「マジンガーZ」→「テコンV」、「ドラゴンボール」→「スーパーキッド」、「らんま1/2」→「らむば1/3」、「ワンピース」→「ワピース」、「ドラえもん」→「トンチャモン」、「ピカチュウ」→「パワモン」、「鉄腕アトム」→「宇宙少年キャッシュ」「稲妻アトム」、「機動戦士ガンダム」→「宇宙黒騎士」、「宇宙戦艦ヤマト」→「宇宙戦艦 亀船」…。そして漫画は韓国が起源と主張し出す。
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《【ビジネス解読】『ワンピース』→『ワピース』? 中国も青くなる韓国のパクリアニメ…それでも侮れぬ“コンテンツ輸出力”》
2015.03.12 産経新聞
韓国政府がアニメーションとキャラクター産業の育成に本格的に乗り出し、世界的な人気やコンテンツの豊富さから「アニメ大国」と称される日本を、質の面でキャッチアップしようともくろんでいる。ただ、韓国内で人気を博しているアニメやキャラクターは日本の人気作品と類似したものが多く、クリエイターたちの実力には疑問符がつく。韓国内からでさえ、自国のアニメ産業の先行きには悲観的な声が上がる。もっとも、韓国は日本を含むアジア各国でドラマや音楽などの韓流ブームを巻き起こした実績を持ち、コンテンツの発信力は決して侮れないだけに、日本のアニメ産業や政府も傍観しているわけにはいかない。
■ アニメ産業育成に400億円余りを投入
韓国の大手紙、中央日報電子版によると、韓国政府の文化体育観光部は2月26日、「キャラクター・アニメーション産業育成の中長期計画」を発表。2019年までに3800億ウォン(約413億円)をかけ、競争力のある産業に育てる方針を打ち出した。投資・支援の内訳はアニメーション分野に2000億ウォン、キャラクター分野に1300億ウォン、専門投資ファンドに500億ウォンという。
この2日前の24日には韓国経済新聞が、韓国の玩具市場で「国産のおもちゃが日本産のおもちゃを凌駕した」と報じた。それによると、ロッテマートが運営する米玩具量販店の「トイザらス」で、韓国の国産アニメ「ハローカーボット」に登場するキャラクター「ペンタストーム」のおもちゃが、日本戦隊シリーズ「獣電戦隊キョウリュウジャー」を抑え、今年初めから2月16日までの売り上げで1位になったという。
韓国内で自国のアニメが人気を集めても何ら不思議ではなく、韓国発のキャラクターが躍進しているかのように見える。もっとも、こうした報道や韓国政府の意気込みとは裏腹に、アニメ・キャラクター産業をめぐる韓国の実情はお寒い。
■ 人気玩具は日本発祥の変形ロボット
例えば、このハローカーボットというアニメ。さまざまな自動車がロボットに変形・合体して活躍するというもので、韓国の現代自動車と提携して実在の車をモデルにしている。ペンタストームは5体のカーボット(ロボットに変形する自動車)が合体するキャラクターで、売り上げ1位になったおもちゃは2014年12月に発売された。
変形ロボットといえば、日本の玩具大手、タカラトミーが米企業と提携して1984年から展開している玩具シリーズ「トランスフォーマー」があまりにも有名だ。トランスフォーマーはタカラトミーの前身、旧タカラが80年代初めに発売した変形合体ロボットが、そもそもの出発点。ハローカーボットは日本発祥のこのキャラクターに酷似している。
それもそのはず、発売元の韓国の玩具メーカー、孫悟空(ソノコン)は海外の玩具メーカーからのライセンス商品の販売が主体。ハローカーボットは独自のアイデアではなく、「国産」とは到底いえない代物だ。
もっとも、中央日報によると孫悟空のチェ・シンギュ代表は経営方針として「創造経済」を標榜し、「創造経済は世の中になかった新天地を切り開くのではなく、これまでのなじんだ商品に『第2の生命』を吹き込む作業」という持論を展開する。物まねとの認識はほとんどない。
■ アニメ制作は模倣の積み重ね
「パクリ」の本家本元と目される中国も真っ青になりかねない模倣の歴史を積み重ねてきたのが、韓国のアニメ・キャラクター産業が歩んできた道のりだとの指摘は少なくない。
韓国で現在人気を集めているロボットのアニメ「テコンV」は日本の大ヒット作「マジンガーZ」と酷似し、漫画でも日本の「ドラゴンボール」そっくりの「スーパーキッド」、「らんま1/2」ならぬ「らむば1/3」、「ワンピース」に至っては「ワピース」というタイトルの作品やゲームが出回っている。
「ドラえもん」は「トンチャモン」、「ピカチュウ」は「パワモン」といった具合に模倣は止まらない。
さかのぼれば、1970年代には手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」をほうふつさせる「宇宙少年キャッシュ」「稲妻アトム」というアニメが韓国で制作され、日本の「機動戦士ガンダム」を下敷きにした「宇宙黒騎士」も登場。さらに「宇宙戦艦ヤマト」ならぬ「宇宙戦艦 亀船」というアニメも作られた。
韓国のメディアも、この事実から目をそらすことはできず「優れた専門性を持つスタッフの不足、キャラクターの違法複製の蔓延などで、世界水準の競争力を確保するには難しい状況だ」(中央日報)と指摘する。
■ コンテンツの輸出戦略では韓国が優位
ただ、韓国からは世界50カ国以上に輸出され、「アニメ韓流」の有力候補とされる作品も生まれている。パトカーや救急車などの自動車に変身するロボット救助隊が主人公として活躍する幼児向けの教育アニメ「ロボカーポリー」だ。
車を擬人化した米アニメ「カーズ」と、トランスフォーマーの要素を取り込んだような作品とはいえ、2011年に韓国教育放送公社(EBS)で放送された後、フランスや中国、ロシアだけでなく日本のテレビ東京などに販売された。さらにキャラクター玩具も韓国でヒットしただけでなく、欧州など海外でも売られている。
かたや、日本のアニメ制作会社のコンテンツ輸出は芳しくない。日本動画協会の「アニメ産業レポート」によると、アニメの海外販売売上高は05年の313億円をピークに右肩下がりの状況が続き、12年は半分以下の144億円に落ち込んでいる。
また、総務省や韓国当局のデータを基にした経済産業省のまとめによると、放送番組の輸出額は10年の時点で韓国の165億円(邦貨換算、暦年ベース)に対し、日本は63億円(年度ベース)と半分にも満たない。
韓国政府の後押しもあってアジア各国で次々とブームとなった韓流ドラマに象徴されるように、コンテンツの輸出戦略という観点からは、日本は韓国の後塵を拝している。
現状に危機感を抱いた経済産業省が「クールジャパン」戦略を展開し、コンテンツの輸出に注力しているものの、目に見える大きな成果はまだ生まれていない。クリエイターの質の高さではアジアの中で日本は優位に立つものの、韓国が模倣の域から抜け出せないでいるうちに、日本政府はアニメ産業の振興策をさらに充実させ、名実ともにアニメ大国となることを目指す必要がありそうだ。
http://www.sankei.com/premium/news/150312/prm1503120001-n1.html