呉竹会アジアフォーラムより寄稿依頼を頂き、下記拙文を最終稿として取りまとめました。同会機関紙「青年運動」に掲載予定です。
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《舛添要一東京都知事を解任せよ
定員割れの東京韓国学校、二校目の建設に都有地貸与の愚》
2016.06.08 吉田康一郎
この原稿を書いている6月8日、東京都議会の一般質問が行われた。各種世論調査で軒並み9割が納得せず8割が辞任を求めている舛添要一東京都知事の一連の公私混同・公金流用、浪費、政治姿勢等の問題について、全会派から15人の都議会議員が追求の質問を行なった。
次々に露呈する、公金による度を越した海外豪遊、公用車での別荘通い、政治資金の不正支出と私的流用、政治資金収支報告書の虚偽記載、禁止されている政党交付金による借入金清算疑惑、等々。
舛添氏は、当初は全てを正当化し、或いは自分以外の関係者に責任を転嫁する等していたが、本人の説明を覆す証言が次々に出てきて世論の批判が高まると一転、一部については謝罪し返金し、次に「第三者」と称して弁護士による「違法ではないが不適切」との調査報告で幕引きを図り、しかし全く国民・都民の納得を得られるものではない。
「クリーンな政治を目指す」に代表されるこれまでの舛添氏の主張や著作と実際の行動とが、全く正反対のものである事が、今では世間の周知する処となり、有権者の圧倒的多数が舛添氏の辞任を求める状況にある。
この様な状況の下で6月1日から始まった都議会で、議会がどの様な姿勢を都知事に示すかが注目されていたのだ。
結果、7日の代表質問、8日の一般質問において、各会派はかなり厳しい追求の姿勢を知事に示した。辞任を求める厳しい世論を意識したものだろう。今後、総務委員会の質疑を経て、不信任を議決するに至るかもしれないし、そうすべきである。その場合、知事は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散しなければ、その職を失う。都議選か、都知事選が近いかもしれない。
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しかし敢えて言えば、連日マスメディアで報じられ、都議会で追及がなされている上述の諸問題は、主にいわゆる「政治とカネ」「公私の区別」という、舛添氏の公人としての資質を、重要だが一つの側面から問う材料である。
政治家にはもう一つの重要な評価基準がある。それは、「どの様な政治を行い、公益を増進しているか」という評価基準である。
端的に言えば、「処遇と使ったお金に見合う利益・成果をあげているか」「本来の職務である立法、行政において業績を上げているか」である。
例えば、都知事として、ファーストクラス266万円の航空運賃、条例の規定4万円の5倍のスイートルーム一泊20万円の使用を伴う「都市外交」を行なったとしても、それにより、1兆円の契約を国内・都内の企業が受注し、都税収入が増える成果を上げたならば、「接待にそれなりの見栄えも必要か」と納得や理解をする納税者は増えるだろう。
或いは、若干公私の資金の区別が杜撰でも、辣腕を振るって都政各分野の山積する課題を次々に改善する成果を上げ、知事としての有能さを都民が実感していれば、都民の怒りはここまで広がらなかったかもしれない。
しかし、舛添氏は、「外遊と美術館巡りに明け暮れ、都政を顧みぬ都知事」であって都知事としての成果をあげる事がなかったばかりか、都民の利益を損なう不適切な判断を行なう「有害な都知事」であったのである。
それを明確に示したのが、「韓国学校増設問題」であった。
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この韓国学校増設問題とは、既にある東京韓国学校に加えて2校目の韓国学校を増設する用地として、東京都が所有する旧都立市ヶ谷商業高校の跡地(新宿区矢来町)を韓国政府に有償で貸与するという案件の問題である。
この方針を東京都は3月16日に発表した。舛添知事が平成26年7月に韓国を訪問した際、朴槿恵大統領から用地確保への協力要請を受けたからだと言う。
断っておくが、私は、東京に韓国学校がある事を問題視しているのではない。今日、世界のどの国にも外国人は住んでいるし、外国人の居住人口の多い都市には、その子女を教育する「外国人学校」が存在する。親の都合で受入国に来た子女は、いずれ母国に戻った後の事を考えれば、使用言語も教育内容も、受入国の教育を受けるのではなく、母国の制度・内容に準じた教育を望むのは当然であるし、それは受入国の国益に反しない限り受入国も認めるべきであろう。
しかし、その様な受入国の教育制度・内容と異なる、受入国が必要と定める教育を行わない「外国人学校」は、建設から運営まで当該外国人やその送出国政府が費用を負担し、受入国に費用負担を求めない事が当然である。
実際、世界各国にある日本人学校は、受入国の財政支援を受けていない。その地の日本人社会が費用を賄い、日本政府が支援している。外務省に確認したところ、外国における日本人学校が受入国政府から受けている便宜供与は、警察等による警備以外は把握していない、との事である。
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従って、韓国政府や韓国人社会が日本において自国子女の教育機関の建設を計画したとして、それは自らの負担で行えば良いのであり、東京都が希少な公有財産である都有地を貸与する必要はない。しかし、それよりも何よりも、本案件は、もっと基本的な所に問題があるのである。
その、より基本的な問題とは何か。答えは単純明快である。今ある東京韓国学校自体が定員割れの状態であって、2校目を増設しても入学する児童・生徒がいないという事だ。だからそもそも建設する必要がなく、その為に土地を貸与する必要もないのである。
都は、東京韓国学校の児童・生徒数の実員数を対外的に明らかにしようとしないが、私が直接東京韓国学校に確認したところ、3月28日の時点で、東京韓国学校の平成28年度(4月からの新年度)児童・生徒予定数は、初等部定員720人に対し実員698人、中高等部定員720人に対し632人であった。いずれも実員数が定員数を下回っていた。前年度の平成27年度も定員割れの状況であった。
それにも拘らず舛添知事は、上述の都立市ヶ谷商業高校の跡地を貸与するという。全く理解できない。
言うまでもなく、東京において土地は希少である。私も東京都議会議員を2期務め、都政に関わらせて頂いたから、都政の各分野、福祉、教育、産業、環境、都市基盤等々の需要を賄う為、いかに多くの用地が必要であり、その土地の確保に都が苦労しているかを実感してきた。
そしてその土地需要の中でも、現在最も優先的に対応すべきは、保育所の増設に代表される育児支援政策に係る用地確保である。
今日、東京のみならず日本全体にとって最も根本的で深刻かつ重要な問題は、人口減少と少子化である。少しでも出産と育児をしやすい環境を整え、出生率の回復に繋げなければならない。次の日本社会を担う次の世代がいなければ、経済も福祉を支える財源も、介護の人手すらもなくなってしまう。
保育所の待機児童問題は、就業と出産・育児の両立を迫られている育児世帯が直面している重要な問題であり、保育所の整備による待機児童の解消は、勿論それだけで少子化問題が解決する訳ではないが、出産・育児に関する大きな不安と困難の要因の一つを取り除く、出生率の回復を図る上で不可欠の取組みである。幾多の都政の課題の中でも最優先で解決すべき課題と言える。
都は、少子高齢化対策を最優先課題の一つとし、「長期ビジョン」において「保育サービス利用児童数を平成29年度末までに4万人増加させる」という数値目標を掲げており、その進捗状況は、平成26年度末で約1万2千人の増加と、引き続き努力が必要な状況にある。
同様に、高齢化の進行に伴い高齢者福祉施設も不足しており、その整備も重要な課題である事から、都は、未利用の都有地を保育所や介護施設などに優先的に割り当てる方針を示しているのである。
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この様な都政の状況の中、舛添知事は、今ある東京韓国学校が定員割れしているにも拘らず、2校目の建設に都有地を貸与する、としているのである。
5月19日には、夕刊フジが、舛添知事の判断がおかしい事を示す新たな資料を報じた。英国人学校「ブリティッシュ・スクール・イン・東京」(渋谷区、幼稚園・小学校)が定員300人に対して実員数367人(充足率122%)、「ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和」(世田谷区、小学校・中学校・高校)が定員385人に対して実員501人(充足率130%)等、3校の外国人学校が実員数が定員を超えていたのである。
更に別の事実を示せば、都内の外国人人口(平成28年1月1日現在)を国籍別で見ると、
中国 185,982人
韓国・朝鮮 93,309人
フィリピン 29,575人
ベトナム 22,131人
ネパール 18,412人
米国 16,411人
となり、中国人が韓国・朝鮮人の2倍在留している。この中で認可学校を都内に持っているのは「韓国・朝鮮」、「米国」だけである(四ツ谷の東京中華学校は台湾系。本稿では議論を省略)。そして、中国人は増加傾向にあり、韓国・朝鮮人は減少傾向にある。
都が外国人学校の建設に便宜を供与するのであれば、定員割れしている韓国学校の増設よりも英国人学校、或いは2倍の在留者がいる中国人学校の建設への便宜供与が優先されるべきだという事になるはずである。
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市ヶ谷商業高校跡地が選定された経緯も、非常に強引である。
平成21年3月に都立市ヶ谷商業高校が閉校となり、平成22年11月、都は「東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画」を策定、当該地に、知的障害をもつ高校生を対象とした「市ヶ谷地区特別支援学校(仮称)」を平成31年度に開校する事としていた。
ところが平成26年7月、舛添知事が訪韓、朴大統領から「韓国学校」用地確保の依頼を受けると、平成27年5月、当該地を特別支援学校の予定地から変更、その結果、同校は開校の日程を確定できない状況になっている。
更に、地元の新宿区が、当該地は待機児童数が多い同区の中でも最も保育ニーズが高い牛込箪笥地域に位置している事から、今は建替え中の愛日小学校の仮校舎として使用している同地を、小学校移転後、保育園を設置する用地として引き続き使用したいと要望している事を無視し、「新宿区からの要望は聞いていない」と不誠実な発言をしつつ、韓国学校に貸与することを決めているのだ。
そして更に驚くべき事は、朴大統領からの「韓国学校」用地確保の依頼を、日本政府が聞いていない、という事である。私が問い合せた外務省の担当者は、正式の外交ルートを通さない遣り方に「違和感を感じる」と慎重かつ婉曲ながら不快感を表明した。
我が国と韓国の間には、領土問題や歴史認識問題から、例えばソウルの日本大使館前の慰安婦像撤去問題に至るまで、様々な難しい外交問題があり、厳しい交渉が必要となっている。その中で、舛添知事の独りよがりな個人プレーは、明らかに政府の外交を妨害し、国益を損なってもいるのである。
あらゆる観点から見て、舛添要一氏に都知事の資質はない。知事を解任する必要があるのだ。
(了)
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