司法の独立がなく、まともな裁判が行われない共産党独裁中国。この国を相手に何を進めようとしても、全ての前提が成立していません。
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《「判決は金で買える」中国人民が嘆く深刻「司法腐敗」 官製メディアが腐敗暴露る“キナ臭さ”》
2015.03.31 産経新聞
「兄弟よ、すべて手は打った。お天道様を拝める日は近いぞ」。中国・上海市の拘置所に差し入れられた下着に刑事裁判への介入をうかがわせる文章が書かれ、その半年後に受取人の被告が減刑判決を受けていたことがメディアに暴露された。司法制度の公正性に民衆の不満が高まる中、「法治推進」を掲げる習近平政権が地方の共産党幹部による司法への介入を抑制していることにも関連がありそうだ。(西見由章)
■ 「お天道様を拝める日は近い」
23日の民主法制時報(電子版)によると、“秘密のメッセージ”がしたためられた下着は2013年6月、上海宝山区の拘置所に届けられた。受取人の被告は、かつて江蘇省の鉄鋼会社で社長を務めていた男。横領や背任などの罪で2009年に逮捕、起訴され、11年の1審(地裁)で懲役18年の判決を受けた。男は控訴し2審(高裁)は1審判決を破棄、審理が差し戻されていた。
「兄弟、われわれの目標に向けてすべて手はずは整った」
「約束は守る。お天道様を拝める日は近いぞ」
外部から届いた下着には意味ありげな文章や“符丁”がびっしり書き込まれていた。
果たしてその半年後に差し戻し審が下した判決は懲役6年。起訴内容の一部が証拠不十分を理由に認定されず大幅に減刑された。その後の2審でも検察側の控訴が棄却され、判決は確定した。
■ 末端の裁判所ではどうしようもない
裁判に何者かの介入があったことを示す決定的な証拠も暴露された。差し戻し審の判決後、横領などの被害者である鉄鋼会社の幹部が裁判長に電話をかけた際の会話が録音されていたのだ。
「われわれの意見がそのまま判決に反映されたわけではない」
「われわれではコントロールできない事案なんだ。私は一介の裁判官にすぎない。様々な要素が絡んでいる。末端の裁判所ではどうしようもないんだ」
こうした報道を受けて、ネット上では司法制度の腐敗に対する怒りの声がわき上がった。
「金で判決が買えるということが明らかになった」
「中国は法治国家!笑い話だ」
裁判所で働いていると自称する人物はこう書き込んだ。「裁判所の人事評価や異動、経費などはすべて政府に権限があり、みな上のいいなりだ。司法の公正などどこにある」
■ 地方官僚を牽制か
民主法制時報は中国法学会が主管しており、今回の暴露が官製メディアによって行われた点にも留意する必要がある。報道には政権の了承ないしは意向があったはずだ。
習政権が進める司法制度改革は党幹部、特にこれまで地方の司法を牛耳ってきた地方官僚の介入を抑制することが主眼のひとつとなっている。今回の報道は、上海の党上層部による司法介入を牽制したとも読める。
ただ習政権が進める司法制度改革は、決して欧米側の三権分立や司法の独立を指向するものではなく、中国共産党による指導が絶対的な前提だ。
中国は多様化する利害の調整機能として司法を必要としており、その独立性はある程度強化されるだろう。ただ共産党の一党統治に挑戦したり、民族問題に関係するなど政治的に敏感な問題については、今後も党が強いグリップを保ち続けるとみられる。
http://www.sankei.com/premium/news/150328/prm1503280027-n1.html