《超先進中国「シャオミ」に盗作疑惑 日本ベンチャー激怒「提訴辞さず」 中国企業のパクリDNAは変えられない》 2015.02.02 産経新聞 スマートフォンシェアで米アップル、韓国サムスンに続く世界3位に急成長した中国のデジタル機器メーカー「小米科技(シャオミ)」の“パクリ体質”を懸念する声が高まっている。昨年暮れに発売した空気清浄機「小米空気浄化器」が日本の家電ベンチャー、バルミューダ(東京都武蔵野市)の「Air Engine」にウリ二つで、同社が提訴を検討。シャオミはスマホで進出したばかりのインド市場でもエリクソン(スウェーデン)の特許を侵害したとして、昨年末に一部商品の販売を差し止められている。先進的イメージで躍進するシャオミだが、やはり中国市場に根付いた“DNA”は変えられないのか。 ■ 外観、構造すべて酷似 開発者が同じ!? 「あまりに似ているので困惑している」 昨年12月10日、バルミューダの寺田玄最高経営責任者(CEO)個人が中国語でこう声明を発した。シャオミの生活家電分野として初めての製品となる小米空気浄化器の市場投入を発表した翌日のことだ。 発表されたシャオミの新製品をネットで見た瞬間、その酷似ぶりに「驚愕した」と寺田氏が言う通り、一般的な空気清浄機に比べスリムな縦型の外観は、サイズも含め、バルミューダのAir Engineと一見して区別がつかない。 同じ日、バルミューダは会社としても、シャオミの新製品に対する見解を中国版ツイッター「微博」で表明した。それによると、小米空気浄化器は、その外観だけでなく、2枚のファンを備えた内部構造や性能、宣伝文句に至るまで、14年1月に中国市場で発売し、同国のアマゾンなどで販売しているAir Engineにそっくりだと指摘した。 さらにバルミューダはその見解で、Air Engine発売後、シャオミを含む中国の複数社からバルミューダに提携の申し込みがあり、そのすべてを断ったことも明らかにした。もちろん、技術については日本で特許を取得済みで、中国でも審査中だ。 それだけではない。小米浄化器を開発した責任者が、かつてバルミューダに製品開発部長として所属し、昨年5月に退職した日本人技術者であることも、その実名を挙げて指摘。特許はその日本人ではなく、バルミューダが保有しており、退職する際に秘密保持契約も交わしたという。 ■ 部品調達先を調べ回って徹底コピーか 寺田CEOは声明で、バルミューダは「ひとつの製品を開発するのに設計図を2000種類も描き、細部まで検討している」と強調。「革新はバルミューダのDNA。模倣するのは製品でなく、その精神であってほしい」と、シャオミに対して訴えた。 このバルミューダの見解に対し、シャオミ側も即座に反発。中国メディアによると、反論では「色やボタン、ランプ、センサーなど各所に違いがある。白や四角といった大ざっぱな形は、業界の標準的なものだ」と指摘。内部構造についても「両製品とも吸引と送風を別々に行うWファンを導入しているが、バルミューダは現時点では特許を取得していない」と問題がないことを強調し、Air Engineとは技術もデザインもまったく異なるとしてバルミューダの見解表明を遺憾とした。 両社の主張は真っ向から対立しており、今後の行方は見通せない。 ただ、Air Engineは日本では2012年に発売しており、シャオミの製品化はそれから約2年後。これで見た目、性能がそっくりであれば、先に製品化した方に分があるというのが、合理的な見方だろう。Air Engineの中国での価格6000元(約11万円)に対し、小米空気浄化器の899元(約1万7000円)。これではAir Engineが売れなくなるのは当然だ。 バルミューダによると、今回の件について「前々から(Air Engineの)部品調達先を丹念に調べているという情報があった」(同社社員)という。そのうえで「現在、どの部分が特許侵害になるのか、確認作業を進めている」(同)段階だ。 ■ 批判も意に介さず、拡大路線は急加速 実は、シャオミの“パクリ”疑惑は、これだけではない。シャオミがバルミューダに反論した昨年12月11日、インドの裁判所ではシャオミを無線技術の特許侵害で訴えていたエリクソンが勝訴した。これによりシャオミはインド市場で一部の端末について一定期間販売を差し止められた。 エリクソンの広報担当者ゴーラブ・シャーマ氏は、ブルームバーグの取材に対し、エリクソンが3年余にわたって小米と特許のライセンス供与をめぐり交渉を試みていたで説明。「小米が当社の技術に対する妥当なライセンス料を一切払わず、当社の莫大な研究開発投資の恩恵を受けているのは不公平だ」と述べている。 シャオミは、韓国サムスンや米アップル製品とさほど変わらない性能でスタイリッシュなデザインながら、価格は最大約5分の1という激安スマホにより、中国市場で急成長。昨年からは東南アジアやインド、ブラジル、ロシアなど中国以外の新興国への進出も開始している。昨年7月に参入したインドではネット通販で1秒に1万台を売るなど大人気となった。 創業4年と若い企業ながら、14年の売上高は前年比2.4倍の743億元(約1兆4400億円)、スマホの販売台数も同3倍超の6112万台と驚異的な伸びを記録。15年は1億台の販売を目指すとしている。未上場ながら、その株式時価総額はすでにソニーを上回る4兆~5兆円と試算される。 海外進出とともに、事業領域の拡大にも乗り出しており、昨年には中国国内で格安の大画面4Kテレビを発売。そして、問題の空気清浄機も発売した。積極的な企業買収も展開しており、昨年末には中国大手家電メーカーの美的集団に200億円超を出資し、近く共同開発による家電の販売も予定しているもようだ。 ただ、当初からシャオミの“パクリ体質”は指摘されていた。雷軍CEOは経営哲学はもちろん、製品発表会見での服装や立ち居振る舞いまで、米アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏を徹底的に模倣。製品のスマホについても、エリクソンだけでなく、デザイン面ではiPhone(アイフォーン)に似ていると指摘が多い。 当の雷CEOは、インドでの販売停止など、同社に対する“パクリ体質”という見方について、1月4日付米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に、こうした懸念は新興企業にとって「通過儀礼」だと全く意に介さない様子だ。 ■ ソニーでなく、ベンチャーがまねされるって… しかし、今後、日本を含む中国以外の先進国への進出、また、家電など他の事業領域への進出拡大に際し、“パクリ体質”のレッテルが定着すれば、シャオミにとって痛手となるに違いない。それだけに日本のベンチャーと中国巨大メーカーとの攻防の行方に注目が集まる。 ただ、バルミューダは、今回の件について中国メディアの取材を受け、かつてトヨタ自動車が米メーカーの車を分解して部品を研究したことを引き合いに出し、「技術はまねの繰り返しだ」とも指摘。「われわれが技術革新で先陣を切れば、他社は背中を見て追うことになる」と、必ずしも徹底的に不正を追及するかどうかは微妙な姿勢も示している。 大人の対応ともいえるが、その背景には、まだ社員の少ないベンチャー企業のため「(訴訟に)かかり切りになるのもどうか」(バルミューダ社員)という事情もあるようだ。 アップルに続き、まねされたバルミューダは、違う側面からみれば、それだけ技術力やデザイン力を認められたともいうことができる。ある業界関係者は「ソニーではなく、ベンチャーだったのが…」と、日本の大手メーカーが素通りされたことの情けなさを指摘した。 写真:左がシャオミの「小米空気浄化器」(ユーチューブから)、右がバルミューダの「Air Engine」(同社提供)。外観は寸法も含めそっくりだが、それだけでなく内部構造やPRの仕方までほぼ完全コピーしている印象だ。 http://www.sankei.com/premium/news/150202/prm1502020001-n1.html |