04/21/2016 04:30:49 AM

4月中旬、米委員会、中国当局による南シナ海の人工島埋立てが、サンゴ礁と漁業資源に重大な被害を与え、国際法にも違反すると警告。

世界的にも自然資源の豊かな南シナ海では、571種のサンゴが生息し、うち333種類はスプラトリー諸島海域に存在する。そのうち13平方km海域のサンゴ礁が、浚渫と埋立て作業で破壊され、土砂や堆積物の渦は日光を遮断。沈殿物は重金属、石油、化学性物質を含み海洋生物を脅かす。サンゴ礁に生息した魚類は、産卵場所も失い、南シナ海全体の漁業資源の減少につながる。

中国は、国連海洋法の『沿岸国はそれぞれの海洋の環境を保護する義務を有する』という規定に違反している。

いうまでもなくサンゴ礁は、「海の森」と言われる地球の主要な二酸化炭素吸収源、酸素供給源です。地球環境と生態系を破壊しつつ、周辺(我が国を含む)への侵略を続ける中国。この国の意図と行為を断固として挫折させなければなりません。

《中国は南シナ海を「死の海」にするつもりか
世界の海洋科学者が懸念、サンゴ礁を破壊し魚を殺す埋立工事》
2016.04.20 JBpress

4月中旬、米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は、「南シナ海での中国の人工島建設による海洋環境の損害」と題する調査報告書を発表した。同委員会は報告書で、中国当局によるスプラトリー諸島(南沙諸島)の7カ所の埋め立てがサンゴ礁と漁業資源に重大な被害を与え、国際法にも違反すると警告している。

米国はこれまで中国の南シナ海における一方的な膨張に対して、安全保障や軍事、外交の観点から非難してきたが、環境破壊の観点からの批判は珍しい。

■ 各国の海洋科学者が問題視

米中経済安保調査委員会は、米中経済関係が米国の国家安全保障に与える影響について調査し、米国議会や政府に政策勧告することを主任務としている。その一環として中国の安全保障上の行動と米国への影響を分析する作業も続けてきた。

今回、同委員会は南シナ海問題について初めて環境保護という見地から言及した。

同報告書によると、「国際社会は、南シナ海での中国の行動について主権、安全保障、地政学などという問題として焦点を当ててきた。だが最近、各国の海洋科学者やフィリピン政府はこの問題を環境保護、特に生物学上の多様性やエコロジーの観点からも捉えるようになってきた」という。

南シナ海の状況を環境問題の見地から問題視する学者として名前を挙がったのは、米国のサウスフロリダ大学のフランク・マラーカーガ―教授、マイアミ大学のジョン・マクマナス教授、フィリピン海洋科学研究所のエドガルド・ゴメス名誉教授などである。報告書では彼らの見解を参考資料として引用していた。

■ 重金属、石油、化学性物質が海中に

中国当局は2013年12月から2015年10月までの間に南シナ海のファイアリークロス礁など計7カ所の海域で埋め立て工事を行い、広さ合計13平方キロメートルに及ぶ人口島を造成した。

報告書は、その際の各海域で砂や砂利を集めサンゴ礁の上に積むという浚渫作業が大規模な自然環境破壊をもたらしたと指摘する。

環境破壊の具体的な要素については、以下のように述べている。

・世界的にも自然資源の豊かな南シナ海では合計571種のサンゴが生息し、そのうち333種類はスプラトリー諸島海域に存在する。そのうちの13平方キロメートルの海域のサンゴ礁が、中国の埋め立て工事の浚渫作業で破壊された。

・この種の浚渫作業はサンゴ礁の近くの土砂や砂利を除去するだけでなく、礁湖(環礁に囲まれた海面)や礁原(サンゴ礁の平坦部分)の生態系も破壊してしまう。浚渫で生まれる土砂や堆積物の渦はサンゴ礁を傷つけ、成長に必要な日光を遮断する。

・その種の沈殿物は、埋め立て工事に使用される船舶や施設から出る重金属、石油、その他の化学性物質と混ざり合って海中で広がり、渦のようになって海洋生物を脅かす。

・浚渫に使う土砂や砂利は、現地の環礁や諸島とは離れた海域から調達してきた可能性もある。中国が秘密裏にしているため真相は不明だが、土砂や砂利を失った環礁では生態系の完全な回復に10年から15年を要するようになる。

・スプラトリー諸島は魚の宝庫としても知られているが、浚渫工事と埋め立てによる土砂や砂利の渦、そしてサンゴ礁の上の堆積物が、そこに生息してきた魚類を殺したり、外洋へ追いやることになる。サンゴ礁を離れた魚のほとんどは他の大きな魚の餌食となる。

・サンゴ礁に生息した魚類は、埋め立てで隠れ場所を奪われて減少する。サンゴ礁の魚類を食用にしてきたベラ類やハタ類なども数が減っていく。スプラトリー諸島のこうした魚類の減少は、南シナ海全体の漁業資源の減少につながる。

・スプラトリー諸島のサンゴ礁で産卵する魚類も多かったが、人工島建設でそれらの魚類が減り、南シナ海沿岸全体の漁業の衰退につながる。漁業への影響の大きさを中国政府の海洋研究機関に問い合わせたが、回答は得られなかった。

■ 中国の行動は国連海洋法の規定に違反

報告書は以上のような考察に基づき、中国当局の南シナ海での行動について「国連海洋法の『沿岸国はそれぞれの海洋の環境を保護する義務を有する』という規定に違反する」と厳しく断じている。

日本側としても、こうした環境保護や自然資源保護の観点からの批判を踏まえ、中国の無謀な行動をもう一度糾弾するべきだろう。

写真:南シナ海・南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島)のジョンソン南礁で中国が進めている工事を写したとされる写真。フィリピン外務省提供(撮影日不明)。(c)AFP/DEPARTMENT OF FOREIGN AFFAIRS (DFA)

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