2014/11/03 19:55

旧ソ連解体後、ウクライナが核兵器を放棄する条件として、露米英が同国の領土と主権を保証しました(94年「ブダペスト覚書」)。ロシアのクリミア併合、現在行っているウクライナ東部の分離の固定化は、核無き者の無力を冷酷に示していますが、認めてはなりません。

《ウクライナ親露派、独自選挙を強行 ロシアと「秘密合意」 独立状態の固定化懸念強まる》
2014.11.02 産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州で「人民共和国」を名乗る親ロシア派武装勢力は2日、「共和国の長」と地元議会の議員を選ぶ独自選挙を強行した。ウクライナのポロシェンコ政権や欧米諸国は選挙を「違法」として認めておらず、正反対の立場をとるロシアとの対立が深まるのは必至だ。東部の紛争がロシアの思惑通りに「凍結」され、親露派支配地域の事実上の独立状態が固定化される懸念が強まっている。

 親露派が支配しているのは東部2州(人口約650万人=紛争前)の5~6割を占める地域。露主要メディアによると、この地域では約460の投票所が開かれ、難民が多く滞在する露南西部の3州にも在外選挙区が設けられた。インターネットによる投票も行われ、「将来、人民共和国の国民になりたいロシア人」にも参加が認められた。

 選挙では、ドネツク州の親露派を率いるザハルチェンコ氏ら現行指導部とその一派の「勝利」が確実。親露派はこれを権威付けに利用し、ポロシェンコ政権に対する立場を強める狙いだと考えられている。

 親露派支配地域での選挙実施は9月5日、ポロシェンコ政権と親露派などが署名した停戦合意文書に盛り込まれている。それによると、ウクライナは同地域に「特別の地位」を暫定的に付与する法律を制定し、それに基づいて地方選挙を行うとされた。

 10月に発効した「特別な地位」に関する新法は12月7日の選挙実施を規定しているため、ポロシェンコ政権は今回の独自選挙を「違法」としている。メルケル独首相とオランド仏大統領は10月31日、プーチン露大統領との電話協議で同様の見解を伝えた。日本も「国内法に基づかない形での選挙は事態を悪化させる」(原田親仁・駐露大使)との立場をとっている。

 他方、ラブロフ露外相は選挙前に「わが国は当然、結果を認める」と表明。ロシアと親露派は、9月5日の停戦合意文書には非公開の「秘密合意」があり、11月2日の選挙はこれに合致していると主張している。

 ロシアは2日、約1千トンの「人道支援物資」を積載した大型車両100台をドネツクとルガンスクに向けて越境させた。ウクライナ政権の同意を得ない物資搬送は5度目で、ロシアによる国境無視と親露派支援の既成事実化が着々と進んでいる形だ。
http://www.sankei.com/world/news/141102/wor1411020023-n1.html


「ブダペスト覚書」(1994年12月5日)
[骨子]
1.ウクライナの独立、主権、国境を尊重する
2.ウクライナの領土および政治的独立に対し、自衛および国連憲章に基づく場合を除き、一切の武力の行使もしくは武力による威嚇を行わない
3.ウクライナに対し、自国の利益を図る目的で経済的な圧力を加えない
4.ウクライナに核兵器による攻撃または威嚇が行われた場合には、必要な支援を提供するために、ただちに国連安保理において行動を起こす
5.非核兵器国としてのウクライナに対し、核兵器による攻撃もしくは威嚇を行わない
ロシア大統領、アメリカ大統領、イギリス首相、およびウクライナ大統領が署名。