インドネシア大統領選、「庶民派」「清廉」ジョコ氏当確。軍出身のプラボウォ氏を破る。歴代大統領は、国民の尊敬を集める軍とのパイプ作りに苦労。ジャカルタ特別州知事時代には日本のODA供与。大国インドネシアとの強い関係構築が望まれます。 — 《インドネシア大統領選 ジョコ氏「当確」 庶民派の手腕、焦点》 ■ 汚職一掃 国民が期待 【ジャカルタ=吉村英輝】インドネシアで3回目となる大統領直接選挙で9日、国政に縁の薄い「庶民派」のジョコ・ウィドド氏(53)=ジャカルタ特別州知事=が「当選確実」となった。中央政界で相次いでいる汚職などで募る政治不信の一掃や民主体制の立て直しに向け、国民はジョコ氏に大きな期待を託した。 「すべての国民が勝者だ。皆で一緒に歩もう」。ジョコ氏は9日夕、首都ジャカルタ中心部の公園に集まった群衆にこう呼びかけ、選挙を戦ったプラボウォ・スビアント元陸軍戦略予備軍司令官(62)の陣営にも「感謝」を表明した。 プラボウォ氏は「確定値の発表を待つ」として敗北を認めていないが、主要調査機関の速報値は通常、確定値と誤差が1%以内とされる。ジョコ氏は、同日夜にテレビ出演し、「敗者も選挙後は協力するのが民主主義だ」と述べ、プラボウォ陣営に結果の受け入れと政治的和解を呼びかけた。 インドネシアでは、陸軍幹部だったスハルト氏が1968年に大統領になり、強権支配による長期体制を確立した。 しかし、97年のアジア通貨危機で権力基盤が揺らぎ、政権は98年に崩壊。同国の民主化は一気に進展したが、その後も歴代大統領は軍出身者や有力政治家の一族が中心だった。 ジョコ氏は、貧しい大工の長男として生まれ、露天商などで学費を工面しながら大学を卒業し、家具輸出業で成功。2005年にソロ市長、12年にジャカルタ特別州知事となり、保健や教育補助の政策で実績をあげた。行政改革に反対する人の所に何度も直接足を運んで説得する行動力も人気の源泉となってきた。 しかし、これまで強みとされてきた、国政のしがらみのない「清廉さ」は、国を率いる指導者としては経験不足とも受け取られかねない。選挙戦で「安定」と「強いインドネシア」を訴えたプラボウォ氏に猛追されたのも、ジョコ氏の指導力に不安を抱く有権者の意識の表れともいえる。 ジョコ氏は今後、政界にはびこる汚職体質の改善を図るが、同氏の「後ろ盾」を自任する闘争民主党党首のメガワティ前大統領に院政を敷かれることなく手腕を発揮できるかも課題となる。 「壁を打ち壊すような力強いロック音楽」の大ファンというジョコ氏には、今後は「誠実さ」や「行動力」に加え、力強さも求められていくことになる。 (関連) |