《ウクライナ混迷でも円安基調が続く3つの理由=植野大作氏》
ウクライナ情勢の日本経済、円相場に及ぼす影響について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏の見解です。
以下、記事抜粋。
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このような状況下、先進国主導の世界景気の回復がいきなり頓挫するリスクは小さいだろう。日米の中央銀行を中心に当面投与され続ける量的金融緩和という「薬」は、一部の新興国を発生源とする金融不安の感染を防除する働きを持つと考えられる。昨今の世界景気の回復は、新興国頼みではなく、先進国主導で進んでいる。世界景気の回復基調が頓挫しない限り、一部の新興国において台頭している景気悪化圧力が「リスクオフの円全面高」を引き起こす事態に発展する可能性は小さいのではなかろうか。
混迷の度合いを深める足もとのウクライナ情勢は、国際政治・民族問題としてみた場合、非常に根深いしこりを抱えており、すぐに解決する可能性は極めて小さい。しかし、ウクライナが国際社会から見放されて無秩序なデフォルトを余儀なくされる、あるいは北大西洋条約機構(NATO)軍とクリミア半島に展開するロシア軍による軍事衝突が勃発するなどのテールリスクが暴発しない限り、マーケットへのインパクトは徐々に落ち着いてくるだろう。
今後のウクライナ情勢は政治ネタとしては引き続き注目度の高いテーマであり続けるだろうが、健全な新興国や先進諸国を巻き込んだ景気腰折れ懸念を誘発しない限り、ドル円相場に与える影響は一過性のものにとどまるだろうと筆者はみている。