再生相はGDP発表を受けた同日の記者会見で「デフレ脱却に向けた好ましい状況にある」と語り、デフレーターが上昇している現状を好意的に受け止めた。
14年のGDPデフレーターの上昇率1.6%のうち、消費増税は1ポイント程度で、それ以外の「実力」による物価上昇は0.6ポイント程度と見込まれる。資材価格や人件費の上昇で住宅や設備投資関連の物価が上がったほか、身近なモノやサービスの値段も上がった。
ただ、日銀が物価上昇の目安としている消費者物価指数(CPI)の伸びは、原油安の影響で伸びの鈍化が見込まれる。エコノミストの中には、CPIは15年中に再び前年同月比マイナスに陥るとの見方もある。
政府はCPIやGDPデフレーターの前年比プラスが定着し「再び物価下落に戻らない」ことをデフレ脱却の条件としている。CPIの伸びが低迷するのは、エネルギー以外の物価の伸びが高くないことを示している。必ずしも今の段階で日本経済が完全にデフレから脱却できたとは言いにくい。