2015/06/03 9:37

《【LA発 米国通信】中国人の出産ツアーに米捜査当局ピリピリ おとり捜査で中国系弁護士を逮捕したが…》
2015.06.03 産経新聞

 生まれてくる子供の米国籍取得のため、中国人妊婦らが入国目的を偽り、米国で出産を繰り返している問題で、米連邦検察などは、カリフォルニア州に拠点を置く「出産ツアー」業者や、妊婦の宿泊先となる民家を装った「マタニティーホテル」の摘発を強化している。入国目的を偽る行為は不法入国につながる。妊婦側から高額の費用を受け取る業者には脱税容疑もかかる。おとり捜査までしかけ、妊婦側の弁護士の逮捕に踏み切った検察の捜査からは並々ならぬ意気込みが感じられる。

 4月のロサンゼルス国際空港。搭乗ゲートに向かう中国人夫婦が捜査関係者に呼び止められ、身柄を拘束された。乳児も一緒だった。夫婦は中国から「出産ツアー」に参加し、捜査当局による「マタニティーホテル」摘発で、事情聴取を受けていた。夫婦は重要参考人として、当局の許可が出るまで、米国にとどまるよう命じられていたが、帰国を強行しようとして身柄を拘束されたのだ。

 夫婦が拘束される数日前、同じように重要参考人となっていた別の中国人夫婦が出国してしまっていた。このため、捜査当局は重要参考人の動向に目を光らせていた。

 航空会社のチェックインや、空港のセキュリティーチェックの際、旅券情報がひっかかるはずだった参考人がなぜ突破できたのか。逃げた夫婦と、拘束された夫婦はいずれもカリフォルニ州アーバインの出入国管理が専門の中国系弁護士と契約していた。捜査当局はこの弁護士が重要参考人の出国に関与しているとの見方を強めた。

 捜査関係者はさらに別の参考人の中国人女性に、弁護士に帰国の相談を持ちかけるよう、おとり捜査への協力を要請した。

 女性「米国から出国する手助けをしてください」

 弁護士「6000ドルかかりますが、大丈夫ですか」

 女性はこうしたやりとりの一部始終を録画・録音していた。

 ロサンゼルス・タイムズ紙によると、弁護士は金額を重ねて提示した上、他言しないよう念押しした。さらに弁護士は金額を上乗せすれば、「自分の知り合いが出国手続きなしで機内まで同行することもできる」ともちかけたという。

 「物証」を得た検察は今月15日、証拠隠滅など司法妨害容疑で弁護士の逮捕に踏み切った。弁護士は容疑を否認している。

 検察などは3月以降、カリフォルニア州で複数回にわたって数十カ所のマタニティーホテルを摘発してきている。豪邸を改築し17もの部屋にわけ、すべての部屋にシャワーとトイレを設置したため、下水管から汚水があふれ出し、周辺住民からの通報で問題化したのは約3年前。それ以降、マタニティーホテルは違法改築などの法令違反でたびたび摘発されてきたが、ひとつの場所を撤収しては、また別の場所で再び営業をはじめるという、いたちごっこが続いてきた。

 ツアー料金は出産費用も含め、100万~200万円もするが、中国富裕層からは根強い人気があり、インターネットサイトを通じた募集は今も続いている。

 「違法なことはしていない」と妊婦らは開き直るが、業者は無届け事業を運営しており、脱税は恒常化している。今回の弁護士逮捕は「出産ツアー」に群がる金の亡者がほかにもいることを浮き彫りにした。

http://www.sankei.com/world/news/150603/wor1506030003-n1.html