03/13/2016 12:58:03 AM

中国軍があちこちで頻繁に起こす越境侵入占領事件。今回も、カシミールでインドとの実効支配境界線から6km侵入。6kmは、東京で言うと東京駅から新宿駅までの距離です。

高級織物のカシミアの毛を採るカシミアヤギの原産地、カシミール地方では、1959年、ダライ・ラマ法王一行が中国に占領されたチベットからインドに亡命した事を契機に中国軍が侵攻、インド軍と軍事衝突。続く62年に大規模軍事衝突(中印国境紛争)でカシミール東部のアクサイチン(カシミール地方の面積の20%)を占領。

その後も越境侵犯を繰り返し、インド領内に道路の建設を試みたりし、最近では2013年に実効支配線を約10km侵入し宿営地を設営、インド国境警備隊が出動、睨み合いが3週間続いたのち、撤兵しました。そして今回の事件です。

カシミールに連なるヒマラヤ山系にあるブータンは、2006年までに国土の北西部18%以上を中国に奪われました。

中国人民解放軍が、毎年国境を越えて侵入、ブータン領土内に小屋や施設、道路まで建設。毎年毎年、数kmずつブータン領内奥深くに侵入を進めて既成事実を積み重ね、その結果、ブータンは、約8,000平方キロメートル、国土の18%以上を中国領土にされてしま­いました。この様な国土の強奪は今なお続いています。

カシミールにおける中国軍の侵入・占領に対し、インド側に軍が存在し、その軍が出動し対峙しなかったら、どうなっていたでしょうか。ブータンの様に国土を奪われていた事は間違いありません。

我が国には、「北朝鮮、中国にリアルの危険があるのではない」と主張する政治家やニュースキャスター、評論家等がいますが、知性と理性が欠けていると言う他ありません。

そして戦争を防ぐ手段とは、戦争の悲惨さに感情的に拒否反応を示し思考停止に陥る様に人々を誘導する事ではなく、戦争を企図する独裁国家に対し、その企図が成功する見込みがないと判断させる材料を物理的に提示する事であると、国民のコンセンサスができる事を願います。

《中国兵、実効支配線越えインド側に侵入 2時間にらみ合い…「ミスでなく挑発」カシミール当局非難》
2016.03.12 産経新聞

【ニューデリー=岩田智雄】インドの治安当局者は12日、産経新聞に対し、中国人民解放軍の兵士11人が今月8日、カシミール地方の中印両国の実効支配線を越境してインド側に約6キロ侵入したと明らかにした。インドの治安部隊と約2時間にらみ合った後、中国側に退去した。

 中国兵の集団は大佐が率いる小隊で、車両4台に分乗し、中国が3分の2を実効支配するパンゴン湖近くのインド駐屯地を通過した。インド・チベット国境警察の警備隊が中国兵らを制止した。

 この治安当局者は「中国側が誤って越境した」と説明し、「雪解けの季節になると、哨戒活動が活発化してこうした事案が起きやすい」としているものの、別の印北部ジャム・カシミール州の当局者は「6キロも侵入したのはミスではなく挑発行為だろう」と中国側を非難した。

 12日付のインド紙ヒンズーは、11日にもカシミール地方で別の越境行為があったと伝えた。インド当局は確認していない。

 パンゴン湖は、自然豊かなヒマラヤ山脈の奥地にあり、インド映画のロケ地になったこともある。2014年には中国の高速艇とインドの警備艇が衝突し、中国側の船が破損する事件が起きた。当時、中国は湖北側のインド支配地域で道路を建設し、インドが抗議して作業を中止させた。

 カシミール地方では13年に、中国兵が約3週間にわたってインド側に駐留し、両国関係が険悪化した。その後両国は、衝突を防ぐための「国境防衛協力協定」を結んでいる。

http://www.sankei.com/world/news/160312/wor1603120055-n1.html

地図:wikipedia カシミール地方の地図(赤枠内が旧カシミール藩王国の範囲。緑がパキスタン占領地、橙はインド占領地、斜線部は中国占領地、茶は1963年にパキスタンが中国へ割譲した地域)

https://www.facebook.com/koichiro.yoshida.jp/photos/a.188901204610757/557392931094914/?type=3