2014/06/30 0:31

香港住民が、英国からの返還時に香港基本法で定めた香港行政長官選の普通選挙を求め抗議デモで中環を占拠した場合、中国は戒厳令布告の可能性も。なるほど、鳩山・民主党政権が提唱した「東アジア共同体」が実現すれば、日本も将来この様になる訳です。

《岐路に立つ「一国二制度」 「普通選挙」導入阻む中国、反発強める民主派》

 高度な自治を認める香港の「一国二制度」が岐路に立たされている。中国の習近平政権は、「香港に対し全面的な管轄統治権を持つ」とした初の「一国二制度白書」を今月10日に突然、発表した。英国からの返還時、香港基本法(憲法に相当)で定めた香港行政長官選の「普通選挙」導入の行方も不透明になりつつある。民主派は次期長官選(2017年3月)での普通選挙実現を目指して非公式の住民投票を実施、中国への反発を強めている。

■ 導火線は「白書」

 「あの白書への反発が影響した」。香港民主派の中核政党、民主党の李柱銘(マーチン・リー)元主席は記者団に、住民投票の参加者数が事前予想を大幅に超えた背景をこう話した。

 投票はまずインターネットで今月20日に始まった。人口700万人の香港で永住権を持つ18歳以上の市民が対象だが、最初の2日で55万人以上が投票した。

 回答欄は、普通選挙導入を前提とした3つの案以外、4番目に「棄権」があるだけ。民主派を排除して親中派だけが行政長官に立候補できるという習政権が求める選挙方式を承認する選択肢はない。中国に「否(ノー)」を突きつけるものといえ、投票期限の29日までに参加者は100万人を大きく超える見込みだ。

 投票の通信システムや民主派寄りの香港紙、リンゴ日報のサイトに、集中的なサイバー攻撃が20日に仕掛けられたという報道も参加者数を押し上げた。

 民主派は、投票結果を中国、香港両政府が尊重しない場合、3年前に米ニューヨーク・ウォール街で起きた大規模デモにならい、国際金融機関が集中する地区で「中環(セントラル)を占拠せよ」と銘打った抗議活動を行う構えだ。

 立法会(香港議会)議員で民主派リーダーの李卓人氏は取材に、「住民投票もセントラル占拠も反共基地である香港から中国に向けた民意戦だ」と、危機感すら漂う表情で強調した。

■ 戒厳令布告を警告

 一方、中国寄りの市民団体「愛護香港力量」のリーダー、李家家さんは取材に、「特別行政区の香港は国家に政策変更を迫る立場にない。住民投票やセントラル占拠は違法な国家分裂行為だ」と息巻く。

 さらに、中国本土との経済関係が深い香港の金融業界は、「民主派が予告しているセントラル占拠が実行されれば、最大400億香港ドル(約5300億円)の経済損失が出る」と試算。14日には55の金融機関が、占拠による業務のマヒ状態を想定した業務継続演習を行って民主派を牽制した。

 中国の李源潮国家副主席は4月、セントラル占拠について「違法であり断固反対だ」と表明。12年に香港行政長官に就任した親中派の梁振英氏も今月20日、「香港政府は絶対に許可しない。住民投票で示された選挙制度改革案はいずれも違法だ」と声をそろえた。

 しかし、それ以上に不気味なのは、返還以前は中国政府の出先機関でもあった国営新華社通信香港支社の元支社長、周南氏(元外務次官)が8日、「セントラル占拠が起きて香港が大混乱に陥れば、中国政府は香港基本法に基づき香港に戒厳令を布告するだろう」と警告したことだ。

 周氏の発言がどこまで習政権の意図を反映しているか不明だが、リンゴ日報によると、「一国二制度白書」が発表された10日、香港に駐在する中国人民解放軍の司令部が入るビルの電飾に「武」の文字が浮き上がった場面を、多くの香港市民が目撃したという。

 経済力をアメに香港経済界を引きつける一方、武力行使の可能性をムチに香港民主派への圧力を強める中国。7月1日に返還から17年を迎える香港の情勢は複雑さを増している。

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一国二制度

 1997年に英国から返還された香港をめぐり、中国が返還後の50年間にわたり、外交と防衛を除く「高度な自治」など特別な地位を保証した制度。99年にポルトガルから返還されたマカオにも適用された。香港返還時に導入された憲法にあたる「香港基本法」は、香港トップの行政長官選挙では「最終的に普通選挙を取り入れる」と明記しており、中国は2017年の選挙からの導入を約束していた。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140629/chn14062912000001-n1.htm