記事は、「米印にチャンス」としていますが、スリランカの政権交代による親中外交の転換は、日本にとっても他の近隣諸国にとっても朗報です。
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《「中国-旧政権ライン」に背を向けるスリランカ新政権 “強権国家”から“米印同盟国”に戻れるか》
2015.02.04 産経新聞
パリの風刺週刊紙銃撃事件などフランスで起きた一連のテロで世界中が震撼していたころ、南アジアのスリランカでは大統領選が実施され、強権を振るっていたマヒンダ・ラジャパクサ氏(69)が敗北し、政権交代が実現した。
ラジャパクサ氏は昨年11月、2期目の任期が2年も残る中で今年1月の大統領選実施を宣言した。3選禁止の憲法条項を自ら撤廃した上での行動だった。ところが、突然、閣僚だったマイトリパラ・シリセナ前保健相(63)が離反して立候補を表明。短い選挙戦だったにもかかわらず、81.5%という高投票率の中、シリセナ氏が51.3%の票を獲得して、ラジャパクサ氏の3選を阻んだ。
■ 失敗したクーデター画策
一部の報道によると、ラジャパクサ氏は軍や司法を使って、選挙結果を無効化しようと、事実上のクーデターを試みたが協力を得られなかったという。シリセナ氏が投票翌日の9日に大統領就任の宣誓をするという異例の“早業”も、ラジャパクサ氏の動きを封じ込めるためだったとして、クーデター説の信憑性を高める材料になっている。
ラジャパクサ氏の敗因は、政財界に親族を登用する縁故主義や大統領への権限集中、汚職体質にあった。10日付のインドの英字紙ヒンズーは社説で、シリセナ氏は「徹底的な反ラジャパクサ票に乗った」ことでカリスマ性のなさや、遅れた大統領選参戦などの不利な条件を克服し、勝利を手にしたと分析。結果は「民主主義にとって明快な勝利で、平和な政権交代という地域全体への教訓」と評価した。
その上で、シリセナ氏に「信頼を著しく失ったスリランカの法の支配、司法の独立、報道の自由を早急に修復する必要がある。最も大事なのは、公正な平和というタミル人の要求に応えることだ。というのも、これが国の将来を左右するからだ」と注文をつける。
■ 民族和解が不可欠
2009年の内戦終結後、ラジャパクサ政権が手をつけなかった内戦をめぐる責任の追及や、多数派シンハラ人と少数派タミル人の民族和解は、今後のスリランカの安定化にとって不可欠な要素となる。この点について、17日付の英誌エコノミストは、新政権発足後にスリランカを訪問したローマ法王フランシスコ(78)が、戦争責任の追及は「古傷を開くためではなく、むしろ正義、癒やし、和解を進めるために必要な手段」と呼びかけたことに言及。その上で、南アフリカの白人政権下の人権犯罪を調査する「真実和解委員会」式の方法を提案した。
シリセナ大統領の内政面での手腕が問われる一方、外交面では対中姿勢に注目が集まっている。
海洋交通の要衝であるスリランカ南部は、中国の支援で建設された港や国際空港がすでに完成している。これに加えて、中国の習近平国家主席(61)は昨年9月のスリランカ訪問時に、新たな開発計画を約束。習氏の訪問前には、スリランカのコロンボ港に中国軍艦船が寄港し、両国関係の緊密ぶりを対外的にアピールした。
■ 米国に思わぬチャンス
14日付の米紙ワシントン・ポストの社説は、ラジャパクサ氏と中国の関係を「ラジャパクサ氏が人権侵害の批判にさらされると中国に頼り、人権侵害を全く意に介さない中国は、この機に乗じて影響力拡大を図った」と解説する。
シリセナ氏は公約で、中国が14億ドル(約1640億円)を支援する「港湾都市プロジェクト」の見直しと、この計画に絡むラジャパクサ氏親族らの汚職問題の追及を掲げた。ワシントン・ポストは「シリセナ氏が民主主義的な機構の再構築に成功すれば、スリランカは、中国、ロシアのような強権国家ではなく、インドと米国の同盟国に立ち戻るだろう」と期待を寄せる。
その上で、「大統領選の結果はバラク・オバマ米大統領(53)にとって、米国外交のアジアシフトと、民主主義の防衛という2つの目標に向けて前進する思わぬチャンスをもたらした。米国はシリセナ氏が成功するためにできることは全てやるべきだ」として、米国の支援の必要性を訴えている。(国際アナリスト EX)
http://www.sankei.com/world/news/150204/wor1502040001-n1.html