《タチウオ乱獲、韓国漁船のデタラメ申告…日本側EEZでやりたい放題、拿捕続出の背景》
2015.04.03 産経新聞
日本による韓国漁船の拿捕が、速いペースで進んでいる。日韓漁業協定に基づく排他的経済水域(EEZ)内で相手国の漁船に認める漁獲割当量の交渉妥結が年明けにずれこんだ結果、ほぼ2週間に1隻の割で違反操業の韓国漁船が、水産庁の取締船に拿捕される事態となった。韓国領海内では乱獲による水産資源の減少も指摘されており、今後も同様の拿捕が続く恐れもある。
■ 漁獲量ほぼ半分に過少申告
鹿児島県トカラ列島から西に約270キロのEEZで3月8日、韓国のはえ縄漁船「508コリョ」が、水産庁の漁業取締船の立ち入り検査を受け、拿捕された。同船は約1.9トンのタチウオを漁獲していたが、操業日誌には約1.7トンとしか記載していなかったことから、漁業主権法違反(操業日誌不実記載)容疑で、船長(47)らを現行犯逮捕したのだ。
同じ操業日誌不実記載容疑では、2日前の5日にも別の韓国のはえ縄漁船が拿捕されたほか、2月2日、7日にもそれぞれ拿捕された。もっとも悪質なケースでは、実際のタチウオの漁獲量が1.9トンだったにもかかわらず、操業日誌には約1トンとほぼ半分しか記載していない漁船もあったという。
日韓漁業協定に基づき、EEZ内で操業する韓国漁船には、魚種ごとに漁獲割り当てが定められている。乱獲を防ぎ、自国の水産資源を保護するためだ。水産庁によると、拿捕されたのはいずれも「正規の入漁許可を得た漁船」だが、操業日誌に実際より少なく記載し、割当量を上回る漁獲を得ようとするこそくな手口が後を絶たない。
■ 過剰な要求、交渉ずれ込み
日本と韓国は、例年6月に漁業協定をめぐる交渉を行い、翌年1年間の漁獲量など操業条件や規則の見直しなどを決めている。だが、昨年6月の協議では日韓双方の主張が折り合わず、1999年に現行の協定が発効して以来初めて、協議が不調に終わった。
同交渉で韓国は、日本に対しタチウオの割当量を8000~1万トンに引き上げるよう強く主張。2013年の割当量(2100トン)の4~5倍にあたる「現状とかけ離れた要求」(関係者)に、日本側が強く反発した。一方、違法操業を防ぐために日本側が求めた衛星利用測位システム(GPS)による航跡記録の保存義務化について、韓国が撤廃を求めるなど議論は折り合わなかった。
このため昨年7月1日以降は、EEZ内における日韓とも相手国のEEZ内では操業できない状態になっていたが、今年1月にようやく交渉が妥結した。16年6月末までの総漁獲割当量は相互に6万8204トンと定めたほか、韓国はえ縄漁船の許可隻数を19年までに2割削減▽韓国漁船の違法操業根絶に向けた対策強化▽日本のまき網漁船の許可隻数を19年までに30隻削減-などを決定。漁業者は1月20日から操業を再開した。
日本のEEZ内のはえ縄漁船によるタチウオ漁については、3430トンを韓国側に割り当てた。だが、韓国側からは「わずかな上積みでは納得できない」「はえ縄漁船が経営難に陥る」などとの主張が根強い。操業日誌の過少申告という違反が相次ぐのは、漁期入りの後れを取り戻そうとする漁業者らの焦りの表れにほかならない。
■ 取り締まりに“逆恨み”報道も
こうした状況に対し、タチウオ漁業者の約8割を擁する済州島では、特に反発の声が根強い。済州島の現地紙「済民日報」は、「漁獲重量の誤差や、操業禁止区域の誤差を認めない日本側の取り締まりに漁業者が被害を訴えている」と報じた。また済州島のネットニュースサイト「済州の声」は「日本の無差別取り締まりで拿捕漁船が増加している」としたうえで、「日韓漁業協定を改善しなければならない」と主張した。
だが、実際の漁獲量の半分しか記載しない過少申告は、決して“誤差”とはいえない。水産庁や海上保安庁の適切な対応は高く評価すべきだ。乱獲を防ぎ、限りある日本の漁業資源を守るためには、違法操業者に対する厳正な摘発を今後も進める必要がある。
http://www.sankei.com/premium/news/150403/prm1504030002-n1.html