《ウズベクでカリモフ氏4選/中央アジア長期政権…高齢、イスラム過激派に懸念》
2015.03.30 産経新聞
【モスクワ=遠藤良介】中央アジアのウズベキスタン(人口約3千万人)で29日に大統領選が行われ、25年間にわたって在職するイスラム・カリモフ氏(77)の連続4選が決まった。国民の不満が噴出する可能性は低いものの、高齢の独裁者が去った場合には政情が混乱しかねない。アフガニスタンからイスラム過激派の浸透圧力が強まっていることも懸念材料だ。中央アジアでは同様の不安を抱える政権の長期化が進んでおり、この地域の先行きを不透明にしている。
ウズベクの反体制派は国外か獄中にあり、カリモフ氏以外の3候補者は装飾的な存在。中央選管は30日、同氏が得票率90%で当選したと発表した。憲法は連続3選を禁じているが、カリモフ氏は改憲前の任期は含まれないとして2007年末に3選。今回は任期を5年にする改憲が行われたことを盾に4選出馬した。
ウズベクでは石油・天然ガスの生産が減少し、主要産品である金の価格も上がっていない。ロシア経済の不振で出稼ぎ労働者の収入も減っている。ただ、生活水準低下にもかかわらず、政権への不満が広がっているとの見方は少ない。
最大の不安定要因は、大統領の目立った後継候補が全く見えてこないことだ。カリモフ氏は、強力な治安・特務機関に加え、地縁・血縁に基づく「クラン」(氏族)のバランスに依拠した統治を行ってきたため、職務執行が不能になった場合には派閥争いが表面化する恐れがある。
モスクワ国際関係大のカザンツェフ分析センター長はさらに、アフガニスタンや、中東で勢力を拡大する「イスラム国」から、イスラム過激派が中央アジア諸国に侵入して情勢が流動化する可能性を指摘する。カザンツェフ氏によると、アフガンとトルクメニスタン、タジキスタン両国の国境付近には最大で計1万人の過激派が集結しているとの推計があるという。
中央アジアではカザフスタンのナザルバエフ大統領(74)も25年間にわたって君臨し、有力な後継候補がいない。次回大統領選の予定されていた16年には経済情勢が悪化している恐れがあるとし、今年4月26日に選挙を繰り上げた。タジクのラフモン大統領(62)も在職20年。ロシアの西隣、ベラルーシのルカシェンコ大統領(60)もやはり在職20年で、今年11月の大統領選に5選出馬の見通しだ。
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