「チャイナ・リスク」の一つ、「経済指標が信用できない」。従って、投資や事業の判断ができない。中国への投資は、詐欺師相手の博打ですね。
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《中国政府が政策判断に使う極秘の失業率》
2014.07.25 WSJ
中国政府は投資家が知らない何かを知っている―何かどころではなく多くのことを知っている。このことは、特に同国の労働市場について言える。
中国経済は今年は低調なスタートを切ったあと、回復ペースを速めているようで、7月のHSBC中国製造業購買担当者景況指数(PMI)は速報値で1年半ぶりの高水準を記録した。
しかし、中国共産党指導部にとって最も大切なのは、このような成長が雇用を生み出しているのかどうかだ。国内総生産(GDP)の7.5%増という抽象的な成長目標を達成するよりも、大衆が雇用され続けている方が大事なのだ。李克強首相は先週、雇用と所得が増えていれば、GDP目標の未達成も「許容できる」と、この趣旨のことを述べている。
問題は公式の失業率―直近では4.08%―がいい時も悪い時もほとんど動いていないため、役立たないと見られていることだ。失業率統計は地方の社会福祉センターへの労働者の登録に依存しており、大量の出稼ぎ労働者の動きを無視している。
世界金融危機で、一部の統計では中国の製造業の3000万人分の雇用が失われたとされる2008年の失業率もほとんど上昇しなかった。多くの出稼ぎ労働者が農村部の家に戻ったことで、失業の本当の規模が明るみに出た。李首相は、都市部で年間1000万人分の職場を創出することを目標にしているが、国営企業に偏った調査に依存し、民間部門の変動を考慮していない可能性があることから、この数字にも不備がある。
別の見地からすると、労働市場は踏ん張っているということになる。労働社会保障省がまとめる求職者に対する求人の比率は、今年第2四半期(4-6月)に求職者10に対して求人11で、職場が引き続き十分にあることを示した。一方、HSBCのPMIには雇用のサブインデックスがある。この指数は7月に改善したが、まだ縮小を示す領域にとどまっており、企業は発注を増やしているが、それを少ない従業員で行っていることを示している。
中国の雇用状況を知る上で何が最善の方法かは国家機密だ。北京の指導部は、毎月まとめられるが通常は公表されない別の調査結果に頼っている。ある当局者は今年4月、これが公式失業率を1ポイント上回る5.17%であることをうっかり漏らした。李首相は2013年9月、同年下半期の失業率は5%だったと、ある論説記事に書いたが、念頭にはこの数字があったようだ。だが、歴史的にこの失業率がどのように推移してきたのか分からなければ、その価値は限定的だ。
同国指導部はこの秘密の数字を頼りに、どの部門にどの程度の刺激策を講じるかを決める。この結果、投資家は相当な情報の非対称性(情報格差)の中に取り残されることになる。中国では投資家は暗闇に慣れなければならないのだ。
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304067104580050282427535168