2014/07/01 5:45

習近平指導部が、人民解放軍の元ナンバー2、徐才厚氏の党籍を剥奪。軍を掌握できるのか、汚職が蔓延する党や軍から反発を受け政権が一層不安定化するのか、予断を許さないとのこと。

《中国軍の元ナンバー2、徐才厚氏の党籍剥奪 収賄疑い、軍法会議訴追へ》

 中国共産党中央政治局は30日、収賄などを理由に徐才厚・前中央軍事委員会副主席(71)に対し、党籍剥奪の処分を下した。軍の元ナンバー2にあたる徐氏の身柄は今後、党の規律部門から検察に送られ、軍法会議への訴追手続きに入る。1970年代末に始まった改革開放以降、制服組の最高位を務めた軍首脳経験者が失脚したのは初めて。中国の政界と軍内に激震を与えるのは必至だ。

 習近平総書記(国家主席)が議長役を務めた政治局会議では、中央軍事委員会の規律検査機関がまとめた徐氏の捜査結果が報告された。規律違反の内容として、国営新華社通信は「職務の権限を利用して他人の昇進を助けて賄賂を受け取った」などと指弾。収賄額は明らかにされていない。

 徐氏は陸軍の政治将校出身。集団軍の政治委員や、軍の機関紙、解放軍報社長、軍総政治部主任などを歴任した。江沢民元国家主席に近いとされ、胡錦濤政権下の2004年から12年まで8年間も制服組のトップである軍事委員会副主席を務めた。この間、党指導部メンバーである政治局員にも選ばれた。最終階級は大将にあたる上将だった。

 中国メディアによると、徐氏は今年の全人代閉幕後の3月15日から正式に党規律部門から調査を受けた。また、周永康元政治局常務委員の側近だった李東生・公安省元次官と蒋潔敏・国有石油会社元会長らも6月30日、党籍を剥奪された。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140630/chn14063019560008-n1.htm


《中国軍ナンバー2党籍剥奪 習指導部 軍掌握へ賭け》

 習近平指導部が中国人民解放軍のナンバー2だった徐才厚・前中央軍事委員会副主席の党籍を剥奪したことは、軍の掌握に向けて大きな賭けに出たといえる。しかし、党内の権力基盤が決して強くない習指導部が軍の実力者に捜査のメスを入れたことで、党や軍から大きな反発を受けることも予想され、政権を一層不安定化させる可能性もある。

 軍では2012年、徐氏の腹心として知られる谷俊山・元軍総後勤部副部長が失脚し、徐氏の汚職疑惑も以前からたびたび噂されてきた。しかし、これまでの江沢民、胡錦濤両政権は、いずれも軍の反発を恐れて軍首脳の汚職犯罪を捜査してこなかったことから、習政権も徐氏には手を付けられないのでは、との見方が強かった。

 しかし、発足直後から反腐敗キャンペーンを展開し、「ハエもトラもたたく」と宣言していた習政権は、徐氏を「トラ」と位置づけ、事前に現役の軍幹部に多数派工作を展開して摘発への支持を取り付けるなど、水面下で綿密な準備を進めていたとみられる。

 中国人民解放軍の各軍区司令官と副司令官は3月から4月にかけ、軍の機関紙などで習主席への忠誠を誓う声明を相次いで発表し、その真意について話題となっていた。今から考えれば、この時期は徐氏が取り調べを受け始めた時期とほぼ重なる。習主席は各司令官に対して「徐氏を摘発する決意」を伝え、驚いた司令官たちは慌てて忠誠を誓ったとみられる。

 また、習主席の盟友で、党中央規律検査委員会書記の王岐山氏は、5月19日から6月22日まで、1カ月以上も公の場に姿を見せなかった。一時は「病気説」もささやかれたが、徐氏の摘発に向けて、事件の捜査に専念していた可能性が高い。

 中国共産党筋は「徐才厚氏の党籍剥奪は北朝鮮の張成沢(チャン・ソンテク)氏処刑と同じくらいインパクトがある」と話す。今後、徐氏の裁判をうまく乗り切れば、習政権にとって大きな成果となる。しかし、中国の軍は「汚職のデパート」といわれている。徐氏だけではなく郭伯雄・前軍事委員会副主席など、ほかの軍首脳にも多くの汚職疑惑がある。習指導部はそうした疑惑すべてに手をつけられるのか。また、身の危険を感じた軍幹部が逆に結束して反撃してくる可能性もあり、今後の展開は予断を許さない。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140630/chn14063023550013-n1.htm