珍しく、朝日新聞が良い記事を書きました。
西村幸祐氏FBより
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臺灣・反政府デモの報道は、二枚舌でなかった朝日新聞
先日批判した社説とは別で、この記事は高く評価できる。客観的な叙述と、支那の台湾支配への不安が大動員の背景になった事まで踏み込んだ良記事になっている。むしろ、見出しに「50万人」と主催者側の発表を使うのも沖縄のデモと同様、一貫しているのかも知れない(笑)。朝日新聞も、やればできる?
ログインしないと全部読めないので、以下記事全文
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台湾で立法院(国会)を占拠する学生らの呼びかけで30日、台北の総統府近くで馬英九(マーインチウ)政権に抗議する大規模デモが開かれた。馬政権は学生の要求を一部受け入れるなど歩み寄りの姿勢を見せるが、大規模集会で学生らへの共感の大きさが示された。政権にはさらなる圧力となりそうだ。
■立法院占拠の学生に呼応
「中国とのサービス貿易協定を撤回せよ」。総統府に続く大通り。学生リーダーの台湾大学大学院生の林飛帆氏が叫ぶと、黒い服を着て通りを埋め尽くした人たちが大声で唱和した。
集会は平和的に行われ、参加者は主催者発表で延べ約50万人。警察は午後4時時点にその場にいた人数を約11万6千人と推計した。
この日の集会は、立法院を占拠する学生団体や社会運動団体が「我々が少数派ではないことを示そう」と呼びかけた。学生らが立法院を占拠したのは今月18日夜。前日、中台サービス貿易協定をめぐり、与党国民党が立法院の委員会で中身を審議せずに強引に本会議送付を決めていた。
昨年6月に調印されたこの協定は事前に内容が伏せられ、「黒箱(ブラックボックス)」との批判が強かった。にもかかわらず審議もしないという対応に「民主主義を踏みにじる暴挙」と反発が爆発した。
「国会」が占拠され、機能停止するという前代未聞の事態に陥ったが、「政治が機能せず、やむにやまれず行動した」という学生らの訴えに大きな支持が集まった。協定は中国とサービス業を開放し合うが、台湾のサービス業には中小企業が多く、打撃が大きいとの懸念が大きかった。
23日夜に行政院に突入した市民らが警官に強制排除され、174人のけが人が出たことも政権への怒りに油を注いだ。学生らと行動を共にする中央研究院法律学研究所の黄国昌・副研究員は「庶民の暮らしに直結する協定をこんな形で締結させてしまえば、民主主義が終わってしまう。これは崖っぷちに立たされた台湾の民主主義の最後の反撃だ」と語る。
■背景に中国支配への不安
馬政権に対して反発が広がる背景には、協定を通じて中国の支配力が強まることへの不安がある。
サービス貿易協定に反対する団体の代表で、占拠に加わる弁護士の頼中強氏は「占拠を反中運動ととらえるのは短絡的すぎる」としながらも、協定の問題の一つに広告代理業を中国企業に開放することを挙げる。中国側が広告出稿を通じて台湾メディアへの影響力を強め、言論の自由を損なう恐れがあると指摘する。
中国との関係を重視する馬政権は2008年の発足後、経済面を中心に中国との交流を深めてきた。馬氏はこれを業績と自負しているが、林氏とともに学生を引っ張る清華大学(台湾)大学院生の陳為廷氏は「馬政権は中国にすり寄ってきた。大勢の人が問題だと考えていたが止めることができず、社会に不満がうっ積していた」と話す。
こうした批判に対し、馬政権は反論に躍起だ。協定破棄に追い込まれれば、中台関係のみならず、台湾が目指す環太平洋経済連携協定(TPP)などへの加入にも影響を与えかねないとの危機感がある。
馬氏や江宜樺(チアンイーホワ)・行政院長らは、台湾が開放する度合いに比べ、中国の開放度の方が高いなどとサービス貿易協定の利点を強調している。「『中国から大量の労働者が流れ込む』といった誤解も多い」とも訴える。
馬政権は、学生が求める中台協議を外部から監視するシステムの法制化を受け入れるなど、一定の歩み寄りも見せ始めた。だが、学生らの要求とは隔たりが残り、林氏は集会で「立法院占拠をやめるわけにはいかない」と宣言した。
占拠の長期化は、馬政権のもとで進んだ中台関係改善にも影を落としている。中国の国務院台湾事務弁公室の張志軍主任が4月中旬までに訪台する予定だったが、台湾メディアは延期になったと伝えている。馬氏と習近平(シーチンピン)・中国国家主席の会談の年内実現も取りざたされていたが、当面は困難になったとの見方が出ている。(台北=鵜飼啓)
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〈中台サービス貿易協定〉 中国と台湾が互いのサービス産業の企業に市場参入を認める協定。医療や建設、印刷、運輸、金融、娯楽など幅広い分野が対象。台湾側が64項目を開放するのに対し、中国側は80項目とされる。昨年6月に双方の窓口機関が調印し、台湾では立法院で承認手続きに入っている。